第28話 ハーフオークは猫人村から誘われ悩む
キラーパイソンの肉で焼肉パーティが開催された。
その肉は意外と柔らかく、脂肪が少なく、いくらでも食べられるほど美味しかった。
そして、俺たちは本当に大歓迎された。
猫人たちがつぎつぎと俺たちの隣に座って、子どもたちを助けてくれてありがとうって言って、肉が美味い、ありがとうって笑っていた。
俺は全ての人からこんなに好かれたのは初めてだったので、もう泣きそうになってしまった。
それから、この村の生活を面白おかしく教えてもらった。
大人は美味しい魔物を狩りに、子どもは芋や果物なんかを探し、魚を獲っているそうだ。それから、この村は1年に1回、この川の上流か下流へ引っ越しするらしい。
強い魔物はキラーパイソンくらいで、大体、俺たちが倒したヤツの半分くらいの大きさまでで、それなら村人たちにも倒せるらしい。
また、外部の人とのやり取りはなく、何年かに1回、迷い人が現れるだけとのことだった。
俺はもちろん、ディアナも、アレッタも、ディーも、トリクシーも猫人に取り囲まれずっと笑っていた。
ちなみに、俺たちの中で一番人気だったのはアレッタで、
特にアレッタが助けた少年プリー、12歳はアレッタの隣にくっついて離れなかった。
もう少し大人だったら、許せないほどの近さだった。
アレッタはいつもの人見知りを発揮せず、ずっと、にゃはは!と楽しそうにしていた。
宴会が終わると俺たちは村長の家で休ませてもらった。
村長一家は親戚の家に分散して泊まるそうで、その心遣いが嬉しかった。
「なあ、村長からこの村にずっと住まないかって誘われた。」
「アタシも☆」
「アレッタも。」
「ワイも。」
「私も。」
「みんないい人ばかりだったな。だれも俺たちを、俺を、蔑まなかった。
ハーフオークって言わなかったよ。」
「いい人ばっかりだったね☆」
「俺たちは『ハーフムーン』って言う仲間だ。だけど、もちろん、最優先は自分の幸せだ。もし、ここに残ることが自分の幸せと思うなら、一人だけで残ってもいい。
今晩、ゆっくりと考えよう。そして、自分が一番幸せになる道を選ぼう。」
「「「「うん。」」」」
俺はどうしたいんだ?
ディアナとアレッタにパーティに誘われるがまま、強くなるように頑張ってきた。
それで、俺はどうしたいんだ?
領都で地位を上げたいのか?
この妹たちとの楽しい生活をズルズル続けたいだけなのか?
ディアナやアレッタが言っていた最強のパーティになりたいのか?
最強のパーティってなんだ?
王都のダンジョンを征服することか?
エステル!
エステルを見返してやることか?
それに飽き足らず復讐することか?
グルグル回っているうちに、眠りについた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝、結論を確認しないまま、外に気配を感じてみんなで外に出た。
「おはよう、みんな。」
村長のカムナンたちが俺たちの朝ごはんを用意してくれていた。
「よく眠れたか?」
「ああ、ゆっくり休めたよ。ありがとう。」
「それはよかった。朝ごはんを用意したから、みんなで一緒に食べよう。」
「アレッタ、俺と結婚してくれ!」
突然、12歳の少年プリーがアレッタにプロポーズした~!
「助けてくれてありがとう!二人が同じ毛色なのは運命だと思うんだ!
今はアレッタの方が強い。でも、すぐに俺の方が強くなってみせる!
アレッタに食べ物で困らせたりしない!絶対に幸せにする!だから、結婚してくれ!」
朝一に言う、セリフじゃねえぇ~!
そんなことはどうでもいい!
アレッタを失いたくない!
だけど、アレッタに幸せになってほしい!
王都でも、領都でも、ハーフは時々、差別を受けるんだ。
だけど、ここだったら、イヤな目に遭うことはないんだから。
ディアナが、ディーが、トリクシーもアレッタと俺を見比べていたが、俺は何も言うことが出来なかった。
50まで数えるくらい静まり返っていたが、ようやくアレッタが口を開いた。
「ごめんなさい。アレッタはリュー兄ィと行きます。」
この言葉に、プリーはもちろん、猫人たちは物凄くガッカリしていた。
一方、ディアナ、ディー、トリクシーはほっとして、アレッタともに俺をじっと見つめた。
「カムナン、俺たちを歓迎してくれて、この村に誘ってくれてありがとう。本当に嬉しかった。でも、さっきアレッタが俺と来てくれることがもっと嬉しいんだ。
だから俺は、妹たちと最強のパーティになるよ。
ごめんなさい。せっかくの誘いを断る俺を許してほしい。
でも、いつかきっと、美味しいものをたくさん持ってもう一度、この村に来たい。」
カムナンはカラっと笑った。
「何を許すんだ?お前たちは自分の家に帰るだけだろう?プリーは凄く残念そうだがな。
お前たちは俺たちの仲間だから、また来て欲しい。美味いものは欲しいが手ぶらでも構わないぞ!」
カムナンの言葉が終わると猫人たちが次々と暖かい言葉をかけてくれた。
「また、来いよ!」
「美味いモノ持ってな!」
「歓迎するぜ!」
「アレッタ、結婚して!」
プリー、しつこいぞ!
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