第13話 元恋人はアルナウトに惹かれ始める

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しばらくして、今度はセシリアとシーラに誘われて大聖堂に向かった。

セシリアはアイオーン神の敬虔な信徒で、ダンジョンから帰ってくると必ず大聖堂に赴いて祈りをささげているらしい。


「ねえ、エステル。最近、ダンジョンに関わる予言が広まっているのだけど、聞いたことあるかしら?」

セシリアがニコニコしながら問いかけてきた。


「予言?知らないなあ・・・」

「そうなのね!300年くらい前の大司教さまの予言書がつい最近、また見つかったの。その予言書に、220年前に起きた公爵の反乱、そして、170年前に起きた火山の爆発、120年前に起きたスタンピード、100年前のドラゴンの襲来が書かれていたの!もちろん、300年以上前によ!

それで、その予言書のおかげで被害は少なくすんだそうなのよ!」


「ええっ!凄いね、凄すぎるじゃない!」

「そうなのよ!」

いつも穏やかなシーラのテンションも上がっていた。


「それでね、その予言書に3年後の出来事が書いてあるのよ!」

「3年後!そんなすぐに、大事件が起こるの?」

「そうなのよ!それがね、ダンジョンが制覇されるってことなの!」

「ダンジョンが!」


「そう!予言書に書かれているのはこうらしいわ。

『神の子と彼を愛するものたちがダンジョンを踏破し、100年の国の大繁栄をもたらす。』」

「神の子と彼を愛するものたち?」

「「そう!そうなの!」」

セシリアとシーラが顔を火照らせながら叫んだ。


こんなに彼女たちが盛り上がるってことはもしかして・・・

「誰か分かっているの?」

アルナウトなんでしょって言いたいのに言えなかった。


そんな私を見て、セシリアはニンマリと笑った。

「ヒントは今から連れて行くところよ。」

大聖堂に着いて、セシリアが挨拶すると若い司教さまが私たち3人を丁重に案内してくれた。聖堂の通路を祭壇に向かって歩いていく。


「ほら、よく見て。」

祭壇の方をうっとりと見つめていたセシリアが囁いてきた。


祭壇には等身大のアイオーン神が神々しく飾られていた。

アイオーン神は金髪碧眼でハンサム・・・アルナウトに似ている?

いや、そっくりだ!

神の子ってアルナウトなの?


「気づいたみたいね。予言書の神の子とはアルナウトじゃないかって思われているの!」

セシリアがうっとりとしながら、アイオーン神に祈りを捧げ始めた。


神に対する不敬じゃないかと恐る恐る司教さまを見てみると、司教さまは私と視線を合わせるとにっこりと笑って肯いてくれた!

教会もアルナウトが神の子って信じているの?


「もちろん、アルナウト殿の生まれが男爵家で、その次男だと知っています。

また、あの神像にアルナウト殿がよく似ていることは誰もが認めています。

そして、予言書にあと3年後に神の子によってダンジョンが制覇されることが記載されていますが、神の子って言うのは比喩であると想定されています。

これらのことを総合すると、さきほどセシリア殿が仰ったことは充分、蓋然性を持っていますね。」

教会も認めているんだ!


アルナウトが強いだけじゃなく、優しいことも知っているけれど、

ハーレムの主ということで、ずっとアルナウトに対して忌避感がぬぐえなかった。

だけど、ついにカロリーン、セシリア、シーラ、クラウが羨ましいと感じてしまった。

予言書に出てくるパーティだなんて!

ダンジョンを踏破するパーティだなんて!

100年に一人の英雄に愛されているなんて!

リュークのことは愛しているけれど、私はアルナウトに憧れ始めていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


48階を楽々突破したんだけど、60階以上を行くなら、

絶対にもう一人、メンバーを増やした方がいいとギルドの受付からアドバイスを受けていた。理由は教えてくれなかったけど。


ダミアンはもう少し具体的に、斥候か、回復術師がいいんじゃないかって知り合いの冒険者からアドバイスを受けていた。そういえば、セシリアたちも増やすのなら斥候か、回復術師がいいって言っていた。

だから、私たちはいやいやだけど、斥候か、回復術師を中心に、新メンバーを探すことにした。


そうしたら一人、簡単に見つかったんだ。

ハンネス。46歳の旧Aランクパーティの斥候。

そのAランクパーティが解散してしまったので、臨時で色んなパーティに加わっていて今は暇を持て余しているらしい。


三人で依頼にいったら、ハンネスは痩せぎすで、ギラギラした目をしていた。

「お前たちが61階以上を初めて行くのなら、その時の収入の2/3を寄越せ。」


正直、法外な値だと思うけど、ハンネスが「初めて行くのなら」ってことも言っていたので、まずは最初の3泊4日だけ、その要求を受け入れることにした。

それに、私たちはこれまで稼いだお金をあんまり使っていなくて、蓄えもあるからね。


だけど、明後日61階に挑戦するからってハンネスに伝えに行ったら、

「悪い!ギルドからの急な依頼が来たんだ!すまん!」

って平謝りされてしまった。


ちょっと心配になったので、急遽、カロリーンとセシリア、クラウに相談してみたんだ。この日はシーラがアルナウトとデートの日だったんだね。

急な、大切な相談をしようとしていたのに、私は少しシーラに妬ましさを感じていた。


「明日から、61階に初挑戦するんだけど、頼んでいた臨時の斥候が突然、行けないって言いだしたんだけどどう思う?」


「62階は・・・」

セシリアが話しだしていたのに、カロリーンがいつもより大きな声を出した。

「もしハイオーガに出会ったら逃げた方がいいわよ。魔法は効きにくいし、剣でもなかなか切れないしね。でも、足が遅いから絶対、逃げ切れるから。」

「たしかに、アイツは私たちでも逃げ出すよね!」

「ホントに!勝てるけど、割に合いませんね!」


それから、次の休みに私たちの60階突破のお祝いするけど、どこに行こうかって話になったんだ。

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