第12話 元恋人は『ブルースカイ』と仲良くなる

たくさんの☆、ありがとうございますっ☆

2回連続、エス姉ェのお話で、それが終わったら2章に入って、

3人目の妹ちゃんが出てくるよっ☆


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


セシリアとシーラと見張りを代わった。

向こうのテントからクラウのくぐもった喘ぎ声が聞こえた。

私は気にせず、カロリーンと明後日の休みの日にどこに行くか相談を始めたが、カロリーンとの話はすぐに終わってしまった。

最近、カロリーンが冷たい気がする・・・


ぼんやりと小さな焚火の炎を見つめていると、忘れたい過去が押し寄せてきてしまった。


王都に来て半年ほどが経った頃、『三ツ星』は良い意味でも悪い意味でも目立っていた。


当然だが、パーティは人数が多い方が強くなるけど、ダンジョンのボス部屋やエレベーターには6人しか入れない。だから、ダンジョンを攻略しているパーティは大体、5人か、6人で構成されている。


そんな所を、私たちはたった3人なのに、たった3ケ月で36階を突破したんだ。

ちなみに、ダンジョンのマップなんてどこにも売っていない。

マップを利用して最短経路を歩く人たちなんて、いつか突然、強い魔物と出会って全滅させられるって考えられているから。


そんな将来有望なパーティのメンバーを「ハーフオーク」がいるって蔑む奴らがいた。

私たち3人とも、そんなの全く気にしなかったけど。


36階を突破して帰ってくると、私たちはダミアンの彼女であるダフネの店でお祝いをした。ダフネの両親が作ってくれたご馳走をお腹いっぱいに食べたあとは、

ダミアンとダフネの邪魔をしたくないので、私とリュークはそうそうに家路についた。


「ダミアンのやつ、ダフネにデレデレだね。」

「ついに、理想の猫人の可愛い女の子を捕まえたんだもんね。」

「ほんとによかったよ。」


そんなことを話していたら声を掛けられたんだ。

「もしかして、『三ツ星』のエステルさん?」

振り返ると同い年くらいの、私と同じ金髪碧眼の美女2人が私に笑いかけてきた。


「やっぱり、エステルさんだ~!」

「会ってみたかったんだよね!」

この国にいるたった4つのAランクパーティのうち、最も若く、期待されている

『ブルースカイ』のメンバーだった。


でも、AランクパーティとCランクパーティでは、ギルドの受付場所が違うから、

顔を見たことがあるくらいで、話もしたことないし、名前も知らなかった。

「私はカロリーンよ、よろしく。」

「私の名はセシリアです、よろしくお願いします。」

二人はにこやかに右手を差し出して来たので、握手した。

「エステルです。よろしく。」


カロリーンは背が高く、豊満な美女で、20歳と2歳年上だった。

ポニーテールで強気なカンジ。

セシリアも20歳で、背は低めで凄く可愛い人だ。

ショートカットが可愛い顔に似合っていて、その笑顔は癒し系で好感度が高かった。


二人とも、お洒落な服に身を包んでいて、私は自分とリュークの実用性しかない服が

少し恥ずかしく感じた。


「二人仲良くしているところ、悪いんだけど、もしよかったら、私たちとお話してくれないかな?」

Aランクと遥かに格上のカロリーンが丁重に頼んできた。

「お願いします、エステルさん。」

続いて、セシリアも可愛らしく、両手を組んでお願いしてきた。


二人がリュークを無視しているのは腹が立つけれど、『ブルースカイ』は凄いパーティだし、女二人だけだし、話を聞いてみたくなった。

「リューク、いいかな?」

「うん、あんまり遅くならないでね。」

「ありがとう。」


『ブルースカイ』 金髪碧眼の美男子、アルナウトが4人の金髪碧眼の美女と組んでいるAランクパーティ。5人全員が魔法を使え、剣の達人でもあるという、領都では考えられない奇跡みたいなパーティ。

みんな20歳前後と若く、美男と美女ぞろいだから、ギルドの外にもファンが多いらしい。


どんな話をするのかドキドキしていたら、あそこの料理が美味しいとか、あそこの店の服が可愛いとか、演劇を見に行ったら楽しかったとか年頃の女の子っぽい話ばっかりだった。

私は王都に来てからダンジョンへ潜ってばっかりということもあって、

リュークとダミアン以外に友達がいなくて、久しぶりの女の子との話が新鮮で凄く楽しかった。


二つのパーティはともに4日間ダンジョンに潜ったら1日休みというサイクルで、

その休みのサイクルが合っていることがわかった。


「エステル、もしよかったらまた遊びに行こうよ。」

「もちろん、いいですよ。ただ・・・」

「もちろん、お互い、恋人が優先で、長くて2時間ほどね。

それから、私たちはアルナウトを連れてこないから、貴女もよろしくね。

女子のメンバーは多分、順繰りになると思うけど。」

ホントにアルナウトのハーレムなんだ。そして、それを隠そうとしていないんだ。


「そうだね。シーラとクラウもいい子だから、エステルとも話があうと思うよ。」

「楽しみにしています!」


それからちょくちょく、『ブルースカイ』の女子たちと会うことになって、カロリーン、セシリアだけでなく、シーラ、クラウディアとも仲良くなっていった。


シーラ。19歳、背は普通で、やっぱり金髪碧眼のもの静かな美人。

肩まで真っすぐな髪が美しくて、穏やかで、目元のほくろが色っぽい。

クラウディア。25歳のエルフ。背は高く、凄く痩せていて、カッコいい美人だ。

ツインテールで、いつも薄く笑っている。


何度か会って、4人ともリュークのことを嫌っていることがわかってしまった。

だけど、同じ年ごろで、カンジのいい、同じ職業の女子たちだから、いつも凄く楽しくて、それにリュークのことを嫌っていてもちゃんと隠そうとしてくれているので、どんどん仲良くなっていった。


4か月ほど前、それまでずっと避けていたんだけど、初めてアルナウトと一緒にご飯を食べることになってしまった。そして、その日にちょっとした事件が起こったんだ。


セシリア、シーラ、クラウとお高い料理を食べに行ったら、後からアルナウトと

カロリーンが腕を組んで現れたんだ。

「あら、みんなもここだったの?せっかくだから、一緒に食べましょう。」

カロリーンの提案で、私たちは一緒のテーブルで食べることになったんだ。


アルナウト。男爵の次男で20歳。

遠めからでもカッコいいなって思っていたけど、こう正面から見ると

神が彫刻したかのような完璧な美しさを持っていた。

その完璧な美しさの中、切れ長な碧い瞳だけは、野心で燃え上がっていて、

そのアンバランスさが凄まじい魅力を発していた。

ダミアンもカッコいいと思うけど、アルナウトとはモノが違っていた。


私の向かいにアルナウトが、彼の左隣にカロリーンが座っていた。

アルナウトは初めて話す私に興味を示しながらも、今日の恋人のカロリーンを

一番大切にしていた。


リュークには無いその誇り高さ、ダミアンに無い落ち着き、私たち3人には全く無い優雅さが、こんな完璧な人がいるんだって思わされた。

カロリーンが、セシリアが、シーラが、クラウディアが、あんなに綺麗な人たちがいっそ崇拝と言っていいほど、愛している理由が分かった気がした。



メインの料理を食べ終わるとケーキとコーヒーが運ばれてきたんだけど、給仕がアルナウトに提供する際、ケーキをひっくり返して、アルナウトの高級な服を汚してしまったんだ!


「申し訳ございません!」

青くなった給仕が頭を直角まで下げると、やっぱり青くなった店主が飛んできて、

やっぱり直角まで頭を下げた。


「申し訳ございません!どのようなお詫びでもさせていただきます!

また、コイツにはちゃんと罰を与えますので、どうかお許しを!」

Aランクパーティに粗相をしてしまい、どんな難癖をつけられるか戦々恐々としていた。態度の悪い冒険者や偉そうな貴族が、ここぞとばかりに無理難題を押し付けるというのはよくある話だった。


「ああ、気にしないで。偶にはこういうこともあるよね。」

アルナウトは感じのいい笑顔のままで、お店の人を全く責めなかった。

若くしてトップに立っていて、調子に乗っても当然の立場なのに、気さくでとてもいい人だった。


私はそれからアルナウトを見かけるたびに、つい目で追ってしまうようになっていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る