第3話

 隣人が僕の跡をこっそり付いて来ていた。 ふと彼女がどこまで付いていけるか試したくなったので、電車に乗って最恐の心霊スポットに向かうことにした。

 ちょうど夜だったので、雰囲気はバッチリだった。

 幽霊が多発するトンネルを歩いてみた。

 背後から隣人の小さい悲鳴と足音が聞こえてきた。

 そろそろ帰ろうかなと思っていると、前から赤いコートを着た女性が歩いてきた。

 その女性には顔がなかった。

 僕はすぐに人間ではない事に気づき、逃げようとしたが金縛りにあってしまい、一歩も動けなかった。

 赤い女はポケットから中華包丁を取り出して迫ってきていた。

 終わった――と思った、その時。


「わたしぃのフウタくんになぁぁぁにぃすんのよぉおおおおおおおおおお!!!!


 トンネルが揺れるほどの声量が響き渡り、悪魔みたいな顔をした隣人が赤い女に襲いかかった。

 赤い女は彼女に斬りかかろうとしたが、アクション俳優並の武術で中華包丁を奪うとやたらめったらに振り回した。

 赤い女は身の危険を感じたのか、全力で駆け出していった。

 赤い女だけではなく、色んな姿形をした怨霊が隣人の殺気に慄き、尻尾を巻いて逃げてしまった。

 全ての悪霊を追い出してくれた隣人は、ヘナヘナになった僕を最寄りの駅までおんぶしてくれた。

 さすがに今夜は独りで寝るのは怖いので、彼女の部屋で泊まる事にした。

 寝かせてはくれなかったけど。


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