第43話 思わぬ依頼が舞い込んだ

「そーれ、とってこーい!」


 ――ビュッ!


 オレが軽く放った円盤状の板の切れ端が宙を舞う。


 ――パシッ!


 すな子は一瞬で跳び上がり、前足で板を見事にキャッチした。


 着地すると、「にゃにゃ!」と嬉しそうに声を上げている。


「よーし、えらいぞ。ほれ、ご褒美だ。」


 オレはポケットから干し肉を取り出し、すな子に渡した。


「わーい、うまいにゃ!」


 満足げな表情で、すな子は干し肉を嬉しそうにはむはむと食べ始めた。

 

 その様子に、思わず頭を撫でてしまう。


「よしよし、いい子だな。」


 ――ジィィィ……


 そんなオレたちのやり取りを、エリナが腕を組んで呆れたように眺めていた。


 そして、深いため息をつく。


「はぁぁぁ…仲が良くなったのはいいけど…これは、何か違う気がするよ」


「そうか? ほら、すな子も楽しんでるし――な、すな子?」


「にゃ!」


 すな子は嬉しそうに尻尾を揺らしていたが、エリナは肩をすくめて首を振るだけだった。


 そんなこんなをした後、エリナとすな子は去っていった。


 すな子は相変わらず、エリナにベッタリだが、怒られた事もあり、少し遠慮がちになった。

 そして、話せることが分かり、エリナも楽しそうにおしゃべりをして、さらに仲が深まっている気がした。

 傍かみていると、仲のいい姉妹のような感じさえあった。


 それで、オレはと言うと――次に何を作ろうかと思案していた。

 

 …まぁ、鉱石を見てみないと何を作れるか分からないけどね。


 でも、出来れば、盾に小型の弓、魔力がなくても魔法を放てる杖みたいな物とか、パワーグローブの延長線上でパイルバンカーのようなものがいいなと夢想していた。


 いいな…パイルバンカー…


 ロマンだよなぁ。


 あの機体、ベ○ゼルガ格好いいよな…


 はぁ…憧れる。


 けど…こんな所で、そんな物、製作なんて無理だ…


 しかも、機構も考えなきゃいけない…


 うん…無理だな。


 ま、手頃な所から初めて行こうっ!


 とは、思うけど…何が出来るかなぁ。


 そんな事を考えていたある日――


 オレを名指しで荷物持ちのオファーがあった。


 オレはガレックさんだと、思い、舞い上がりそうになった。


 あれだけの量だから、もっと時間がかかると思っていたところだ。


 と、嬉しくて早速受けようと思ったのだが…

 

 書かれていたパーティ名と名前を見て驚いた。


「え…なんで…?」

 

 それは「ダスクファング」の「アベル」さんからだった…


 ―――組織の広場の隅っこで、


「はぁ…」


「なに、ため息付いてるの? もしかして、依頼のこと?」


「ま、まぁね…」


 オレは取り敢えず、アベルさんの意図を知りたくて依頼を引き受けた。

 

 だけど…


「やっぱり、断るべきだったのかな…」


「…そんなにイヤなら、止めておけばいいのに」


「だよな…でも…」


「あ~もう、ウジウジしてたら、こっちまで参っちゃうじゃない…決めたのなら、しっかりしてよ…ほんとに、もう…」


「お、おう…そうだな」


 最近のエリナはなんだか、頼もしい。


 剣術で自信を付けたからか?

 すな子の面倒をみていたからか?

 それとも、それのどちらともなのか?


 どちらでも、いいけど、いい傾向だと思う。


 それより、今はオレが停滞中だ…


 ほんと、エリナの言う通り、決めたのならしっかりしないとな!


「よしっ! 決めた、もう、迷わない! 一度引き受けたのなら、やり遂げるだけだっ!」


 オレの意気込みに驚いたのか、エリナは一瞬唖然としたが、その後、笑顔でこう言った。


「レイくんは、それでいいと思うよ」


 と、満面の笑顔で微笑んでくれた。


 それを見て、再度オレは覚悟を決め直したのだった。

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