第16話 危険な鉱石

「あはは! これは楽だな! こんなに簡単に運べるなんて、最高だ!」


 オレは何回かダンジョンに入ったおかげで、両手にパワーグローブが完成した。

 両手どころか、両足にも使えるのだが、それは止めておいた。


 確か、1G以下の場所で過ごしていると、急速に筋力が衰え、骨粗鬆症にもなると何かで聞いたことがある。それに、そうなってしまうと介護が必要になり、回復までにも時間がかかると聞いたことがあった。だから、パワーシューズで体重を減らすことは止め、しっかり筋力を保つことを意識した。


 オレは何度か荷物持ちとして冒険者や他の業者に同行した。

 他の子供たちは、今以上の重労働に加え、命の危険もあるため、自分から志願する者は、ほぼいなかったがオレだけは率先して手を挙げた。


 確かに危ないこともあった。


 さすがに業者の何人かが魔物に倒されたときは、正直焦った…

 しかし、なんとか逃げたり隠れたり、他の人に気づかれないように武器になりそうな鉱石の組み合わせで魔物を追い返したこともあった。


 本当にあれは焦った。


 たまたま近くにあった…タキオン鉱石の欠片とエーテルコアの欠片があって、オレのスキル? 能力? 『アーセナル・ユニオン鉱石鑑定結合』で見ると、二つを組み合わせると魔物の動きを遅くできるみたいなことが書かれていた。それに従って投げつけて、なんとかうまくいったんだよな…


 後で聞いたところによると、けっこう強い魔物らしく、その名も『エミューレイザー』という。身体はエミューに似た大きさで、鋭い爪を持ち、猛スピードで走ることができるということだ。長い首を持ち、攻撃時には首を伸ばして突進したり、強力なキックを繰り出してくる。さらに、鳴き声が特殊で、魔法的な音波攻撃を使い、近くの敵の動きを鈍らせたり、耳をつんざくような音で気絶させることもあるらしい。全体的にクラシックなエミューの特徴を持ちつつ、爪やくちばしは鋭く、威圧感のある外見をしている。って、ことらしい。


 まぁ、なんだかんだで、お駄賃も中々に溜まってきてしまった…


 ちなみにこの二つの説明が頭に浮かんだ文字には


 ―タキオン鉱石―

 

  レベル 4 (高リスク)

 理由: 時間や空間に干渉する力を持ち、適切な扱いをしないと事故が起こる可能性がある。


 変異元: 未知のエネルギーと宇宙の高エネルギー状態から生成された鉱石。

 特性: タキオン鉱石は、光よりも速い粒子を蓄える能力を持ち、時間や空間に干渉する力を有しています。この特性により、魔物の動きや攻撃を一時的に遅らせることが可能です。

 用途: 魔物の動きを鈍らせる武器や、時間操作を伴うトラップの製造に適しており、また、魔法的なエネルギーを増幅する装置や防具としても利用されることが考えられます。


 ―――


 ―エーテルコア―


 レベル 5 (極めて高リスク)

 理由: 未知のエネルギーを含み、魔法的な力を強化するが、誤った使用により大規模な魔法的事故が発生する可能性がある。


 変異元: 古代の物理学的概念に基づいた、自然界の未知のエネルギーを含む。

 特性: エーテルコアは、宇宙に満ちる「見えないエネルギー」を吸収し、放出する特性を持っています。このエネルギーは魔法の力の源泉とされ、魔法的な攻撃や防御を強化することができます。

 用途: 魔法の力を高める防具や、エネルギーの流れを制御する装置、さらには魔法的な攻撃を行う武器の材料として使用されることが期待されます。


 ―――


 これらの説明を読みながら、思わず背筋が寒くなるのを感じた。


 危険な鉱石には危険度まで出てきた…

 こわすぎるぞ…これは…

 こんな危険なものを持ち出すなんて、正気の沙汰じゃない…


 …今回は欠片だったから、まだマシだったのだろうな。


 これからは気を付けよう…


 けど、欠片だけでもあの反応…

 魔物がほぼ止まっていたぞ…


 ほんとに危険なんだな…と、実感したのだった…

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