第17話 買い言葉に売り言葉
何度かのダンジョン探索の荷物持ちをしていると、なぜかオレを指名してくるパーティが増えてきた。どうやら、オレが丁寧に運び、たくさんの荷物を持ち運んでくれると、冒険者ギルドで噂になっているらしい。
そんなことが増えると、次から次へと指名が飛んでくる。
オレも楽しくなってきたし、パワーグローブのおかげでラクラクに荷物を運べる。
ダンジョンに行くとき限定で、足にもパワーグローブ、つまりパワーシューズを使っている。
そのおかげで、さらに楽チンについていけて、荷物も運べる。
確かに、オレ以上に運搬に向いているヤツはいないだろう。
だから最近は『
業者も当然、運搬料をもらっている。
そのため、オレの噂が広まるにつれて、有能な荷物持ちとしての評価が上がり、運搬料に上乗せできるようになった。業者としても、うはうはなのだろう。
だから、食事の量も多くなり質もいいものを提供され、優先されるようになった。
休憩もオレの自由にしても文句を言われない。
何より、蹴られることがなくなった。
なんか、もう『
ただ…ほかの子供たちの視線がいたい…
なんか…申し訳なくなってくる…
そんな視線を送っている者が一人…
楽しそうにしているオレを見て、エリナがふてくされていた。
「…レイばっかり…ずるい…わたしもダンジョンに行って活躍したいっ!」
と、オレが簡単にダンジョンから戻ってきて楽しくしている姿しか見ていない彼女は、そう言い出した。
実際はかなり危険なんだ。
エリナが行ったら…かなり厳しいな。
それを伝えてみたが、逆に喧嘩になってしまった。
「…そんなに楽なもんじゃない。魔物も強いのもいるし、この前なんか何人か倒されたんだぞ。逃げるのだって簡単じゃない。本当に命懸けなんだ」
「…でも、レイはいつも戻ってきてる。そうやって怖がらせて、私たちに行かせないようにして、自分だけいい思いをしたいんだねっ!」
エリナはむくれた感じで、目を細め、怒りをあらわにした。
ちょっとした涙を浮かべながら。
「違う! 本当に危険なんだって!」
オレも反論する。
「レイの言ってること、信じられない! 自分だけ楽しい思いして、私にはそのチャンスすら与えないなんて!」
「お前が行ったら、もっと危険だって!」
言葉を返すが、エリナの感情は止まらない。
「そんなこと言って、自分が行きたいだけじゃないっ! …自分だけいい思いして、自分だけ良ければいいんだもんね…」
そう言っているエリナだが、目には少し涙を溜めていた。
だが、今そんなことを知らないオレは「ムッ」としてしまい、心にもないことを言ってしまう。
「だったら、勝手にすればいいじゃないかっ! 一度危険な目に合ってみればいいっ!」
二人の間には、言葉の応酬が続く。
嫉妬や不満が渦巻き、気持ちがすれ違うばかりだった。
そして、オレは感情のまま言い放ってしまった…
あとで、そのことをオレは深く後悔したのだった…
「…わかった。そうするよっ! レイのばかぁぁ!」
そう言うと、エリナはどこかに走り去ってしまった。
オレは追うことも引き止めることも出来ずに、
「一度痛い目を見ればいい」
そう思いながら、オレは自分の仕事を始めるのだった…
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