第7話 『クエスト・コレクティブ』

 エリナと知り合って数週間が経った、ある日―


「おい、お前ら、手を止めろっ!! そんで、全員こっちに来いっ! 早くしろよ」


 オレはいつもと違う大人たちに、今から何が行われるのかと怯えていた。

 そして、言われるがままに指示された場所へと向かう。

 子供たちが集められ、そこには女の子たちもいた。


 オレたちは列に並ばされ、何かの検査を受けることになった。

 板のようなものに手を置くと、数人の子が赤や青、黄色の色を板に映し出していた。

 その子たちは別の場所へと連れて行かれた。


 その後、オレたち残された者たちは、剣を持たされて模擬戦をやらされることになった。

 そこで、何人かは普通の子供とは思えない動きを見せていた。

 そうした子たちも、また別の場所へと連れて行かれる。


 その間も、大人たちは厳しい表情でオレたちを見守っていた。

 「静かにしろ!」と怒鳴りつけられたり、「ちゃんと並べ!」と叱責されたりする中、遅れて列に並んだ子には体罰が加えられ、恐怖と緊張が漂っていた。


 オレは居残り組の一員だ。

 オレの他にも十数名がそのまま残され、労働に戻されることになった。

 女の子たちの中には、同じように姿を消す子もいた。

 そして、エリナはオレと同じように居残りだった。

 何が起こっているのか全く分からなかった。


 周りの子たちが次々といなくなり、オレの負担が増していくように感じた。

 心の中に沈んだ気分が広がり、エリナもまた同じ思いを抱えているようだった。


 あとで知ったことだが、あの板は魔法適性の検査であり、黄色、青、赤の順に魔法適性が高く、魔力量が多いらしい。だから、それ相応の業者で冒険者として教育を受け、ここで働かせられるということだ。


 働かせると言っても、貢献が多ければ待遇も良くなり、自由度も増し、ある一定の金額を収めればここからも出られるらしい。


 模擬戦も同様に、この世界では剣士は一般人と比べて見た目で動きが違っている。

 どうやっているかは分からないが、その威力も半端なく、一般人と戦うと剣を受けるどころか、剣ごと切り裂かれることさえあるらしい。


 一般と選ばれた剣士には明確な差が出る。

 そして、特に貢献が著しい剣士には特別な武器が与えられ、さらなる強化がされる。

 弓や槍など、武器を扱えるものなら、どの職でも同様だ。

 斥候の兵士も同じような扱いを受けている。


 この世界にはいくつかのダンジョンがある。

 その中の一つが、この業者が目をつけているダンジョンだ。

 ダンジョン内の魔物を狩り、素材や魔鉱石を集めて潤っている。

 それを支えているのは、オレたち子供たちだ。

 口減らしのために集められ、才能のある者たちを育てている。

 一方で、時には馬車を襲う強盗団に売り渡されることもある。


 そして、恐ろしいことに、この業者は国に公認されている。

 業者が腐っているなら、国も腐っているらしい…


 最悪だ…


 この国には、オレたちが平穏に暮らせる場所がないようだ…


 その中の一人がオレであり、エリナだっただけの話だ…

 そして、オレとエリナは何も反応しない一般人であるというだけの話だ。


 オレたちの未来は閉ざされた…


 オレはこのまま、擦り切れるまで使い潰され、エリナは…


 そういうことだ…


 ほんと、クソみたいな現実しかない、この世界に乾杯だ…

 オレの目から止まらない涙でな…


 クソッたれ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る