第6話 逃げたい…
―――ドーンッ!
突然、遠くから爆発音が響き渡る。
地面が軽く揺れ、子供たちの間にざわめきが広がった。
「何、今の音?」
エリナが驚いて顔を上げる。
レイも周囲を見渡したが、音の発生源は分からなかった。
その時、オーベルが何人かを引き連れて走り出していくのが見えた。
彼は監視兼指導者の一人で、ラーフェンよりも冷静な性格だが、苛立ちを隠すことはなかった。
「またか…」
オーベルは面倒そうに舌打ちをしながら、爆発があった場所へ向かっていく。
「…何が起きたんだろう?」
エリナが不安そうにレイに問いかける。
だが、レイも状況が飲み込めず、ただオーベルの姿を目で追っていた。
「耳を澄ませてみろ…誰かが話してるかもしれない」
レイは小声でエリナに言い、二人でじっと耳を澄ませた。
すると、少し離れた場所から話し声が聞こえてきた。
レイとエリナは気配を消し、その会話に集中した。
「…聞いたか? 今回の爆発、ダンジョンから持ち出した魔鉱石が原因らしい」
「マジかよ。運搬業者が欲をかいて、危険な魔鉱石を運ぼうとしたんだって」
「高価な魔鉱石だけど、ダンジョンの外では不安定になるんだ。しかも、相性の悪い鉱石と一緒に運んだから…爆発するのも無理はない」
「取り扱い方を知らない素人が手を出すから、こうなるんだよ」
その話を聞いて、レイはハッとした。
ダンジョンの魔鉱石には特別な性質があることを、以前に耳にしたことがある。
特に、ダンジョン内でしか安定しない魔鉱石が多いのだ。
エリナも驚いた表情を浮かべ、レイに目を向けた。
「…危ないんだね、ダンジョンの魔鉱石って…」
エリナが呟くと、レイは小さく頷いた。
「そうだな。欲をかくと、命取りになる」
二人は静かに会話を交わしながら、爆発があった方へと再び視線を向けた。
重くのしかかるような沈黙の中、空気には緊張感と不安が漂っている。
「…ね、ねぇ、今なら、ここから逃げられるんじゃない?」
エリナが、怯えた声でぽつりと尋ねてきた。
その声にはかすかな希望と恐れが混じっていた。
オレは一瞬彼女を見たが、すぐに視線をそらし、低い声で答える。
「…無理だよ。大人たちが言ってたけど、この森の周りには魔物がいるんだ。オレたちのような子供は、すぐにそいつらの餌になっちまう。仮に運よく逃げられたとしても、どうやって生き延びる? 食べ物は? 飲み水は? 住む場所だってないだろ?」
言葉を区切りながら、目の前に広がる現実を突きつけるように続ける。
「仮に街までたどり着いたとしても、オレたちを雇ってくれるところなんてないかもしれない。結局、また誰かに売られるのがオチさ…」
オレの言葉が重く響き、エリナは小さくうなだれた。
彼女も現実が厳しいことは分かっているのだろう。
それでも何かを変えたいという気持ちが捨てられないのだろうな。
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