作戦③体育祭で活躍すべし!
第11話
世界の崩壊にどんな影響を与えたのかはわからないが、テストが学年3位でデートまでこぎつけたのだから、だいぶいい感じだと思う。
ここまでは順調。よくやったもんだと自分でも思うが、ここからが問題である。
(俺、デートとかしたことないんよなぁ)
ここまでの人生で一度もデートの経験がない。
なんなら、女子とご飯に行ったことすらない。
なので、お礼のご飯というものがどういったプランで進めていくべきなのかわからない。
ただこのご飯での印象は非常に重要なものになることはわかっている。
スマホで調べてみるが、なかなか難しい。
高いところは財布に厳しいし、おそらく気を使わせてしまう。
だからといって、マクドというわけにはいかないだろう。
「うーん」悩みながら、
「市川、これあげるわ」
「ん?なに?」渡された袋の中をみると、奏汰の好きなグミが入っている。
「俺の好きなやつやん!で、くれるのはありがたいけど、なんで?」
「3位になったお祝いや。もう一生なることないやろうからな」
「・・・その最後の一言は必要やったか?」
「文句あるんやったら返して」と伸ばしてきた小春の手を避けると、「ありがたくいただきます」とポケットにしまった。
(そういえば、こいつも女か・・・)
「あのさ、聞きたいことあるんやけど」
「聞きたいこと?」
「お礼にご飯連れて行かれるとしたらどこがええ?」
「ハっ!?お礼!?」
「あぁ。お礼にご飯を奢る約束をしてて」
「・・・はぁ?」
「あぁ、俺じゃなくて友達がな」
「なんや、この前の友達の話?」
小春は納得した顔をして「友達な、友達の話な」と独り言のように言った。
「誰の話や思ったんや?」
「・・・うるさい!」
小春は、顔を真っ赤にさせて怒って去っていった。
「俺、そんなうるさかったか・・?」
奏汰はきょとんとした顔で小春を見送った。
結局答えが見つからないまま、放課後を迎え、
「さっきの話やけど」
「あぁ、メシの話?」
「送っといたから、スマホに」
「何を?」
「店や、おすすめの店の一覧。友達に教えたり!」
小春はまた不機嫌そうに去っていった。
「なぁ、
「女性はホルモンの影響で気分が上下するんやて母さんが言うてたで、知らんけど」
そんなもんかと自分を納得させると、家でスマホを見てみる。
小春から3軒ほど候補の店が送られてきている。
(この辺りなら予算内やな)
店を決めると、小春にサンキューと犬のスタンプを送った。
早速翌日の放課後に図書室へ向かった。
図書室の奥で、
静かに本のページをめくっている。
ただそれだけなのに絵になっている。
「あの、
「い、市川くん!?」
突然声をかけられてびっくりしたのか、本を机の上に落として、目を丸くさせている。
「ごめん、驚かせちゃった?」
「いや、そんなことは・・・。どうしたの?もう試験勉強は終わったでしょう?」
梨央の横に座ると、静かに深呼吸をして息を整えた。
「うん、ほら前にメモもらったやん?その例のお礼の話をしたくて」
(言ったー!勇気出した、俺)
自分を褒めながら、恐る恐る梨央を見ると、顔を真っ赤にさせている。
「あ・・・うん」
「いいお店見つけたから、どうかなって思ったんやけど」
「うん」
静かな時が流れる。
前は勉強という共通の話すべき話題があったが、それがないと何を話していいかわからない。
「あの・・・いつにしますか?」
梨央も少し頬を赤らめて、小さな声で尋ねてくる。
「あぁ、そやな。いつがええかな?俺は部活も入ってへんし、休日も寝てるだけやからいつでもええんやけど」
「じゃあ、今度の土曜日はどう・・かな?」
「土曜ね、うん、予約しとくわ」
鼓動も速くなって、なんだか息苦しい気すらしてくる。
「じゃあ、また予約出来たら言うなぁ」
なんだか恥ずかしくて気まずくて、そう言って奏汰は席をはずそうと立ち上がった。
進もうとすると、制服の裾が引っ張られている。
振り返ると、梨央が裾を持っている。
「あの、その、連絡先、交換・・・しときませんか?」
真っ赤な顔でスマホを出してきた。
「あ!あぁ、せ、せやな。そっちの方が、連絡しやすいしな。ハハハ」
無言で連絡先を交換する。
なんとなく自分の指先が震えている気がする。
(俺、カッコわる…)
なんとか連絡先を交換すると、「また」といって別れた。
家に着いてスマホのアプリをみると、“大久保梨央”の連絡先が追加されている。
少しニヤつきながら、ベッドで横になると、パソコンが急に立ち上がった。
「・・・え?」
パソコンに何やら文字が表示されている。
「嘘やろ・・・俺テスト頑張ったばっかりやん」
恐る恐る起き上がってパソコンに近寄ると、「体育祭で活躍せよ」と表示されている。
「次は体育祭かよ」
カタカタと音がして、「世界の未来がお前にかかっている」と表示された。
「未来の俺、めっちゃ脅してくるやん。俺がイベント系で活躍できるわけ・・・」
プシューっと音がして、パソコンの電源が切れた。
「次は体育祭か・・・」
奏汰は、ため息をついて、再びベッドに横になった。
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