偽カップルだけど、同居生活は思ったより複雑かもしれない!

蘆薈麗德

第1話 偽カップル誕生!同居生活のルールを決めよう!

私は佐藤香織、19歳の大学2年生。


家はそれなりに裕福で、お小遣いもそれなりにもらっているけど、今の経済状況じゃ、私が欲しいアニメグッズを買うにはちょっと足りない。


そんな時、学校の近くにあるアパートが「カップル限定」で家賃が割引されるっていう情報を知って以来、どうやって誰かとルームシェアできるか考え続けてたんだ。


男の人とルームシェア? うーん、彼氏でもない男の人と一緒に住むなんて、なんか変だし、ちょっと危険な感じもするよね――。


そんな時、出会ったのが山田美和子さん、20歳で大学3年生の先輩。


女の子同士でルームシェアするなら、まだ安心できるかもって思った。


そこで、私たちは安い家賃を手に入れるために、カップルのフリをすることに決めたんだ。


ちょっと気まずいけど、アパートを借りるためには、お互いのほっぺにキスしたり、愛称で呼び合ったりして「カップルです」って証明しなきゃいけない。


なんだか百合っぽくて、正直ちょっと気持ち悪い気がする。


だって、私的には女の子同士の関係って、ちょっとそういうのは無理って思ってるから。


でも、安い家賃で住みたいっていうのはお互い同じ気持ちだし、本当に困った状況だよね!


——先に言っておくけど、実は美和子さんに前に聞いたことがあるんだ。彼女、女の子がタイプじゃないって言ってたんだよね。


どうして「山田さん」じゃなくて「美和子さん」って呼んでるのかって? それは彼女の要望なの。ほんと、変わった人だよね。


「佐藤さん、今すぐ私にキスして。」美和子さんが突然言い出した。


「えっ、で、でも…私たち、偽カップルなんだよ?」


「でも、偽物だってバレちゃったら、周りに怪しまれるじゃない。」


仕方なく、私は勇気を振り絞って彼女にキスをした。正直、すごく気持ち悪かった。


「美和子さん…あなたの唇、すごく柔らかい…!」


「当然よ! 女の子の唇って、男の人よりずっと柔らかいんだから。」


こうして私たちの、表向きはカップルだけど内心は全然違う「恋愛」生活が始まった。


毎日イチャイチャしなきゃいけないなんて、正直うんざりだよ…


でも、このおかげで安い家賃でアパートに住めるなら、まあトントンってところかな?


「君たち、なんかちょっと不自然じゃない?」


「佐藤さん、次はどうしたらいいかな?」


「うーん、もっと本気で演じる必要があるかもね。」


「わかった…じゃあ、今度はあなたの唇にキスするよ!」


私は再び彼女とキスをした。でも、心の中に妙な違和感を感じた。


もしかして、美和子さんのキスが上手すぎた…とか?


いやいや、違う! これはただ、もっと本気で演じないといけないっていうプレッシャーに違いない!


私は断固として自分に言い聞かせた。私は女の子が好きなわけじゃない、これは一時的な「役作り」なんだから。


だけど…?


いや、そんなこと、絶対にあり得ない!


私たちは引き続き、カップルのふりをして、嘘くさいキスや抱擁を繰り返した。


外から見れば、まるで恋人同士に見えるかもしれないけど、私の心の中は矛盾と不安でいっぱいだった。


でも、どうしようもないよね?


安い家賃でアパートに住むためには、こうして一時的に「役」を演じるしかないんだから…。



🔹


夜になって、ついに私と美和子さんは学校の近くにあるこの小さなアパートに引っ越してきた。


正直、カップル限定の割引があるとはいえ、部屋は思った以上に広々としていて、家具も一通り揃っている。なんだかんだで、悪くないかも。


美和子さんは窓辺に立ち、何かを考えているようだった。


「佐藤さん、」彼女が突然口を開いた。「今夜、どうやって寝るの?」


「えっ?」私は荷物整理の手を止め、美和子さんの方を見た。


「カップルが一緒に住むんだから、やっぱり同じベッドで寝るのが普通じゃない?」


その瞬間、私は一気に焦った。確かに外ではカップルのふりをしているけど、ここは部屋の中だし、プライベートな空間ではそこまでしなくてもいいはずだよね?


「ごほっ、ごほっ。」私はわざと咳払いをして、気持ちを落ち着けるために表情を引き締めた。「ここは、ルールを決めるべきだと思うの。」


「ルール?」美和子さんが興味深げに眉を上げた。


私は大きく頷き、机の方に歩いて行き、手近なペンを掴んで、メモ帳に書き込み始めた。


「一つ目。外に出る時は、私たちがカップルだってフリをしなきゃいけないから、できるだけ親密に振る舞うこと。」


彼女は近づいてきて、真剣に耳を傾けている。


「二つ目。部屋の中では、ただのルームメイトとして過ごす。お互い干渉しないこと。」


「干渉しないって、具体的にはどういうこと?」彼女が問いかける。


「つまり、家の中では外でみたいにイチャついたりしないってことだよ。」私は彼女を見上げて続ける。


「君には君のスペースがあるし、私には私のスペースがある。お互い、自分のことに集中しようってこと。」


「ふむ。」彼女は軽く頷き、この提案には特に異議はない様子だった。


「三つ目は……」私は一瞬間を置き、彼女をちらっと見てから、視線を下に落とした。


「寝る時は、当然別々に寝ること。二つのベッドで。」


美和子さんがクスッと笑い、少しからかうような口調で言った。


「佐藤さんって、本当に私と一緒に寝るのがそんなに嫌なの?」


彼女の言葉に、私は少し戸惑い、顔が一気に熱くなるのを感じた。


「嫌なわけじゃないけど……私たち、どっちもストレートな女の子だよね!」私は慌てて説明する。


「それに、一緒に寝るなんて、普通におかしいでしょ!」


彼女は壁にもたれ、腕を組んで、軽く笑みを浮かべた。


「まあ、そこまで言うなら、私は構わないわ。」


「でも、佐藤さん。」彼女は自分を指差しながら言った。


「いつも美和子って呼んでるけど、外では『ダーリン』って呼ぶって約束したじゃない?」


そう言われて、私は思わず鼻をこすりながら、心の中で彼女の直球すぎる言葉にちょっと戸惑った。


「そんな約束してないでしょ!」すぐに反論した。


「それに、本当のカップルでもそんな恥ずかしい呼び方しないでしょ!」


彼女は小さく頷き、口元にかすかな微笑を浮かべた。


「分かったわ、佐藤さん。約束するわ。部屋の中では…お互い干渉しないことにしましょう。」


「うん。」私はほっと息をついた。ようやく、基本的なルールが決まった感じだ。


部屋にはしばし静寂が訪れた。


彼女の顔を見つめながら、何とも言えない違和感を覚えた。


本当に彼女、女の子なんだよね。どうして私と偽装カップルなんてするんだろう?


本当に家賃を節約するためだけなのかな…いや、私にそれを疑う権利なんてないけど。


「それじゃ、佐藤さん。今日はこんなところで。」


彼女は軽く視線をそらし、自分のベッドの方へ行き、荷物を置いた。


私も自分の即席ベッドに戻って、天井をぼんやりと見つめ始めた。


どうも、この「契約関係」は私が思っていたよりも複雑な気がする。


本当に、私たち、お互い干渉しないでいられるのかな――?


🔹


一週間後、私はいつも通り文学部の教室に足を踏み入れた。


ドアを開けた瞬間、教室中の視線が一斉にこちらに向けられ、少し気まずい気分になった。

やっぱり、美和子さんと学校で偽装カップルを演じ始めてからというもの、周りの視線が気になって仕方がない。


私はなんとか自分の席にたどり着き、視線を避けるようにうつむいた。


「香織!」背後から聞き慣れた声が響いた。


振り返ると、そこにいたのは友人の長谷川奈々だった。


奈々とは大学一年の頃に知り合った。彼女も私と同じ日本文学専攻で、明るくて元気な性格だ。


彼女は私の隣の空いている席に勢いよく腰を下ろし、目を輝かせながらこちらを見つめてきた。その眼差しは完全に“面白い話を期待してる”モードだ。


「最近、どうしちゃったの? 山田先輩といつも一緒じゃん。」彼女は声を潜めて、でも興味津々に尋ねてきた。


私は何とか平静を装い、視線を落として答えた。「あぁ…ただの普通の関係だよ。」


「普通? いやいや、私、カフェであなたたちが手を繋いでるの、バッチリ見てたからね! しかも、香織、あんなに幸せそうに笑ってたじゃん。」奈々は口元を手で覆い、目にはいたずらっぽい色が浮かんでいる。


やばい、心臓がドキドキしてきた。美和子さん! これは完全にあなたのせいだよ! なんであんなに本気で演じる必要があるの?


私は必死に心を落ち着け、頭の中でどう説明するべきかを高速で考えた。


「もしかして…あなたたち、付き合ってるんじゃない?」奈々は目を細め、本気で疑っている様子だった。


私は一瞬、言葉を失った。本能的にはすぐに否定したい気持ちが湧いてきた。


でも――もしここで否定したら、私と美和子さんの「カップル」設定がバレてしまうかもしれない。

美和子さんにも、普段からちゃんとカップルらしく振る舞うように念押しされていたし、下手にボロを出すわけにはいかない。


どうしよう? 完全に板挟みだ…。


「うーん……」私は小さくため息をつき、最終的には妥協することにした。「そうだよ、私と美和子さん……付き合ってるんだ。」


その言葉を口にした瞬間、まるで胸に重い石がのしかかったような感覚がした。


奈々は目を大きく見開き、驚いた表情でこちらを見つめた。「本当に?! 二人が……いつから?」


とっさに言葉に詰まりそうになったが、仕方なく肩に力を入れて、なんとか言い繕った。「そんなに長くないよ……最近、付き合い始めたばかりなんだ。」


奈々の表情は驚きから次第に興奮へと変わっていき、どうやらこの秘密を守ることが彼女にとって大きな使命のように感じられたらしい。


彼女は私に顔を近づけ、声をひそめて言った。「まさか、香織が女の子を好きになるなんて……今まで恋愛には興味ないと思ってたのに!」


私は苦笑いを浮かべながら、何とかその場をごまかした。「うん……私も最近、気づいたんだ。」


――ああ、これでまた嘘を重ねてしまった。


「山田先輩は本当に幸せ者だね。」奈々は感慨深げに言った。「二人、本当にお似合いだよ。で、結婚はいつするの?」


「な、なんでそうなるのよ!」私は慌てて手を振り、そんな冗談を聞いて耳まで真っ赤になってしまった。


「でも、ほんと羨ましいなぁ。」奈々は続ける。


「山田先輩みたいなタイプ、性格も良いし、綺麗だし、ちょっと年上で頼りがいがある感じ、すごく安心できそうだよね。」


「もし私も女の子が好きだったら、絶対山田先輩みたいな人がタイプだと思うな。」


頼りがい? 思わず笑いそうになった。だって、美和子さんなんて、時々冗談ばっかり言って私をからかうんだから。


この前も、冗談で「一緒に寝よう」なんて言って私を驚かせたし!


「そうだ、香織、二人はどうやって付き合うことになったの? 私たち、こんなに仲が良いのに、全然話してくれなかったじゃん。」


頭が痛くなってきた。どうやって、それらしい理由を作ればいいのか、全然思いつかない。


そうこうしているうちに、授業開始のベルが鳴り響いた。


「えっと、奈々、授業が始まるよ。」私はすかさず前方の講師を指差し、話題を逸らそうとした。


奈々は少し口を尖らせ、不満そうに言った。「なんだか、つまんないなぁ。」


先生が講壇に立ち、配布資料を手に取り始めたのを見て、私はようやく一息ついた。この「尋問」をかろうじて切り抜けたようだ。


でも、正直に言うと、こんな生活、精神的にキツすぎる。


毎日カップルのふりをしなくちゃならないし、周りの好奇の視線や質問にも対応しなきゃいけないなんて……


私はノートを開き、なんとか集中しようとした。


「そうだ、夜にカラオケ行かない?」奈々が突然、顔を近づけて聞いてきた。


「あ…無理だよ。今夜は美和子さんと約束があって…」


言葉が口から出た瞬間、自分を心の中で思いっきり罵った。


何してるんだ、私! なんで余計なことを言っちゃうの!


案の定、奈々は「やっぱりね」と言わんばかりの表情を浮かべた。


「ふーん、じゃあ、二人でデート楽しんでね。」彼女はにこやかに微笑んだ。


私は慌てて声を潜めて抗議した。「ち、違うよ! そういうんじゃないから!」


でも、奈々は「全部分かってるよ」という顔をして、手をひらひら振りながら、笑顔で自分の席に戻っていった。


はぁ——。


もういいや。ここまで来たら、全部やりきるしかない。後戻りなんてできないんだから。


ただ、これ以上この「偽装カップル」生活が複雑にならないことを祈るばかりだ…。


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