第21話

 ウルトゥルプレイヤー達に取って目の前で起こる戦いは戦争映画と言うに相応しい光景だった。凄まじい怒号と銃撃音、爆発音が続いている。そこにワイバーンの咆哮が混じり、地面に落下すると共に大剣や槍、杖を構えたプレイヤー達が先導するギリードゥ、モリゾウの号令に合わせて突撃して攻撃を加えていく。

 その攻撃は一撃でどれだけダメージを与えられるかを求められるので普段前線に出ない攻撃魔法系の魔術師が最前線に、盾受けメインの最前線タンク職が後方で狙撃をするギリードゥ、テンチョーやトドマン達を守る様にガチガチの防御に守っていた。

 また、最前線組もただでさえ防御力が無いのに少しでも足の速さを求める為に鎧を脱ぎ捨て支援も速度と火力を上げるのみで防御系は切り捨てた。

 その結果、最前線では10名程のウルトゥルプレイヤーを纏めてるモリゾウとそのプレイヤー達が走り回り、テンチョーが時折支援射撃をして、モリゾウやテンチョーにヘイトが行き過ぎた際はトドマンが射撃を加えてヘイトを分散させた。

 ウルトゥルプレイヤー達は支援魔術を扱える者達がトドマンやテンチョー達の余り動かない位置に大量に待機しており、魔力切れや死亡した際に直ぐに交代できる様待機している。

 構成で言えば前衛1、中衛2、後衛7という歪過ぎる編成になっていたのは言うまでもない。


「何喜んでんだ!

 予定より5分遅れなんだぞ!」


 HPの残りが三分の一を到達するのにわずか40分になった際にモリゾウが沸き立つ味方を怒鳴り付けた。ライブ配信もしているので、コメントが流れてくるがウルトゥル界隈のコメントは大盛り上がり、たまに流れてくるCoO界隈勢と思われる新規コメントは非常に否定的なコメントが多い。

 モリゾウの方はこの激戦の中を殆どが指示と高い独り言にコメントとのやり取りを占めており、黙ってるのが息継ぎとテンチョーからの指示を聞いてる時だけではないか?と言うほどだ。


「魔術師は合図共に最大火力撃てるよう準備しろ!

 殴り組は命を燃やして殴りに行け!おせーんだよ!」


 大激怒するモリゾウは平然と飛び立とうとするワイバーンの顔目掛けて古そうなアサルトライフルを撃ちかける。ワイバーンはその銃撃に目を細めて嫌がる様に顔を逸らす。

 しかし、空に上がると言う選択の方が強いのかモリゾウ達を無視して飛び上がろうとしている。


「火炎弾!」


 モリゾウが叫び魔術師が炎の弾、ファイアーバレットを放つ。これはファイアーボール系最上位で速度が速く、また爆発効果もある。これを飛び立とうとするワイバーンの背中に向かって撃つ。


「突撃にぃー!!」


 そして、モリゾウが叫ぶ。

 ワイバーンの背中でファイヤーバレットが爆発し、不安定かつ絶妙な力加減で飛び上がった瞬間に背面からの爆圧。ワイバーンは地面に叩きつけられる様に落着した。


「前へぇ!!」


 モリゾウの号令に合わせてウルトゥルプレイヤー達は全速力で走る。モリゾウは最後を怒鳴りつけながら追い立てる。


「行け行け行け!!

 おっせーなー!!!公園にいるジジイやババアかお前ら!!さっさと魔術撃てよ!仕事出来ねぇならゲーム辞めちまえ!

 射線被んなよ!後ろから弾来てんぞ!考えろ馬鹿!テメェらの頭は飾りかボケ!」


 モリゾウは倒れたワイバーンの目に向かって銃撃をし始め、他のプレイヤー達は全力で技を叩き込む。リチャージが終わった1番強い攻撃をバフを掛けまくって殴るのだ。一撃の大きさがその遅れを取り戻す。技発生後の硬直は他のプレイヤーによる蹴りや殴りで強制解除し、更にダメージを重ねる。

 モリゾウの退避指示があるまでは全力なのだ。


「退避退避!!」


 モリゾウが叫び、それに合わせて直ぐ様逃げ出す。それに合わせてモリゾウは収束手榴弾を顔周辺に投げ付ける。その際、ワイバーンが口を開けて吠えたのだ。その動作が偶々重なり、ワイバーンの口に収束手榴弾が入った。

 そして、5秒後にワイバーンの頭が吹き飛んだ。HPは全損し、クリアしてしまったのだ。


「……はぁ?」


 全員、突然の事に動きをやめてしまう。それはテンチョーやトドマンも同じで、コメント欄ですら一瞬コメントが止まる。


「おいおいおい!

 口に手榴弾放りこめるのかよ!」


 そして、その場で最も速く現実に戻って来たのはモリゾウであった。


「つまり、今後口があるモンスターにゃ爆弾抱えてわざと食われたら大ダメージ与えられるって事だな!」


 モリゾウがウヒョーっと笑いテンチョー達の方に駆け出す。


「テンチョー!今の検証する為にもっかいコイツ殺しに来ましょう!」


 モリゾウの言葉にテンチョーとトドマンは現実に帰って来た。


「そうね。

 作戦終了!」


 テンチョーが宣言するので任務達成かつ、想像より早い時間で終わる。そして、全ログインプレイヤーに対して新エリアが開放されたことが通達され1時間後にはゲーム系のネットニュースの速報やSNSのトレンドに入った。

 てんやわんやの大騒ぎであったがモリゾウは勿論、テンチョーやトドマンは我関せずと今の現象を再現する事にした。結果から言えば可能ではあるものかなり面倒くさいのと手榴弾でやるのは中々に難易度が高いであった。

 また、一撃で殺すには収束手榴弾が必要であり、炸薬がTNT1.128kgも必要になるのとそれを投げつけるのは中々に骨が折れると言う事だ。当たり前だが筋力を強化すれば良いのでキャラ次第では楽に倒せるかもと言う検証結果だったが、どちらにしろ20メートル最悪数メートルまで接近しなければならないのでかなり無茶苦茶なことを言っているとも言える。

 それから検証の配信を終えた3人は新しいエリアの新しい街に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る