第2話
モリゾウは街に帰り、早速教わった店に走る。周辺の地図を買い、武器屋に駆け込んで弾薬を見る。
弾薬は凄まじい数があった。先ず、口径表記で大別してあり希望の口径、例えばウェルロッドMk.2であれば.32APC弾と言う弾を使う。そして、ややこしいがこの.32とはインチ表記でありミリに直すと7mm程の大きさだ。なので、此処でモリゾウがタップする弾丸の大きさは7mm級弾丸と書かれた中別だ。
そして、そこから更にリムド弾丸、リムレス弾の細別がある。今回の.32APC弾はセミリムド弾なのでリムド弾を選択する。ここで漸く弾一覧が出て来る。
「見難すぎるだろこの一覧表。
馬鹿がよぉ……」
そして、モリゾウはイライラしながら並んでいる弾薬を探す。ライフル弾は当たり前として拳銃弾まであるのだから面倒臭い。
「いや、待てよ?
ここに弾があると言う事はつまり、銃も出る。おいおいおい!
クソ一覧だけど、こら……コラスゲェゾ!!」
武器屋のカウンターでモリゾウは大騒ぎだった。
それから弾丸の一覧表を全てスクショすると目的の弾丸を全て手に入れてからログアウトする。
此処で突然だがモリゾウの中の人の話をしよう。本名は森野十三郎重蔵、祖父が酒屋をやっており、代々長男が産まれた際に一郎から始まる酒を使っていた。そして、その13番目故に十三郎と成り、父親もそれをミドルネームとして登録してしまったので彼の名前は森野十三郎重蔵になったのだ。
「うひょぉー!!」
十三郎は奇声を上げながらスクショを改めて確認する。大体の銃は基本的に共通弾薬であり銃を絞る事は無い。例えば9ミリパラベラム弾と言う弾丸は9×19ミリ弾と言う弾丸の直径が9ミリで薬莢の長さが19ミリある弾丸を指す。この弾を使う銃は非常に多く、有名どころで言えばグロック17を代表とするグロックシリーズ、ベレッタの92シリーズで有名なベレッタ、サブマシンガンなどにも使えるのだ。
しかし、弾丸によっては銃種を特定や絞る事は可能だ。例えば十三郎が現在眺めている25×40ミリ擲弾と言うグレネードランチャー弾は使用する物がXM25というセミオート式のグレネードランチャーが主として使う。
「まじか!XM25出るんか!?
40ミリ擲弾もあるし……は?
50ミリTYPE89ハイエクスプロッシブ……は?は?は、八九式榴弾って事は八九式重擲弾筒出るんかよ!!」
モリゾウは大興奮すると共に彼が根拠地としているCoOの非公式攻略ウィキを開く。ウィキは世界中にいる有志の編集者達が日夜公式が行う通知非通知のアップデートやイベント等の情報を編纂していく場所だ。
そんなウィキの大人気ページの一つである使用可能武器一覧を開き弾薬で照合していく。
このゲームは第二次世界大戦から現代に至るまでの時代を押さえており世界で最も撃てる銃の種類が多いゲームとしてギネスブックにも乗っている。
何ならマイナーな銃器会社は此処ぞとばかりに宣伝を兼ねて銃器のデザインデータを差し出したりもした。
「ふむ、7.7ミリ×58RLだから九九式の小銃や機関銃が使えるのか。
つーか、6.5ミリ×50SRってことは三八式とか十一年式とかも出て来るんよなぁ!?
拳銃弾だと……南部ちゃんが確か8ミリ×22だったよな?
どれどれ……あーあるわ。つーか、弾あっても弾倉とかどーなんだ?」
CoOはオープンワールドのシューティングなので弾倉や弾を纏めるクリップ等の概念がある。これを捨てると荷物は軽くなるが弾を込める動作が大変になったり、そもそも弾を撃つのが薬室に直接込める必要が出て来るのだ。
故に、基本的には弾倉を捨てないが捨ててしまった場合購入する必要がある。現状、UTSでウェルロッドの弾倉を捨てていない。なので、そこまで考えていなかったのだ。
「かーっ!!からダメだ!
また潜って街中で調べるか」
先ほどログアウトした十三郎は再びヘッドギアタイプのゲーム機を被るとベッドに寝転がる。そして、再びログインした。
先ほどログアウトしたのが武器屋だったので武器屋にスポーンする。すると目の前にガチガチの鎧を着たプレイヤーが立っていた。モリゾウは少し驚いたが別に興味もないし、プレイヤーも動かなかったので脇を通って商人に話し掛ける。
商人の項目には武器と消耗品に分かられていて、弾はこの消耗品に区分されていた。消耗品の中の火薬の項目で、此処の爆発物系と弾薬に別れている。なので、爆発物を選択すれば手榴弾が買えるのだ。
そして、この消耗品の中でその他を選択すれば弾倉が出て来た。
「よーし!
来たぞ!あん?サプレッサー?マジ?おい!マジか!」
他にもサプレッサーとかバレルとかもあった。
「え、待てよ。こんだけあるなら武器には銃が有るんじゃねーのか!?」
モリゾウは武器を見ていなかった。色々と大興奮していて冷静さを欠いていたのだ。案の定武器を見ると、銃と言う項目がある。
「ッカー!当たり前だよなぁ!!」
そして、案の定、銃の項目を広げると小銃、拳銃、機関銃、散弾銃と別れていた。
小銃を開くと単発式から弾倉式のボルトアクションライフル、レバーアクションライフル等があり、拳銃は大凡第一次大戦前後までのリボルバーから自動拳銃まである。機関銃は保弾板や弾倉を使用する物で二次大戦までのサブマシンガンも含まれていた。、ショットガンは第二次大戦辺りまでのポンプアクションや中折れ式等の物だ。
「あーおっけ。
三八式と拳銃はガバ……いや、デ・リーズル・カービン買うか?」
モリゾウはウムム腕を組んで考え込む。彼の頭の中には弾薬の統一とプレイスタイル、そして、自分が使いたい銃の3つが渦巻いていた。
「金の問題もある」
具体的に言えば拳銃一丁と所謂プライマリ相当の二丁を買うと弾が買えなくなる。
「うむ」
そこでモリゾウは大胆かつ妙案と言うと流石に誇張が過ぎるが妥当な銃を選ぶ。先ず一丁目がデ・リーズル・カービン、二丁目にM1911ガバメント、三丁目はウィンチェスターM1893“トレンチ”である。
弾丸は.45APC弾とガバメント用弾倉を8、12番ゲージの00バックショット弾とスラッグ弾を30発づつ、手榴弾一つと罠線、杭を買った。
M1897には銃剣もあるがこれはナイフの分類に入っているので見てみると予算をいささか超えていた。
「銃剣欲しいけど、金ねーもんなー
初心者ばっかだからPKも出来ねーしなー」
仕方ない、とモリゾウは諦めて商人名前から退くと先ほどのプレイヤーはまだ突っ立っていた。
「邪魔臭えな。
あ、もしかしてこれログアウトした場所でずっと突っ立ってるパターン?」
ゲームによってはログアウトした後も一定時間その場にキャラが残り続けるのでログアウトは極力街中や安全が確保されている場所でログアウトを推奨される事があり、UTSは正にそのタイプだったのだ。
CoOはそうでは無いのでモリゾウは何時もの癖でログアウトしていたが今度から気を付けようと邪魔臭いプレイヤーをドロップキックして通路脇に吹き飛ばす。非戦闘エリアなので衝撃が伝わるだけでダメージはない。
最も倒れて起き上がったりしないので無様に倒れたままの姿勢だ。
「さて、新しいおもちゃを手に入れた場合、すぐに使いたいってのが男の子のサガなのよ」
モリゾウは噴水のある広場まで戻るとモリゾウが殺しまくったプレイヤー達の一団がいた。
「あ、お前!」
「お、初心者共じゃん。
何してんのー?」
「何してんのーじゃねぇよ!
お前にぶっ殺されたせいでこっちはすっからかんなんだよ!」
「だから狩りに行って金稼いでたんだよ」
プレイヤー達が恨みがましくモリゾウを睨み付けるとモリゾウは大爆笑。
「俺もお前等から貰った金全部使って新しい銃を買ったわ。
大量に金稼げる方法ねぇの?」
「もっとレベルの高いプレイヤーがいっぱいある街行ってお得意の銃でぶっ殺して来いよ」
プレイヤーの1人が告げるとモリゾウは確かにと頷いた。
「お前天才かよ!
どこの街だ?だった方向よ?」
「本気で行くのか?バカだなお前。
あっただよ。精々その頭に輝く赤ダイヤに気を付けてな」
「さっさとぶっ殺されろ苔野郎」
「死に晒せこの野郎!」
「あ、さっきPKされた腹いせにPK掲示板にお前の事書いちまったから赤ダイヤ消えるまでマジで気を付けろよ。
赤ダイヤ付いてる時にPKされると手に入れれる経験値と金が10分の1になるぞ」
プレイヤー達の言葉にモリゾウはめんどくさそうな顔をした。
「つーか、俺殺しに来る奴いるんか?」
「あー……
まーお前マジでこの界隈のマナーとかそう言うの知らないっぽいから教えてやるけど、高ランクプレイヤーとかが初心者キラーとかの所謂新参者を遠ざける様なことするプレイヤーを処罰するんだ。
所謂自治警察とかそう言うのだな。で、指名手配の掲示板に赤ダイヤのプレイヤーを報告するとそう言う上位プレイヤーがやって来て赤ダイヤプレイヤーをキルするんだ。
ちなみにこの赤ダイヤは初犯、最初のキルから24時間以内に止めたら赤ダイヤは一日で消える。24時間過ぎて1人でもキルすると現実時間で1週間赤ダイヤ付きっぱなしになるぞ。
まぁ、1週間付きっぱなしの奴とか居ても次の日には殺されてるけどな」
プレイヤー達にレクチャーされたモリゾウはホウホウと頷く。
「つーか、なんでお前銃使ってるのにあんな強いんだよ。不意打ちだからか?」
それからプレイヤーの1人がそう言えばと言う感じで質問をする。全員それは気になっていたのか頷いた。
「確かに。聞いた話じゃ銃なんか全然当たらんって聞いたぞ」
「なんかチート使ってんのか?」
「答え教えろ」
プレイヤー達の質問にモリゾウはハァ?と首を傾げた。
「チートも何も、銃の扱いはCoOと同じだろーが。特性理解しろよ。
弾なんざ狙った場所に飛ぶんだよ。ちょっとゴブリン例に見せてやるよ。こっち来い」
モリゾウはプレイヤー達を引き連れてゴブリンが出ると言う平原に向かう。平原には確かにゴブリンが居た。
「おー!あの緑のがゴブリンか!?」
「そーだよ。
お前、ゴブリン初めて見たのか?」
「おう。
CoOには居ねーもんあんなキモいの。
ま、良いや。取り敢えず、CoOの銃ってのは照星と照門が合ってれば基本的にそこに飛ぶ。それはこのゲームもそうだった」
モリゾウはウェルロッドを引き抜いてゴブリンに軽く狙いを定める。距離は30メートル程だ。ゴブリンはこちらに背を向けていたので気が付いていない。
「んで、風が吹いてる。これは向かい風だ。
もちろん、この距離の向かい風なんかほぼ気にしなくて良い。だから」
そして、割と雑に狙ったモリゾウの射撃でもゴブリンの頭部に当たる。
「なっ!」
「本当に当たった!」
「意味がわからん!」
「お前等も銃買って練習しろ。
こんぐらいならすぐに出来る様になる。まー俺くらいになるなら流石に1000時間やるしかないが、この距離をしっかり狙って当たる様になるにはまー150時間くらい撃てば当たる様になるぞ」
モリゾウの言葉にプレイヤー達は急にアホらしくなった。
1週間近く練習しないと30メートルの距離のゴブリンに当てる事ができないのだ。
「じゃあ、良いや。
その時間を自分の得物に割いた方がマシだわ」
「違い無い」
「真面目に聞いて損したわ」
「舐めんな苔野郎」
「廃人め」
プレイヤー達がブーイングをすると、モリゾウはうるせーと中指を立てる。
「ちなみに、小銃だと……あそこのプレイヤーって初心者?」
モリゾウの指さす先、約300メートル先のプレイヤーは中堅クラスのプレイヤーだった。
「ありゃ中堅だな。
装備がフルプレートだ」
「あーほんとだ。
お前殺しに来た奴じゃね?」
「逃げるなら今だぞ苔野郎」
「泣いて詫びても許されんぞこの野郎」
プレイヤー達が何する気だとモリゾウを見る。
「まーフルプレートっつー事だが、彼奴は何故か兜を被ってねーな。馬鹿だっつーことだ。
CoOのプレイヤーで頭部に防具付けねぇ奴は基本聴力重視、索敵重視だ。テッパチ被った奴は基本頭に偽装網とか付けて大きさぼかす。
でも、あそこの馬鹿は頭を撃ってくださいと言わんばかりだ。だから撃つ」
モリゾウはそう言うと胡座のまま銃を構える。そして、次の瞬間引き金を引くとプレイヤーは倒れた。
「な?
因みにCoOプレイヤーならあんな射的は誰でも出来るぞ」
モリゾウはそれだけ言うとステータスの金を確認する。
「お、めっちゃ金入った!
すげーわ!俺、高ランクプレイヤーぶっ殺しに行くわ!」
「お、おう。気を付けろよ」
「馬鹿だなお前」
「死ぬと収入10分の1だぞ」
「死に晒せ苔野郎」
「高ランクプレイヤー舐めんなよこの野郎」
初心者プレイヤー達に見送られ、モリゾウは意気揚々と高ランクプレイヤーが居る街は向けて駆け出した。
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