師匠
海野とソフィアの乗る車内。
先ほどのトラックでの襲撃のあと、高速道路に入った二人は少し落ち着いた。
「さっきはやばかったね……」
「そうね……」
「この後の目的地なんだけど、北海道まで行くんだ。避難用の家があるからね。」
「そうなのね……ごめんなさい。ちょっと寝てもいいかしら?」
「うん。いいよ。」
ソフィアがこっくりこっくりして、眠りにつく。きっと疲れていたのだろう。
「そういえば、師匠は大丈夫かな?」
僕埼玉に入ったあたりで僕はそう呟くのであった。
21:33
師匠こと、天野源は『無空教』の幹部達に囲まれていた。
数は六人。そして全員謎の薬によって強化されている。
「悪いが最初から全力で行かせてもらう。」
幹部のうちの一人が天野に飛びかかった瞬間、天野は飛びかかってきた幹部の腕、足、首。全ての関節の骨を外し、無力化する。
「それで?次は誰がくるの?」
「化け物か!」
「お前らの方が化け物だよ。猿と人間のキメラとか。」
幹部達が怯んだ瞬間、天野がその場から動いた。
次の瞬間、先ほどまで立っていた幹部達が全員首の骨を折られた状態で倒れていた。
「これで終わりかな?」
天野はそう虚空に問うとその場から去っていった。
21:38
『無空教』教祖は天野が幹部達を倒したという報告を聞いて少し気弱になるが、すぐに薬を服用して落ち着いた。そして彼は部下にう言った。
「ヒヒヒヒッこんなこともあろうかと第二案を用意しといたわい!代替案を用意しておくことなど界隈では常識!」
「その案とは何でしょうか?」
教祖はうんうんと頷くと口を開いた。
「相手の駒が強い時、お前はどうする?」
「全勢力を持って叩き潰します!」
「馬鹿野郎!」
教祖は手元にあった湯呑みに入ったお茶を部下にぶっかけて怒鳴る。
部下の髪からはポタポタと緑色のお茶が滴っていた。
「申し訳ありません。」
「馬鹿馬鹿馬鹿!貴様のような奴がいるからさっきのランクマで負けたのじゃ!漁夫られただろうが!FPSもやったことがないのか!この無能が!」
教祖は今度は湯呑みを部下に投げつけた。パリンという音が鳴り響き、部下の頭に湯呑みがクリーンヒット!ヘッドショットにより、部下は倒れてしまった。
「何の為に『ヴァルキューレ』と『生徒会』と手を組んだと思ってる!あの天野への対策のためだ!あの化け物、いや、チーターを倒す方法!それは全員でチーミングをすることだ!そして強い駒は使いものにならないようにしてやれば良いのだァ!イヒヒヒヒヒッ!キャきゃキャキャ!」
教祖は狂ったように笑うと、モニターやヘッドホンなど、完全にゲーム部屋と化した自分の席に座り、射撃ゲームを一人で始めた。
それから数秒後、教祖はモニターへと向かって「この雑魚が!死ね!」と怒鳴り始めた。
『無空教』教祖、江戸川龍騎。一言でいえば狂人。子供部屋おじさん。
学力、なし。配偶者、なし。人望、なし。戦闘力、あり。ランク、アイアン帯
翌朝、4月19日。6:21
ソフィアが目を覚ますと車はちょうど新潟市に着いたところであった。
次回、逃避行。
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