カーチェイス

開戦

 4月18日21:33

 僕らは荷物を最小限で詰め込んだ。僕は髪を黒くして、『鞄』を持ち、外へと出る。

時刻は21:33。僕はスマホを操作して、車庫を開ける。

そこから黒い車を出し、僕は運転席に乗り込み、ソフィアを後部座席へと座らせる。


「車、運転するの?」


「うん。」


「犯罪じゃない?免許証とか……あるの?」


僕は免許証をすっと出す。


「これ、偽造じゃない!」


「うん。偽造だよ。あ、あとソフィアの分もあるから、やばそうな時はこれ使って。」


僕はすっともう一枚あった免許証をソフィアに差し出す。


「これ……は……まずいんじゃ……」


「そんな事言ってないで行くぞ。もう追手が来てる。」


僕はエンジンをかけ、アクセルを踏み込み、その場から走り出す。

ソフィアは追手?と気になり、後ろを振り向くと、後ろには猛スピードで走ってくるトラックがいた。

ソフィアにはトラックの中にいる人物の顔が一瞬見えた。その人物は顔をクシャクシャにさせながら笑っているようだった。


「あれ……」


「シートベルト閉めて。今から振り切る。」


僕はソフィアにそう指示した後、ハンドルを切って右に急カーブをする。後ろにいたトラックは曲がりきれず、壁と衝突した。だが、トラックの運転手はアクセルを踏み切り、壁をそのまま突っ切る形で追いかけてくる。

僕はバックミラーでその様子を見て軽く動揺した。

それから運転手がなぜ異常なのかについて察した。


「うーん、ガンギマリしてるね。あの人。」


多分クスリを飲んで気分を高揚させて、恐怖心を薄くしているのだろう。

ああなってしまった人間が一番怖い。

次の曲がり角。右に行けば広い道。左に行けばこの車がギリギリ通れるくらいの細い道。運転は難しくなるだろう。

僕は迷わず左へとハンドルを切る。車体は細い道へと吸い込まれていった。

その瞬間、ドゴォという音が後ろから聞こえた。トラックが無理矢理この道を通ろうとして失敗したのだろう。


「まあ、頭文字D歴6年の僕にかかればこんなもんですよ。」


「カッコつけてないで前を見なさい。事故るわよ。」


「うおっあぶね!」


僕は慌ててハンドルを切る。

なんとか逃げ切った。にしても家を出た瞬間襲ってくるとは思わなかったな……

僕はそのまま運転を続け、目的地へと向かった。

現時刻21:39


同時刻21:39

 師匠こと、天野源は海野宅前で『無空教』の幹部と対峙していた。


「天野源。君には死んでもらう。」


お決まりのセリフを言う無空教幹部に苛立ちを覚える。


「早くしてくれないかな。なるたけ早く終わらせたいんだ。そろそろ娘が産まれるからね。」


「フン。舐められたものだな。『無空教』も。」


「で、こんな少数精鋭で戦う気なの?」


相手の人数は六人。少なすぎるような気もする。


「いや、俺たちにはとっておきのカードがある。やはり、アナスタス様は素晴らしい!」


「へえー、それじゃあ手短に終わらせるよ。」


天野は構えを取る。『無空教』達は首に注射器で謎の薬を打ち込む。

その瞬間、『ヴァルキューレ』達の体が二回り大きくなった。


「悪いが、最初から全力で行かせてもらう。」


「薬ね……危ないからやめた方がいいよ。


次回、師匠vs無空教幹部


俺はラブコメをやめた。

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