誘拐

 ソフィアが来てから一晩が経った。

翌朝、4時。ソフィアがいない。

確か昨日ソフィアは隣の部屋に寝ていたはずである。

先に家に出たのだろうか。

そんなことを考えつつ、トレーニングの準備を進めるため、トレーニングウェアに着替えていると、師匠から電話がかかってくる。

出てみると、師匠はかなり焦った声で、


「源。ソフィアが攫われた。」


えっそんなことある?僕はそう思った。

確か昨日は家の中にいたはず。隣の部屋で寝かせたはずだ。

そんなことを考えながらソフィアが寝ていた部屋を確認する。

するとある違和感に気づいた。

窓に小さな三角形の穴が空いている。丁度窓のロックがある場所。

なるほど。そこから開けられたのか。

冷静に分析していると、師匠が、


「とにかく救出を頼む。位置は送っておくから。」


何を勝手なことを。


「え?僕が助けに行くんですか?これから学校ですよ。」


「僕は今から会議だ。」


さも当然かのように言う師匠に苛立ちを覚えた。


「いや、でも入学二日目で休むのは……」


すると、師匠は少し声を荒げる。


「会議に遅刻する方がまずいんだよ!大人としては!それにソフィアの護衛は君に任せたんだ。責任はちゃんと取れ。」


「その責任は師匠が押し付けたんじゃないですか。師匠っていつもそうですよね。」


「と、に、か、く!今すぐソフィアの救出に行くんだ!いいね?」


「いやですよ。師匠が行ってください。責任は……師匠?ああ!あの野郎!切りやがった!」


携帯からはプープーと音が鳴っている。

画面には師匠からのメッセージでソフィアの位置が書いてあった。

窓に空いている穴を見る。

まあ……師匠はどうせ助けに行かないし、このまま学校行っても胸糞悪いし……もうしょうがないなあ!助けに行くか。

僕はソフィアのいる場所まで走るのであった。

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