話し合い
ソフィアを家に上げて、食卓の椅子のうちの一つに座らせる。
椅子に座ったソフィアは少し緊張しているのか、少し動きが硬い。
とりあえず、お茶を沸かして、湯呑みに注ぎ、そっとソフィアの前に置く。
それからソフィアの正面に座り、
「ま、とりあえずお茶でも飲んで肩の力抜いてよ。」
「あ、ありがとうございます。」
ソフィアはそう言うと、自分を落ち着かせるためか、そっと湯呑みに触れる。それからお茶をちびっと飲むと、素早く湯呑みから口を離した。
猫舌なのかな?
その姿は小動物のようにも見える。
「大丈夫?熱かった?」
「いえ、大丈夫です。」
少し遠慮がちに答える態度のソフィア。結構距離を置かれているのだと感じる。
「それなら良かった。まあ、とにかく……今日からうちに住むってことでいいんだよね?」
ソフィアはコクリと頷く。
会話が続かない。気まずい。
僕がそんなことを考えている時、ソフィアは湯呑みを置き、少しボーッとしている。
「あ、あとさ、」
ソフィアはきょとんとした顔でこちらを見ている。
とりあえず口を開いてみたのだが、ここからどうしようか。
ソフィアは僕の口から出てくる言葉を待ってくれている、
小学、中学、高校、大学……あ、まだ高校生だった。とにかくこれまでの人生を振り返れ。何か話題が出てくるはず……
僕の中で出てきたのは4枚のカード
・なんて呼べばいい?
・どっかで会ったことがあるような気がするんだ。
・天気いいですね。
とりあえずどっかで会ったような気がするはクサいセリフだから無しにしよう。
天気いいですねはなんかコミュ症感半端ないし……
「あのさ、君のことなんて呼べばいいかな?」
出てきたのは自分でもよくわからない言葉だった。
「なんでもいいわ……ですよ?た、確か両親からはソフィかソフィアって呼ばれてる……ます。」
敬語とタメ口の間で出された言葉。ソフィアは焦りを感じたのか、頬を赤らめて俯いている。
「それじゃソフィで。そう言えばお母さんとお父さんはどうしたの?」
「えっと……二人とも……」
ソフィアが顔を陰らせて、うつむく。あ、これ聞いたらあかんやつだ。
僕は直感でそう感じた。とにかくどうにかしないといけない。この空気をどうにかしないといけない。
「べ、別に大丈夫だよ?無理に言えってわけじゃないから。あ、そうそう。君とどっかで会ったことがあったような気がしたんだけど、どっかで会ったっけ?ごめんごめん。」
「別に大丈夫……です。えっと、今日学校で会いませんでしたっけ?」
記憶にない。ソフィアの当然のことを言うような顔。
学校にいたか?いや、そんなはずは……こんな可愛い子がいたら絶対気にするし……
「会ったっけ?」
「忘れられてる……今日、その隣の席で……」
ソフィアはガックリと肩を落とした。落ち込ませてしまった。
「ああ、いたね!ごめんごめん。まだ初日だから全然覚えてなくて。」
まあ知らんけど。隣の人の顔なんて一回も見ていないから覚えてない。
「忘れられてる……まあ私影薄いですから……」
なんか申し訳ない。どうにかして言い訳を考えなければ……
「いや、別にね、今日ずっと前の奴……内田って人と話してたから……」
すると、ソフィアは諦めたような様子で、
「まあいいですよ……」
「その……ごめんね。あ、あと、今からご飯作るんだけど、何かリクエストとかある?」
「私が作りますよ。居候で悪いし。」
「そうなの?ありがとう。」
その後は僕に忘れられていたことにショックを受けるソフィアと、それを申し訳なく思う僕で気まずい空気が流れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます