出会い

 家に戻ると、黒塗りの高級車が一台止まっていた。

僕が帰ってくると、車の中から一人の少女と、一人の長身の男性、師匠が出てきた。

師匠は「やあ」と挨拶すると、一緒にいた少女のことを紹介する。

少女は薄い色の銀髪に、水色の目、少し幼い顔の少女だった。世間では美少女ともてはやされるタイプだろう。

そういえばどっかで見たことがあるような気がする。


「この子はジョセフ・ジョースター。」


「嘘ですよね?師匠。そんなフィジカル化け物の紳士じゃないですよ。この子は。」


師匠の冗談にすぐさまツッコミを入れる。すると、師匠はふふっと笑った。


「じゃなくて、この子はソフィア・ボビナ。ロシア出身の16歳の子だよ。彼女にはちょっと事情があってね。」


「それで一緒に住めって言うんですか?」


「そうだね。お願いできるかな?」


師匠が圧をかける。まるで師匠の後ろに龍が立っているようにも思える。


「いや、師匠の家で済ませればいいんじゃないですか?」


「だって、私妻いるし……それに君にもメリットがあるんじゃないか?」


そうだった。師匠奥さんいたわ。まあ確かに自分と奥さんと高校生の女の子は気まずい組み合わせだな。


「まあ……そうかもしれないですけど。」


少しソフィアのことを見る。まあ、確かに可愛いし、一緒に住んだらそういう関係になるかもしれない。でもな……一緒に住むってなると色々面倒臭いし、気を遣わなきゃいけない気もする。

そんな僕の考えを読み取ったのか、ソフィアが口を開く。


「私、家事はやるので!」


「まあ、それはありがたいな……」


というか、ソフィアの事情ってのはなんだろう。


「彼女もそう言ってるし、それでいいんじゃないか?もし無理だって言うのなら、僕に戦って勝ったならいいけど。」


無理な提案だ。

師匠は満面の笑み。

彼は勝ちを確信しているのだ。


「それは……無理な話ですね。ところで彼女にある事情ってのはなんですか?」


僕がその件について深掘りしようとすると、師匠は目線を右下にやって少し言いにくそうな様子を見せた。


「それについては……まだ詳しくは言えないけど、とにかく、彼女の護衛を頼みたいな。」


「護衛……ですか……何から守るんです?」


「『人造人間』かな?」


『人造人間』とは改造された人間のことである。人間離れした身体能力を持ち、場合によっては他の生物をベースとした能力を持っていることも多い。

そんな化け物達から追われている人を守れだって?冗談じゃない。


「それ絶対僕の手に負えないやつじゃないですか。」


「大丈夫。君ならできる。」


「その謎の自信はなんなんですか?」


師匠は再び満面の笑みを浮かべる。


「私の中にいる、何かが告げているんだ。と、言うわけで今日は帰るよ。」


師匠はそういうと、即座に車に乗り込んで、帰っていってしまった。


僕は改めてソフィアの方を見る。

そして気まずくなり、一言。


「とりあえず……お茶でも飲んで話をしようか。」


「そ……そうね。」


それが僕とソフィアの最初の出会いであった。


これが大きな戦乱を呼ぶとは誰も思わなかった。

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