高校入って一人暮らしはじめたら外国人美女と一緒に住むことになったら色々やばかった件について
海野源
序章
依頼
高校入学初日の朝、僕は久しぶりに校門をくぐる。ガラスで反射した自分の顔を見る。
(うん。大分マシになったな。)
僕は2年前から男磨きを始めた。
筋肉を鍛え、頭脳を鍛え、己の心を鍛え……
今考えれば懐かしい。筋トレしたり、寺に入って山籠りをしたり、オナ禁したり、山奥の古武術の達人に弟子入りしたり、中国の山奥でその道の達人に修行をつけて貰ったり、ある時はホストに弟子入りしたり……
その結果、僕は男としてある程度完成した。だが、満足するにはまだ早い。
『男磨きに終わりはない。』
磨かれた我が身で高校に入って初めて校門をくぐる。
こちらを見て、あのイケメン誰?と騒ぐ女生徒達。
ああ、大分成長したな。そう実感する。
全ては青春をリベンジするため。今日から始まる日々のため。そして彼女を作るため。そのためにやってきたことだ。
きっかけは2年前の秋。僕は一人の女性に告白し、振られた。そして告白の瞬間の動画は撮られ、学年中に出回り、ついには音madになり、YouTubeに流された。
学校では笑いもの。『キモメガネ』という蔑称をつけられ、蔑まれる日々。
そんな中出会ったのが『モテる男がやっている7つの方法』という動画だった。
僕はその動画を見て思った。
あ、努力して見返せばいいじゃん。誰も『キモメガネ』って呼べないくらい立派になればいいじゃんと。
そこから僕は男磨きを始めた。
下から数えたほうが早かった成績を学年1位にまで上げ、貧弱だった肉体を銃弾も弾き返せる程に鍛え、コミュニケーション能力も上げた。
今日からの日々は復讐だ。青春へ、学校へ、社会への復讐だ。
まずは復讐への一歩を踏み出そう。
僕は教室に一歩、足を踏み入れた。
教室に入り、しばらく座っていると後ろの席の男子が話しかけてきた。
「君、あの『海野源』だよね。」
「それがどうかしたの?僕が海野だけど。」
まさか告白の件で笑い者にする気か?
だが大丈夫だ。僕は成長したんだ。
2年前のことで笑えるなら笑えばいいさ。
「お前有名人だよ。なんか定期テスト以外は学校に来ないのに、毎回順位を上げてついには学年1位になったって。それに来るたびにゴリマッチョになったり、身長が高くなったりってイメチェンするって。」
「へえー。有名人なんだ。ちょっと嬉しいかも。ところでお前の名前は?」
「忘れたの?中2の時同じだった内田だよ。」
「内田か……」
うん。誰だっけ?純粋に覚えてない。あれから男磨きに夢中でほとんど覚えてなかった。
「そうだよ。海野。お前の親友の内田だよ。」
あ、親友だったんだ。マジで覚えてないわ。
「そ、そうだよな。僕ら親友だもんな。」
「もう全然学校来ないから心配したぞ?」
「それはごめん。」
「まあ今日からよろしくな。海野。」
「うん。」
自称親友はどうやらいい人らしい。
それから10分後。
「それでさ、やっぱギターがかっこいいと思うんだよ。」
「清楚派ベーシストとしての立場も捨て難い。」
「残りのドラムとキーボードとかどうしよ。」
「とりあえず、軽音に入部届出しに行くか。」
「そうしよっか。」
気づいたらめちゃくちゃ会話が盛り上がっており、バンドを組むことになっていた。
やはり僕たちは親友なのかもしれない。
それから入学式を終え、内田と話しながら帰っている途中、スマホに誰かから電話がかかってきているのに気づいた。
確認してみると、師匠からだった。
僕は電話を取り、スマホを顔へ少し近づける。
「師匠、お疲れ様です。」
「あ、源?入学式終わったばかりなのに悪いね。高校入学おめでとう。それで少し頼みがあるんだけど……」
こういう時の師匠の頼みというのは大抵面倒臭い。師匠は『現代最強』と呼ばれるくらいには強いのだが、面倒臭いことがあれば僕に丸投げしようとする癖がある。
「なんですか?師匠。また女性関係でやらかしたんですか?」
少し冗談めかして聞いてみる。
「別に浮気はしてないからね?私は妻一本だから。」
「それで頼みってなんですか?」
「そう。それね。少し護衛を頼みたいんだ。君と同じくらいの歳の女の子なんだけど、いいかな?」
「それで、どこで落ち合います?そして護衛の期間は?」
「君の家で。」
「あれ?ウチで匿う感じなんですか?」
「まあ、そういうことになるね。期間は三年間。君と一緒に生活しながら護衛する感じかな?」
「あ……あの、それって高校三年間丸ごとってことじゃ……」
「そうだよ。」
「あの、お断りさせていただきます。」
「お願いできる?」
師匠が少し圧を出しながら言う。
そういえば師匠は怒らせたらどんなことをやらかすかわからない人だ。
ここは逆らわないほうがいいだろう。
「わ、わかりました……」
「うん。良かった。それじゃあ1時間後、君の家で会おう。」
クッソ!あのクソ師匠が!
そんなことを考えながら通話を切り、急ぎで家へと帰るのだった。
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