G-04:ホンネで語って
今日もあたしはステージに立つ。
何度も歌った歌で、何度も踊った振り付けで、
「
「おつおつ! 会社終わりに来てくれたん?
「
ライブの後の特典会で、チェキ券片手に次から次へとやってくるファン。でも、あたしのファンはそこまで多くない。だから何回もおんなじ人と喋るし、時には他に待ってる人がいないからってチェキ券複数枚一気に使って結構長いこと喋り続けることもあるから、
あたしの3倍4倍の列をさばくリーダーのるみちんは、一生懸命特徴をメモしながら会話してチェキ撮ってサインをしていた。あたしもメモしなきゃ覚えられないくらいいっぱいのファンに並ばれてみたい。
まあ、あたしの頭じゃ、メモしたところであの半分も覚えらんないと思うけど。
るみちんはあたしが着たかったピンクの衣裳に身を包んで、会場の半分以上をピンクに染めて、それでも嫉妬とかって感情が湧かないくらいに可愛いし、努力家だし、メンバー全員のことを気遣ってくれて、完璧すぎて、ちょっと意味分かんない。
そんなすごい人、いる?
憧れだけど、尊敬してるけど、裏があるんじゃないかって思っちゃう。
あたしみたいに、心の中でクソみたいなこと言いながら、それを隠して笑ってるんじゃないかって。
もうあたしの列はすっからかん。
何度も回してくれる太客が何人かいるんだけど、今日はそのうちの二人しかいないから流石にずっと誰かがいるって状況になるのは無理だった。
まきのんは
あたしは後ろにある柵によっかかりながら、ぼんやりとるみちんの方を見ていた。
ソロパートも多くて、踊りも激しくて、今日は特にガチ歌だったからきっと疲れてるだろうに、メイクも崩れてなくて、キラキラで、本当にすごいな。
あたしはこうやって、よくるみちんのことを見ていた。見ているのはファンからも丸見えだから、るみちんにも筒抜けで、だからあたしはるみちん推しを公言しちゃってる訳なんだけど。
なんか、今日のるみちんはちょっと変だった。
何が変かは分からないけど、いつもと、少し違う気がした。
「るみち〜ん! ハグして撮ろっ」
「
「えっ?」
「え? どうかした?」
「や、ちょっと……え、今なんて言った?」
「何、って……
うそっ、るみちんが……るみちんがすっごいこと言ってる……!
やっぱりあたしの考えは合ってたんだ。るみちんだって完璧じゃなくて、心の中で言っちゃいけないこと思ってたんだ。
特典会場はシーンってなって、あたしはるみちんと、るみちんに暴言吐かれたお姉さんと、マネージャーさんをチラチラと目で追った。
お姉さんはブラウスの胸の辺りをギュッと握り締めて、プルプル震えてる。
るみちんは真っ青な顔をして、やっぱりプルプル震えてた。
これ、どうなっちゃうんだろう……るみちん、脱退とかなったら泣くんだが!
「る、るみちん……もっと、もっと言って……!」
「へぁ?」
キラキラ目を輝かせたお姉さんの放った言葉に、るみちんは聞いたことない間抜けな声を出した。
「完璧天使のるみちんに
「
「ご褒美しゅぎるぅぅぅ」
わあ、るみちん、良かったね。
心の声が表に出ちゃってもオッケーなこと、あるんだあ!
この日から、るみちんに罵られ希望を出すファンが激増し、あたしのるみちん尊敬ゲージはますます上昇するのだった。
そしてるみちんの恩恵に授かって、あたしもちゃっかりまきのんを罵っている、えへ。
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