第19話 「名探偵」の登場
「それは、一体、どんな方法なんだよ?」
「私らの会社が、世界で最初に開発に成功した、「知性」や「感情」を有する新型生成AIの『ガイア』に、この「万能荘人肉食事件」の解明をさせるのよ」
「ウーン、如何に、世界初の新型生成AIとは言え、問題は、これは、「理論」や「理屈」や「三段論法」等で解決出来る事件ではなくて、極基本的な「推理」からのみだけからしか解決でき無いのだよ?
確かに、この『ガイア』に、この事件を解析して貰うのは、良く、理解できるが、果たして、結果的には、どうなんだろうなあ?
そう言う、「推理」自体は、『ガイア』には、果たして、可能なのだろうか?」
「でも、そうは言っても、外に、良いアイデアは全く浮かばないでしょ。
だったら、駄目元で、挑戦してみましょうよ。
純一さん。今からでも、かっての慶早大学のミステリー研究会のイキノコリに、即、ラインを打って頂戴。明日は、日曜日で会社は休みだけど、せめて、当時の高木竜一副会長、あの高木先輩にだけにでも、私らの会社に出て来てもらうのよ。
この前の二人の結婚式の時、高木竜一副会長も来てくれていたけど、現在は、大手の出版社に勤務しているみたいだし、当時の、一連の「人肉食関連事件」の関係資料を、膨大な量に、スクラップにして、保存していると言っていたわ。
あと、重要なのは、故:林先生の遺稿の『人喰村伝説考』も持って行く事ね。
純一さんは、まだ、しっかり持っているんでしょう。
会社に着くなり、スキャナーで全部、『ガイア』に読み込ませるのよ。
後は、『ガイア』が、どのように推理するかだよね」
「ああ、もう、即、高木竜一副会長、もとい高木先輩から、明日、直ぐに行くって言う返事が来たよ。
じゃ、集合時間は、我が社で、明日の日曜日の午前9時からにしよう。
そう、返事するよ、いいね」
「それでいいわ。総合企画研究部室での『ガイア』の「サーバー」は、電源は落としていない筈だから、既に、色々な情報も、ネット上から、独自に収集している筈よ。
ここに、例の事件の「万能荘連続不同意性交殺人事件」のイキノコリ三人と、『人喰村伝説考』の原本があれば、キット、『ガイア』は、この私らが、思いも付かないアイデアを出してくれるかも知れないわよ。
さて、ここまで、準備したから、もう寝ましょう。勝負は、明日よ」
「そうだなあ、私も、長旅で結構疲れたし、これから一杯飲んで、寝るよ」
「んじゃね……」
さて、イヨイヨ、かってのイキノコリの問題の三人が、XXX株式会社の総合企画研究部室に揃ったのは、午前9時丁度だった。
早速、私は、スキャナーで『ガイア』に『人喰村伝説考』を読み込ませる。『ガイア』は、ほとんど、瞬間的に、この著作を読み込んで行く。
又、それが終わったら、今度は、高木先輩がこれまでに自分が収集した、一連の「人肉食事件」のスクラップ・ブックも、スキャナーで読み込ませていた。が、このような新聞記事や週刊誌の記事等は、既に、ネット空間にあふれており、ホトンドの情報は、取得済みだと、『ガイア』のアバターが答えた。
既に、作業開始後、約10分後、『ガイア』は、
「この事件に関する、全ての情報を、今、得獲得しました」と、答えたではないか。
で、いよいよ、これからが、直接に『ガイア』に聞いてみる番なのだ。
このような「知性」や「感情」を有する新型生成AIでの世界初のコンピュータ・ソフトは、このような難事件に、果たしてどのような回答を出すのであろうか?
先ず、この私が、今回の『万能荘』で出された「人肉食」の被害者は、何処の誰だか、まず、聞いてみたのだ。
「最初から、超難問を聞いておいでますが、未だに、当該、某県警でもその被害者の特定は出来ていません。
ですので、これは、今のままの情報では、回答のしようがありません」
と、アサッリと白旗を挙げた。
「そこを、無理して聞いているのよ、ねえ『ガイア』自体の「推理」では、どう、思うの?」
「これは、他人の人生が、私の一言によって、全部、一挙にヒックリ変える危険性があります。
軽々に答えるべき問題ではありません。
ただ、純粋に理論的に考えていけば、極、一般の人間が被害者になったとは考え難いのです。何故なら、極一般人が被害者であれば、遅かれ早かれ、何らかの証拠が出てる筈です。
しかしながら、ここで、一般の人間の人肉が、実に、簡単に手に入る場所が、日本で唯一あるのです。しかも、全く誰も疑ってかから無い場所なのです」
「えっ、それって、一体、何処ですか?」と、明菜ちゃんが『ガイア』に聞く。
「それは、『医学及び歯学の教育のための献体に関する法律』に基づく「献体」のある場所からなのです。
つまり、極簡単に言えば、大学の医学部等の研究室からです。
ここで、「献体」として提出された被験者の一部から、内臓や人肉の提供を受け取れば、これは、理論的には決して不可能ではありません。
勿論、当該大学の医学部の誰かの学生との、無言の協力が必要ですが……」
「えっ、そう言えば、あの村長の四男は、現在、地元の国立大学の医学部の学生だった筈。
ねえ、『ガイア』は、あの「人杭村」の村長の息子が、この事件に関与しているとでも、そう、言うの?」
「私は、そう言う断言は、決して致しません。
ただ、この方法で、該当の医学部の学生と、あの『万能荘』との間に、密約があれば、不可能では無いと、言ったまでです。
再度、繰り返しますが、これはあくまで可能性の問題を述べただけであり、この私自身が、このような、個人名を特定されるようなつもりで、この話をした訳では決してありません。
ここを、一気に鵜呑みにされると、非常に危険な「冤罪」を生む危険性があります。
決して、早まらない事を、この私に誓って下さい。
出ないと、これ以上は、答えられませんので」
しかし、ここで、三人とも、顔を見合わせた。
まさか、あの人肉が、大学の医学部の献体の一部だったとは、今の今まで、実は誰も、全く思い付きもしなかったからだ……。
「分かったわよ。『ガイア』が言う、この意見を全く鵜呑みにはしないけど、確かに、この方法なら、結構、沢山の人肉が、実に簡単に、存分に手に入るわよね。
勿論、冷凍保存して送ったりとかして、運搬する必要等の面倒な点は、あるけどねえ……」と、明菜ちゃんが頷く。
「さすがに、天下の『ガイア』だなあ。このようなアイデアは、全く思い付きもしなかったよ」と、高木竜一副会長、もとい、現在は、大手出版社勤務の高木先輩も、驚嘆の声を上げたのだった。
しかもである。
良く良く調べると、この私の実の父親でもある、あの青空精神科病病院の院長の正妻の三男も、やはり、今現在は、何と地元の某私立大学の現役の医学部の学生だったのである。
つまり、仮にである。この献体からの人肉提供が、仮に単なる推理や可能性だったとしても、それに該当しそうな学生は、あの「人杭村」の村長の息子のみでは無く、この私の実の父親の正妻の三男児も、その中に入って来る事になるのだったのだ……。
この私にしてみれば、最も、聞きたく無い回答でもあったのだが。
「じゃ、何故、そのような狂気じみた密約などがどうしてこの世に存在するのだ。
『ガイア』は、つまりは、「人杭村」を、かっては、本当に、「人を喰らう村」だったと言われる「人喰村」だったとでも言うのかい?」と、この私が質問をしたのだ。
「この質問も、実に大変に難しい問題です。ですが、如何なる証拠も残っていない以上、如何なる回答も出来ません。残念ですが」と、『ガイア』は答える。
「しかし、かって、交通事故死に遭う前に、故:林先生曰く、かっての人肉食時代の決定的な証拠を、次に出版する予定の『人喰村伝説考Ⅱ』に、その実際の写真を載せると言っていたのを、この私は、間違い無く聞いているのだ。
だが不思議な事に、②の「大学生グループ人肉鍋殺人事件」の時に、当該県警は、「人杭村」の、全ての場所を探索したらしいのだが、万一、「人肉食」が行われていたとすれば、食用には絶対にできない筈の、カルシウムで出来ている人骨等の集団墓地等がある筈であろうに、「人杭村」の何処にも、全く発見されていないと言うのも、これまた、不思議な事実なのだ。
それとも、これらの人骨等は、金槌等で粉々に砕いていて、川にでも流したとでも言うのかい?
だが、これだと、完全に人骨は消え去る事になるのであるが、では、今ほどの、生前の故:林先生の話と、逆に、非常に大きな矛盾に直面する事になるのだよ。
勿論、この人骨を粉々に砕いて、「人杭村」の真ん中を流れる中野川にでも流せば、魚の餌になるか、下流の川と混ざりあって、日本海に流れてしまう筈だよなあ。
これだと、完全に証拠隠滅できるがなあ。
しかし、これだと、逆に、如何なる証拠も残らないのだ。
つまり、故:林先生が言ったような、証拠となるべき、決定的な証拠写真を撮ろうにもね……絶対に、撮れないのだよ。
これが、以前からの、この私の、変わらざる疑問なのだよ。
では、『ガイア』は、この疑問に、どう答えるのだ?」と、私は、故:林先生時代からの疑問を、直球で投げかけたのだが……。
「そう言う、仮定の質問には、回答出来ません。
白石純一さんが、直に、聞いたと言われる、故:林先生の、次に出版する予定だったと聞いている『人喰村伝説考Ⅱ』に、その証拠写真を載せると言っていた話の、その確証が得られません。
何故なら、その話は、この私には、伝聞でしか無いからです。
これでは、やはり、明確な回答は、原則、不可能なのです」
と、さすがこのコンピュータ・ソフトは、如何に「知性」や「感情」があるとは言え、この点は、実に、無慈悲に答えるのだ。
イヤ、貴方こそ、「知性」や「感情」を有している唯一の新型生成AIでは無いのか、と思ってはみたものの、正統的な事実にしか原則的に、反応しない、あの『ガイア』では、ここまでが、多分出来うる限りの回答であったのであろう。
ここからは、最早、最後は、我々、人間の出番なのである。私、明菜ちゃん、そして高木先輩しか、今現在では、この問題に対処できる者は、この世の何処にもいないのである。
しかし、世界一のコンピュータ・ソフトでもある、あの『ガイア』ですら、ここまでしか、回答できなかったのである。
ここで、やはり一番の問題は、「人杭村」=「人喰村」の噂話は、単なる「噂話」なのか、それとも誰かの「からかい話」なのか、それとも「本当の事実」だったのか、『ガイア』は、全く、一言も答えようとしなかったのだ。
それに蛇足なのだが、先程のような回答は、私には、決して、一番言って欲しくも無い、結論だったのである。
何故なら、如何に評判が悪いとは言え、青空精神科病院長は、この私の実の父親らしいし、その正妻の子供が、現役の大学の医学生であって、仮に、この『万能荘』の「人肉料理事件」に関係しているとすれば、この私にも、全く関係が無いとは、言い切れなくなるからである。
イヤ、非常に、困った事になったものだ。
「明菜ちゃん、どうも、ここまでが『ガイア』の限界じゃ無いのかなあ。
後は、この私達が、一つ一つの疑問を潰して行かざるを得ないのじゃないのかい?
ともかく、先ずは、『ガイア』の唱えた、あの人肉の提供先が、大学の医学部の献体からだとの見解は、少なくとも、ここにいる誰一人も考えられ無かった事だ。
しかも、「人杭村」に、如何にも関係のある、二人の人物の子供が、現役の医学部の学生だとは、これも、何たる意外な情報だったのじゃ無いのか?
この僕としては、このどちらかが、あるいは最悪の場合、二人とも、この事件に関係しているかも知れないとも、思うのだが?
しかし、一体、これを、どうやって解明していけばいいのだろう?」
「一番、てっ取り早いのは、この情報を、あの長島県警本部次長に、コッソリと伝えてみたらどうかしら……。
まさか、あの県警でも、このような考えは持っていない筈。
何か、これが、「万能荘人肉料理事件」の突破口になるのかも?」
「確かに……」と、この私も、これ意外に、良いアイデアは思いうかばなっかたのだ。
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