第15話 XXX株式会社
さて、これからの話は、ここで一挙に、3年後まで、進む事になる。
つまり、これからの話は、今までの話からは3年後の話なのである。
この時には、既に、二人とも、XXX株式会社に入社していたのだ。
私は、取り柄が無いので、一番無難な総務課勤務からスタート。
明菜ちゃんは、社長令嬢と言う事もあり、総合企画研究部に即、入部。
しかも、驚くべき事に、何と、明菜ちゃん自身が、今までの慶早大学時代中に十分に考えて考え抜いていた、「知性」や「感情」を有する新型生成AIの開発に、世界で最初に実現し、同時に世界中に、一斉に発表した事だった。
どんなに少なくとも、最低あと10年ぐらいはかかると思われていた、この「知性」や「感情」を有する新型生成AIとは、では、如何なる物なのであろうか?
しかし、この新型生成AI『ガイア』こそは、驚くべき事に、「知性」や「感情」を有しているだけで無く、例えば美術品や文学の批評も真贋も、いわゆるその芸術性をも含めて、確実に表現出来き、見極める事ができた事だったなのだ。
例えば、一つの良い例が、次のような話に出て来るのである。
「人類から、戦争を無くすには、一体どうしたら、良いのでしょうか?」との質問に、
かっての生成AIでは、全く感情も何も無くて、無造作に、
「その最高の解決法は、全人類を、全面核戦争で絶滅させる事です」などと、今までの生成AIでは、このような回答を、平気でしていたのだ。
が、新型生成AI『ガイア』の最上部位に、ジーグムント・フロイド博士が唱えた、超自我(スーパー・エゴ)の頭脳ソフトを頂点に持ってくる事で、実に、論理的で真面目な回答に切り変わっていたのである。
そこには、人間にしか持てない「知性」や「感情」で、しかも、どちらかと言えば、最早、人間と言うよりは、最早「神」に近いような観点からの回答が、液晶上のディスプレイ上の独特のアバターから表現されて来ていたのである。
ここで、それが、いかなる回答であったかは、読者の方々の想像に任せる事にするが、ともかく、「全面核戦争での人類の絶滅」などと言う、トンデモ無い馬鹿げた回答で無かった事だけは、特筆すべきであろう。
更に、世界中の人々を、アット驚かせた事がある。
この新型生成AI『ガイア』は、
「『旧約聖書』で言う「創世記」の最初の記述、「光あれ、と神が言ったら、宇宙ができた」との記述こそ、かって、138億年前に、この宇宙に起きた、「ビッグ・バン」とそれに続く「インフレーション理論」を言い当てていたと、断言したのである。
これにより、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒の、信者達は、一発で、この新型生成AI『ガイア』に、傾倒したのだ。
ただし、新型生成AI『ガイア』は、盲目的に『旧約聖書』を信じる事は狂信的になり危険である。この『旧約聖書』には、現代科学と矛盾している記述も多いとも指摘した。
故に、この『旧約聖書』の創世記を書いた人間と、ビッグ・バン理論との共通性とは、C・G・ユング博士の唱えた、「意味のあるある偶然性の一致(シンクロニシティ)」に、近いのではと断言したため、急速に、あの熱狂は消えて行ったのだが……。
ともかく、このように、驚異的な新型生成AI『ガイア』のアバターの出現は、世界中を驚愕させた事は事実だったのだ。
まさにSF小説の世界の出現であったからだ。
自分で「考え」、「感情」を持ち、しかも「間違っていない」回答を返して来るのである。
だから、今まで数多く作られていた、自立型殺人ロボット兵器に、では、この新型生成AI『ガイア』のソフトをネットで接続してみると、「殺人」自体が間違いだと、いくら敵兵を殺害せと命じても、敵兵の殺害を自ら拒否したのである。
正に、「良心」の復活では無いのか?
漫画で敢えて例えて言うならば、自分で考え、自分で行動する、そして相手が悪だと思えば、自分からやっつけに行く、手塚治虫先生の漫画の『鉄腕アトム』のような存在の出現をも予言させるような、驚愕的な発明だったとも言えるのである。
これにより、明菜ちゃんは、わずか1年後には、XXX株式会社の総合企画研究部長に昇進したのだが、誰も、文句も言えなる筈も無い。
日本のたかが一中小IT企業が、世界的な超大型IT会社に勝った瞬間なのである。
これは、技術力の遅れが、専門家により指摘されていた日本の産業界に、一大、旋風を巻き起こしたのだ。
XXX株式会社の株価は、急騰したし、入社希望者も急増。
この大騒動の為、入社後の丁度1年後に予定されていた、白石明菜ちゃんと、この私、白石純一(私は、既に、2年前に提出していた「婚姻届」で、三井純一から白石家に婿入りし、名字は、三井から白石に変わっていたのである。この私は、白石姓を選んだのである)との、正式な結婚式は、何と半年程、遅れる事になったのである。
しかし、更に運が悪い事に、この結婚式の延期の期間中に、私の家族以外の他人には決して知られたく無いような、実に複雑な状況が、白石明菜ちゃんの耳元にも入ったのである。
しかも、この事は、この私自身も知らなかった事だけに、余計、この私は大変なショックを受けたのである。
元々、私は、父親が誰か不明の、母子家庭の出身であり、看護師をしていた母親の女手一つで、育って来ていた事は、彼女には内々に伝えてきていたのだが、色色と結婚式の下準備をしている内に、この私の、出生の秘密が、どう言う不運か、ポロリと判明したのであった。
それは、私の母が、自分の息子の結婚相手の父親、つまり明菜ちゃんの実の父親のXXX株式会社の社長の白石壮一氏に挨拶に行った時に、相手の誘導尋問にうまく引っかかり、フトした間違いから、実の父親の名前を漏らしたからなのだった。
しかも、この私の生まれる理由となった当時の話も、詳細に、話をしてしまったのだと言うのだ。
私としては、最も、聞きたくは無かった筈の名前なのだが、ああ、何と言う事だ!
私の実の父親とは、あの、悪名高い、青空精神科病病院の院長の、青空郁夫医師だったと言うのだ。
当時、青空精神科病病院の看護師の中で、最も美人であった母に、無理矢理、青空郁夫医師が自分の男性器を突っ込んで、中出しして、この私が生まれたらしいのだと言うのである。
だが、既に、結婚して子供もいる青空郁夫医師は、今更、重婚も出来ないので、私の母は、この青空精神科病病院を辞めて、別の私立病院に勤務していたと言うのである。
更に、気分の悪い事に、この私が、大学を卒業するまで、毎年200万円程度の援助は、してくれていたと言うのだ。
このような話は、私としては、最も聞きたく無かったのだが、この事により、ここで再び、完全に忘れてしまっていた、あの一連の「人肉食関連事件」を、再び、思い出す事になってしまったのは、紛れも無い事実だったのだ。
しかも、私自身とこの青空精神科病病院との関係が、全く無い訳でも無いとなると、この私にとっては、ある意味、色々な意味での、私の心に、今後、急激な変化をもたらして行く事になったのである。
その話は、更に、この物語りを、読まれていく内に、いずれ、分かって来るとは思うが……。
ただ、明菜ちゃんは、この話には、意外と寛容で、
「どうせ、いくら口コミが悪い病院だったとは言え、当該県警が捜査しても、何も無かったのだから、そんなに落ち込む事ないんじゃ無いの……。大体、純一さんのお母さん、今でも、あれだけの美人なのだから、若い時は、押して知るべしよ。
だったら、あの悪名高い、青空郁夫医師で無くても、例え外の医師であっても、手を出していたのかも知れないしねえ」
「そうは、明菜ちゃんは言うけど、この私は、今でも、青空精神科病病院は、この前の一連の人肉食関連事件に、何らかの関係があった事は、間違いが無いと思っているのさ。
これだけは、今でも譲れない、この私の信念でもある。
それが、よりによって、この私の、実の父親が、青空郁夫医師だったとするならば、これこそ、正に、冗談にもならない笑い話じゃないのかい?」
「いえいえ、女性には、色々な、人生があるのものよ。
この私が、純一さんと目出度く結婚出来たのも、私が、東大医学部をトップ合格したので、誰も結婚してくれる男性が現れ無いだろうとの、私の父の杞憂から、あんなに簡単に、同棲や婚姻届の提出を認めてくれたのよ。
私が、もし極普通の成績だけだったら、あの慎重な父が、そうそう、簡単にOKする筈も無いわよ。
女性には、女性の、悩みと言うか、自分だけでは、どうしようも無い運命があるんじゃないのかしら?」
「明菜ちゃんは、意外に楽天的だなあ……。この私だったら、もう少し、熟慮して考え直すものだがねえ」
「でも、今更、分かれる訳にも行かないでしょうに……。
一体、何を、言っているの。
さあさあ、馬鹿な事を考えて無いで、さっさと、新婚旅行先を考えましょうよ。
ただでさえ忙しいのだから、そんなに、悠長な旅行をしている暇も無いしね」
「まあ、そうだな、あの一連の事件も、既に、遠い過去の話になっているしなあ……。
でも、私は、未だに、青空精神科病病院の関連を、疑っているのだがね」
「はいはい、その話は、もうここまでよ。
さっさと、新婚旅行先を、決めましょうよ。
でも、もう時間もほとんど無いし、ヨーロッパでは、あのロシアがいよいよ戦術核を使うらしいし、近くの台湾だと、隣国の超大国の台湾侵攻がもう秒読みだと言われていて、もの凄く怖いわよねえ。
でも、アメリカやカナダ、オーストリアは、遠すぎて、旅行時間も取れ無いしねえ。
困ったものねえ……」
「じゃ、そこでさあ、これは、一つの提案なのだが、かって、米朝首脳会議の行われたシンガポール等は、どうだろう。
時間的にも、飛行機で片道、約7時間程度乗っているだけで、着くみたいだしね。
なにしろ、アメリカの大統領が泊まっていたようなあのようなホテルなら、警備も装備も応対も、全てが、五つ星クラスじゃないのかなあ」
「うん、それだったら、「マリーナ ベイ サンズ」なら行ってみたいわね。
有名な、マーライオンも近いらしいしね。徒歩で約25分で行けるみたいだし……」
「そうだね、現在では、東南アジアでの、一人当たりの給与も最も高く裕福な国みたいだし、他民族国家とは言っても、国の安全性は、もはや日本以上とも言われているし、じゃ、その方面で、話を大至急、勧めようよ。
これで、問題は無いよね」
「勿論よ!」
しかし、この新婚旅行こそが、この今までの一連の「人肉食殺人事件」での、驚愕の、そして、マサカとも思える物語りを迎えるとは、明菜ちゃん自身も、まだ気が付いていなかったのである。
そう、正に、地獄のような新婚旅行になろうとは、果たして、読者の皆さんも、気が付かれただろうか?そのような、想像が、できたのであろうか?
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