第2話 厨二病:急性期

厨二病:急性期


※※※※※


夏目

・14歳の少女

・茶髪を黒く染めている

・冷静。おとなしい


※※※※※


夏目は一人で読書するのが好きな中学生である。


クラスメイト

「夏目さんって、変わっているよね」


夏目の叔母が亡くなる。

夏目は叔母の死をきっかけとして満足に眠れなくなる。

夏目は不注意で足をくじいてしまう。

夏目は叔母の杖を学校に持ち歩くようになる。


※※※


昼間の学校にて。


夏目の同級生たちが手を叩いて高い声で笑い合っている。

夏目は同級生をチンパンジーようだと評価する。

夏目は同級生を本当にチンパンジーのようだと思うようになる。

夏目は同級生をチンパンジーだとみなすようになる。


夏目は叔母の杖を同級生に差し向ける。


夏目

「あいつはチンパンジーだ」


夏目は同級生がチンパンジーに見えるようになる。

夏目は気に食わない相手を次々と動物とみなすようになる。

夏目は気に食わない相手が次々と動物に見えるようになる。


※※※


放課後の帰り道にて。


夏目は「まるで叔母の杖が人を動物に変えているみたい」と思うようになる。

夏目は叔母の杖が人を動物に変えていると思うようになる。

夏目は叔母の杖を魔法の杖だと思うようになる。

夏目は魔法の杖を使う自分は魔女みたいだと思うようになる。

夏目は魔法の杖を使う自分は魔女だと思うようになる。


※※※


深夜3時のアパートの自室にて。


夏目は眠れない夜を考え事で過ごす。

夏目は魔法の杖を悪用した自分はどうなるのだろうと考える。

夏目は自分には罰が下るだろうと考える。

夏目は自分に罰を下す人物がいるとしたらそれは叔母しかいないと考える。

夏目は死後の世界で叔母が呪文を唱えているような気がしてくる。

夏目は杖を悪用した罰で自分も同級生のように動物になるだろうと考える。

夏目は魔女である自分が変身するならカエルがお似合いだと考える。


夏目はカエルになりたくないと騒ぐ。

壁から音が鳴り出す。周りから声が聞こえ始める。地震が起こる。

夏目は異常現象に動転する。


夏目は死後の世界で叔母が呪文を唱えたと確信した。


夏目に強烈な暗示が掛かる。

夏目は自分がカエルになったと思い込む。

夏目はカエルである自分はゲコゲコとしかしゃべれないと思い込む。

夏目は母親にゲコゲコと助けを求める。


母親は夏目を連れて病院に向かう。


※※※


明け方の病院にて。


夏目は厨二病と診断される。

厨二病を知らない夏目と夏目の母親は首を傾げる。

医者は厨二病を「脳で物事を認識する際に誤作動が起きる病気だ」と説明する。

ちょうど夏休みに入る時期だったので、夏目は入院することになる。


※※※


昼間の病棟にて。


入院初日に夏目はゲコゲコとしゃべらないことを決める。

夏目は看護師や入院仲間、その他全員に対して無言を貫くようになる。

夏目はゲコゲコとしゃべる自分を隠す日々を過ごす。

夏目は鏡に映った自分が人狼に見えるようになる。

夏目は狼として糾弾されないように気をつけながら日々を生きる。

夏目は退院する。


※※※


退院後のアパートの自室にて。


夏目が家に帰ると、母親に当時の状況を説明される。

夏目の騒動で近隣住民から壁ドンされたり怒鳴られたりしていた。

夏目は近隣住民の騒動をポルターガイスト現象だと認識していた。

夏目は母親に「貴方は白昼夢を見ていたのよ」と言われる。


夏目は魔法が解けていくのを感じる。

夏目は魔法が単なる暗示だと気づき始める。

夏目は現実を受け入れられない。


夏目

「おばあちゃんは今もいるんだぁーっ!」


夏目は目に涙を溜めて絶叫する。

夏目は叔母の杖を振りかざすが、いくら振りかざしても魔法は使えない。


夏目にとって叔母は大きな心の拠り所だった。

生前の叔母は夏目を励ますために子供だましのおまじないをすることが多かった。

夏目にとって叔母は偉大なる魔女だった。


夏目の母親は夏目を抱きしめる。


※※※


教室にて。


夏目

「わたしは自分が【人狼】に見えている。同じように、同級生からすればわたしは【クラスメイト】に見えているし、先生からは【生徒】に見えているし、社会人からは【学生】に見えているし、店員さんからは【お客様】に見えている。みんながみんな、物事が何かに見えている。わたしと一緒だ」


肩のチカラが抜けた夏目は、満足に眠れるようになる。

夏目は自分と周りが【一緒】に見えるようになる。

夏目は演劇部に所属するようになる。


クラスメイト

「夏目さんって、変わったよね」


夏目は厨二病が完治する。

終わり。

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