第25話 バイトはじめます
そんなわけで、レイナはバイトを始めた。
面接はすぐにクリアして翌日から働いている。
ちなみに身分証なんかは何もないのになぜ受かったのかはわからない。
面接に行った日にそんなことを思い出して慌てていたが、帰宅すれば笑顔で「受かりました」という彼女がいて、とりあえず深くは追求しなかった。
まあ、そんなこともあり少し店側に不安があるのでそのうち働いてる様子でも見に行こうと思っているのだが。
「お、憲司。レイナちゃん元気?」
「懲りないな、お前」
午前中の仕事が終わり、昼食の時間になれば嫌でも会うことになるこの男。
そいつは天丼を食っている俺の隣に当たり前のように座れば、いつものニヤニヤとした表情でそんな会話を振ってくる。
「いいじゃん。聞かせろよ」
「別に普通だよ」
「普通ってなに?普通にいちゃいちゃして普通に幸せってか?普通の幸せってなんだよ!そんなもんねーよ!」
「ドラゴンのせいで飯が不味くなるわ」
「そのわりには箸の勢い止まらねぇな」
こいつ、ドラゴンはレイナに会って以来ずっとこんな調子だった。
そうなることはわかりきっていたことなのだが、思っていた数倍面倒なことになっている。
俺に彼女ができたことによほど驚いたのだろう。
いや、まあ正確にはレイナは彼女でもなんでもないのだが。
けれどそれを知らないドラゴンは嬉しそうにレイナの話をする。
「可愛いよな」「どこで出会ったんだよ」「レイナちゃんって夜はどうなの?」「結構胸デカかったよな」「全体的にエロいよな」なんて、ほぼ下ネタにはなるのだが。
確かにドラゴンがそこまで食いつくのは無理もない。
まず、レイナが異常な美人だから。
そしてもうひとつ、俺は社会人になってから彼女を作っていない。
というか社会人になった頃にすぐに別れたあの半同棲した元カノと別れてから、かれこれ数年彼女を作っていない。
飲みに行って男女の話になれば「彼女ってめんどくせぇよな」が口癖で、色んな文句を吐き出せば挙げ句の果てに「クズ男」呼ばわりされるような男なのだ。
そんな俺を知っているので、これは当たり前の反応だったりする。
「レイナちゃんってなにしてる子なの?いい加減教えろよ」
「知らね」
「知らねーわけねぇだろ」
「はいはい」
「なに?大学生?OL?」
「…」
「あ、でも金髪だったしアパレル系?」
そんなドラゴンに呆れた表情を長らく向けてはいるのだが、そいつは全く心を折ることなく俺なんてお構いなしにベラベラと話し続けていた。
逆に尊敬するレベルなんですけど。まじでハートつえーなお前。
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