第26話 バイトはじめます



「…なにしてる子、ねえ」

「教える気になった?」



しかしまあ、黙っていてもいつかは多分バレることになるのだろう。

レイナのバイト先は家からすぐ近く。ということは駅近になるわけで。


そして前に駅前の商店街でばったり会ったとおり、ドラゴンも中野に住んでいるからだ。



「…メイド、かな?」



そんなことを考えれば、とりあえずそう言ってみる。


俺は間違ったことは言っていない。

レイナの妖精界の本職は「メイド」だ。


そして今のバイトも喫茶店の給仕になるわけで、メイドちゃあメイドなのだ。



「お前さ、このタイミングで夜の話してくんのかよ」

「…え?」

「なんだよコスプレとかするタイプ?楽しそうだなオイ」

「…いや、まあそれができたらまじで楽しいだろうな」

「くそが!リア充!くそ!うんこ!」

「…んー、リア充ちゃあリア充だなあ」



なかなか話が噛み合わないながらもそんな会話をして、俺たちは昼食を終えて仕事に戻った。

横では今だに「うんこうんこ」と小学生のように大声を出す恥ずかしい大人がいるが今はとりあえず知らない人のふりをしよう。


そして、そんな恥ずかしい大人に仕事終わりにも予想通りしつこく絡まれるハメになったので、結局レイナのバイト先の話をすることになるのだった。



–––––––––



「まじかよ。すげえ近いじゃん絶対行くわ。明日行くわ」

「絶対来なくて大丈夫」



仕事終わり、ドラゴンと毎度お馴染みの居酒屋へと向かい俺たちはいつも通りビールを飲んでいた。


そしてバイト先の話をするや否や、こうして血走った目で俺をガン見するドラゴンの姿が出来上がったのだった。


いつも思うのだが、ドラゴンがモテない理由は見た目とかじゃなくてこういうところだ。

全力でモテない行動に自ら突っ走って行くのはなぜなんだ。


というか「メイド」なんて言った俺も悪いのだが、ドラゴンはこの店をどうやら勘違いしているのだろう。

きっとあのポケットティッシュのような店だと思い込んでこんなにも目を血走らせているのだ。



「明日、休みだよな?」

「…おー、そうだな」

「行くよな?」

「…」

「お前が行かなくても行くけどな?」

「…おお、」



そんなわけで結局、俺はドラゴンの怖すぎる目力に負けて、不本意ながら明日一緒にレイナのバイト先へ行くことになったのだった。


わかったよドラゴン、行くからその目を早く落ち着かせてくれまじでこえーから。


冷めたフライドポテトを食べなら、そんな明日のことを考えて頭が痛くなっていく。


…が、しかし、今日は華金だ。

一気にビールを飲み干せば、そんなことはとりあえず置いておき一週間の労働を労ることにしようじゃないか。



「すいませーん生二つ下さーい」

「あ、あと揚げ出し豆腐とおまかせ串5本!」

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はじめまして、妖精です。 タマモ @tamamo3

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