第18話 占いなんて信じない
その後は靴と布団を買いに行って、目的のお買い物がやっと終了。
靴はヒールがよほど気に入ったのか今履いている靴と似たようなサンダルと動きやすいスニーカーを購入して、移動中に見つけた何にでも合いそうなショルダーバッグも一つ買っておいた。
いつの間にか俺の両手は沢山の紙袋で溢れていた。
全部安物だったとはいえ合計すればまぁまぁな金額になるわけで、今日一日で俺の財布はとても寂しくなるのだった。
「いっぱい買ったなー」
「なんか、すみません」
「全然いいよ、俺そんなに遊ばないから貯金あるし」
「ちゃんと返しますね?」
「え、身体で?それなら大歓迎」
「前から思ってたんですけど、憲司さんって、恥ずかしいこと平気で口に出しますよね」
「ははっ、よく言われる」
一通り買い物が終わり、店から出た帰り道。
そんな会話をしていれば、レイナは冷ややかな視線を俺に向けてきた。
「憲司さん、モテるようでモテなさそう」
そして、突然そんなことを言う。
「レイナすごいな、まじでそのとおり」
「失礼でしたね。すみません」
「べつにいいよ。なんならクソ男とも言われてる」
「え、クソ男なんですか」
「ははっ」
やはり妖精とはいえどうやら「モテ」の概念は同じようだ。
だとしたら、男女事情もそこまで変わらないのかもしれない。
「失礼」とは多分思っていないのだろうが一応謝ってくるところがレイナらしかった。
そして、彼女に自分が「クソ男」だと教えれば、再び視線は冷たくなるのだった。
「妖精界にもクソ男いる?」
「どの程度のことを言うのかわかりませんが、まぁ、いますよ」
「へぇ、おもしろ」
「おもしろくはないですけど」
「レイナはまじでモテるんだろうな」
「いや、憲司さんと同じですよ」
そんな会話をしていれば、クスクスとおかしそうにレイナは笑った。
「私もモテるようでモテません」
そう言って「私は見た目だけですから」と言葉を続ける。
どうやら自分の見た目を彼女はしっかりと理解しているらしい。
やっぱりこのババアモテてきてやがる、なんて思いながら「自分でそれ言うのか」と一応つっこんでおいてやった。
まぁ、そんなところもレイナらしいよな。
なんて思えば、短い間に随分と彼女を知ったような気がした。
「私は性格が堅苦しいので」
「あー確かに。俺は性格が適当すぎてすぐ振られる」
「確かに」
「あははっ、確かにって」
そんな会話をしながらも、コツコツとヒールを鳴らして彼女は慣れたように器用に歩く。
そして、なんとなく隣の彼女の手を取れば、その表情は一瞬で微妙なものに変わっていた。
「これでいーよ。お礼」
「そうですか」
「久々にデートできて楽しかったし」
「私もそれは楽しかったです」
「それはってなんだよ」
そんなことを言いつつもレイナは俺の手を払い除けたりはしなかった。
かと言って握り返してくることはなく、ただただ俺にされるがまま。
きっと真面目な彼女のことだから「お礼」という言葉がそうさせているのだろう。
それでもなんだか嬉しかった。
単純に、美少女と手を繋いで歩いていることも嬉しいわけで。
先程からレイナに向けられた通りすがる人たちの「いいなぁ」「あんな美人な彼女羨ましい」なんて視線を見ていれば尚更、この状況は気分が良いのだ。
そんなわけで、しっかりと彼女の手を握りしめて、ルンルンと気分良く歩いて行くのだった。
———しかし、俺の最高な気分はものの数分で終わることになる。
「…あれ?…憲司じゃん!!」
突然聞こえた俺を呼ぶ声。
かなり聞き慣れたそんな声に恐る恐る振り向けば、
「……終わった」
「…お知り合いですか?」
そこには今、絶対に会いたくはない見慣れた人物がいるのであった。
あぁ、これにて幸せなデート、終了のお知らせです。
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