第14話 占いなんて信じない
レイナと暮らす二日目の朝。
カーテンの隙間から射し込む陽射しに目を細めれば、キッチンで朝食を作っている音がした。
もぞもぞと布団から出てリビングに向かえば案の定「おはようございます」とキッチンからは彼女の声がして、ちょうど朝食の準備が終わるようだった。
「今日も良い天気だな。晴れてよかった」
「そうですね。昨日は洗えなかったのでベッドのシーツ洗いましょうか。布団も干しておきましょう」
「そうだな。あ、レイナは朝食準備してて。俺やるから」
「後で私やりますよ?」
「これくらいやるよ」
そう言って、俺は寝室に再び戻りシーツを剥ぎ取ると洗濯機の中へ入れた。
今度は布団を取り出してベランダへと向かう。
ああ、ほんといい天気だな。よかったこれはデート日和だ。
ちゅんちゅんと気持ち良さそうに鳴いている小鳥の声を耳にそんなことを思いながら、よいしょ、と布団をベランダに干せば、普段はしない鼻歌なんかを歌ったりしてリズムよく布団を叩いていった。
「うわ、今日も美味そう」
リビングに戻ればすでに朝食が置かれてあって、見れば今日は味噌汁に鯖と大根の味噌煮だった。
なんでも昨日、本屋さんで料理本を立ち見してきたらしい。
「日本人の好きな料理100選」なんて本だったとか。
いやいやレイナさん、勤勉すぎません?
あぁ、美味い。やっぱ朝は味噌汁だな。
ずずっと味噌汁を飲みながら、今日も彼女の見事な仕事ぶりに感心するのだった。
◇
「じゃぁ、11時には家出ようか」
「わかりました」
ご飯を食べ終えてソファーでごろごろしながらテレビを見ていたら、恒例の星座占いが始まっていた。
お、俺一位じゃん。
普段はぼうっと眺めている映像も、今日は何だかしっかりと目に入り見ていれば「今日の一位は牡牛座のあなた!」と、自分の星座が聞こえてくる。
そして、可愛らしいキャラクターの声で次に聞こえたのは「思わぬ勘違いをされて気になる異性と急展開!」なんてフレーズだった。
「ラッキーアイテムはハンカチ、ね」
ふうん、なんて適当に聞いていたのだが、ラッキーアイテムはしっかりと耳に入っていた。
人ってのはやはり単純なもので、占いなんて興味ないなんて思いつつも、こうして自分が一位だったりすると少しだけテンションが上がってしまうので笑えてくる。
ましてや気分がいい時なら尚更、素直に嬉しく思うものだったりするのだ。
でもそれは、心に余裕があるからであって。
普段は見ないような物事に目が入ったり、普段はしないようなことをしてみたり、これは完全にレイナのおかげで自分自身が浮ついているからなのである。
なんだか全てがレイナのおかげで上手くいっているような気がして、やっぱり彼女の神々しさは運気までも引き寄せているのでは?と思うほどだった。
「レイナー、クローゼットにハンカチあったっけ?」
「ありましたよ」
そんな浮かれた土曜日の朝。
俺は今から彼女とデートをする。
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