第8話 彼女はできる女子でした



「おはようございます」

「…やっぱ夢じゃねーのか」



朝、起きてリビングへ向かえばそこには昨日の女がいた。


ニコニコと笑いながらこちらを見て「朝食どうなさいますか?」と聞いてくる。



「なんでもいいよ。冷蔵庫のもの適当に使って」

「はい」



眠たい目を擦りながら俺は洗面所へ向かい、いつものように顔を洗って歯を磨く。

スッキリしてリビングに戻れば、トントントンと器用に何かを切る包丁の音が聞こえてきた。


昨日、俺はこのレイナという女に出会った。

歳は多分、女性らしい身体つきからして20代前半くらいの女の子。…いや、少し童顔な顔つきを見るところ10代後半なのだろうか。


美しい金髪の長い髪に真っ白な肌。すらりと伸びた長い手足。

モデルでもやってそうな風貌のその美少女は、自分のことを「妖精」と言う。


そして、そんな「自称妖精」と俺は同居することになったのだ。



「どうぞ」

「うわ、すげー美味そう」



いつの間にか、ソファに座る俺の目の前のテーブルの上には料理が運ばれていた。

メニューはサラダとスープとオムレツ。

朝食を普段摂らない俺からしたら、朝からボリュームがありすぎるその食事に一瞬「うわっ」と思ったが、漂ってくる美味しそうな匂いに自然とお腹は鳴っていた。



「うわ、うま!」

「よかったです」



一口それを口に運べばすぐにそんな言葉は飛び出した。

とろとろふわふわの完璧な半熟卵のオムレツは、洋食屋さんで食べるような美味しさで感動してしまうレベルだった。


妖精って料理するのかよ、調理器具の使い方なんで知ってんだよ、なんてことはもうこの際どうでも良い。



「妖精界にもオムレツってあるんだ」

「ありますよ」

「じゃあ、食べてるものって人間と変わらないんだ」

「はい。でも妖精のエネルギー源は甘い物と牛乳なのであまり食べませんけど」

「へー。あ、だから昨日牛乳飲みたかったんだ」



どうやら話を聞くところ、妖精はおやつと主食が逆らしい。

俺の隣に遠慮気味に座った彼女は牛乳を飲みながらそう言った。



「え、ていうか妖精界にも牛とか鳥とかいるの?」

「いますよ。当たり前じゃないですか」

「おもしれー」

「別におもしろくないです」



そんな会話をしながら俺は目の前の食べ物をいつの間にかペロリと平らげていた。

いつぶりだろうか、こんなしっかりとした朝食を食べたのは。

満腹になった身体をんーっと伸ばせば、すぐに後片付けを始める彼女が見えた。

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