第33話 封印の地エクレシオン

探査船が星雲「イーサリアル・ネクサス」を後にし、次の目的地「エクレシオン星系」に向けて進んでいた。エクレシオンは、銀河秩序評議会のデータベースにもほとんど情報がなく、謎に包まれた星系だった。唯一知られているのは、その中心にある惑星「エクレシオン・プライム」が、かつて銀河の古代文明によって「封印の地」として指定されていたことだ。


探査船が星系に近づくと、周囲に漂う不気味な静けさと、奇妙なエネルギーの波動が船内に伝わってきた。浅倉が計器を確認しながら口を開いた。


「宗介、まただ。このエネルギー、ネクサス星雲で感じたものと似ている。ここも何かが眠っているのか……?」


宗介も計器を見つめ、緊張感を募らせた。


「その可能性が高い。だが、リタリエーターが言っていた封印の鍵がここにある以上、アンビシャスの残党が動いているかもしれない。油断するな」


船がエクレシオン・プライムの軌道に乗ると、惑星表面に無数の古代遺跡が広がっているのが見えた。遺跡は砂嵐に埋もれている部分もあれば、今もなお発光している部分もあり、明らかに何らかの力が働いていることを示していた。


封印の鍵


宗介と浅倉は惑星表面に降下し、遺跡の中心部へと向かった。そこは巨大な石造りの門で覆われており、門には複雑な古代文字が刻まれていた。その文字は、リタリエーターが提供したデータによると「星々を守るための封印」と解読できた。


「これが鍵を封じている場所か……だけど、どうやって開ける?」


浅倉が呟いたその時、地面が突然振動し始めた。遠くの空に、無数の小型機械の群れが現れ、彼らに向かって猛スピードで接近してきた。


「アンビシャスだ!奴ら、封印を解くために来たのか!」


宗介は即座に戦闘態勢に入り、持ち込んだ機体で迎撃を開始した。アンビシャスの機械は数で圧倒しようと攻撃を仕掛けてきたが、宗介と浅倉の連携で次々と撃退されていった。


「浅倉、この攻撃、ただの陽動かもしれない。封印の鍵を狙っている連中が他にいるはずだ!」


宗介の指摘に、浅倉は周囲を警戒しながら答えた。


「確かに妙だ。全力で襲ってくるわけじゃない……どこかで本命が動いているのか!」


対峙


二人が戦闘を続ける中、遺跡の中心部で新たな動きがあった。アンビシャスの指揮を執る謎の人物が現れ、鍵の封印を解除しようと装置を操作していた。彼は銀河秩序評議会のデータにも存在しない新たな敵、「ヴォルカー」と名乗る男だった。


「やはり来たか、地球の守護者よ。我々アンビシャスの計画を阻止するつもりか?」


ヴォルカーは宗介に向かって冷笑を浮かべながら言った。宗介は機体から降り、ヴォルカーに向き直った。


「お前たちのような存在に銀河を破壊させるわけにはいかない。この封印を守るために、俺たちはここにいる!」


ヴォルカーは不敵な笑みを浮かべながら、封印の装置に手をかざした。


「愚か者め。この封印は銀河を変革するための鍵なのだ。我々が求めるのは破壊ではない。支配だ。だが、支配のためには古き力を解放する必要がある」


その言葉に、宗介は強い怒りを感じた。


「お前たちの支配など必要ない!銀河は自由と平和を守るためにあるんだ!」


宗介は即座にヴォルカーに向かって突進し、彼を封印の装置から引き離そうとした。しかし、ヴォルカーもまた独自の技術を駆使し、宗介に応戦した。二人の間で激しい戦闘が繰り広げられ、遺跡の内部は崩壊寸前の状態になった。


封印の守護者


戦いが激化する中、遺跡の中心部から突然、眩しい光が放たれた。その光の中から現れたのは、リタリエーターが話していた「封印の守護者」だった。それは巨大な石像のような姿をした存在で、封印の力を守るために眠りについていたという。


「この地を汚す者よ。ここから退け。封印の力に触れることは許されない」


守護者の声が遺跡全体に響き渡り、その威圧感にヴォルカーですら一瞬怯んだ。しかし、彼はすぐに再び冷笑を浮かべた。


「守護者ごときが我々を止められると思うな!」


ヴォルカーはアンビシャスの小型機械を守護者に向けて放ち、遺跡全体がさらに混乱に包まれた。しかし、宗介と浅倉も全力で守護者を援護しながら、ヴォルカーを追い詰めていった。


勝利の光


激しい戦闘の末、宗介と浅倉、そして守護者の連携によって、ヴォルカーはついに追い詰められた。封印の力を解放する装置は破壊され、ヴォルカーは退却を余儀なくされた。


「覚えておけ、地球の者よ。我々アンビシャスの野望は終わらない。必ず再び現れる!」


ヴォルカーがその言葉を残して消えた後、遺跡には再び静寂が戻った。守護者は宗介たちに向かって静かに語りかけた。


「よくぞ封印を守ってくれた。我々は再び眠りにつく。だが、この封印を狙う者が現れれば、再び力を貸そう」


守護者が光の中に消えると、遺跡は元の静けさを取り戻した。宗介と浅倉は遺跡を後にしながら、次なる戦いに備える決意を新たにした。


「浅倉、ヴォルカーの言葉が気になる。奴らが他の鍵を狙っているなら、早急に対応しなければならない」


浅倉も深く頷き、答えた。


「そうだな。これからも俺たちが銀河を守るために戦い続けるしかない」


探査船がエクレシオンを離れ、次の任務に向けて旅立つ中、宗介と浅倉の心には、銀河を守るための強い決意が輝いていた。


彼らの旅は続く。銀河の平和を守るため、新たな戦いが始まる――。

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