第32話 禁断の星雲
銀河の中心付近にある未踏の星雲「イーサリアル・ネクサス」に向けて、宗介と浅倉を乗せた探査船が進んでいた。その星雲は古代から「迷いの霧」と呼ばれ、訪れた者が誰一人帰還した記録のない禁断の地だった。評議会の指令を受けた彼らは、星々の声の謎を解き明かすために、この危険な任務を引き受けていた。
星雲への接近
探査船が星雲の外縁に到達すると、船の計器が不安定に揺れ始め、霧のようなエネルギーの波が船体を包み込んだ。浅倉が緊張した声で報告する。
「宗介、この霧、ただのガスじゃない。何か意図的に発生させられている気がする」
宗介もその不気味な光景に目を細め、周囲の観測データを確認した。
「確かに、この霧は自然現象じゃない。何かがこの星雲を守ろうとしているのかもしれない」
船が霧の中に突入すると、外界の視界は完全に遮断され、計器もほとんど機能を失った。船内は重い静寂に包まれ、全員が次に何が起こるか分からないという不安を抱えていた。
突然、霧の中に無数の光の点が現れ、それらがまるで生きているかのように動き始めた。光の点は探査船に近づくと、船体を包み込むように漂い、不思議な模様を描き始めた。
「これは……何かのメッセージか?」
宗介が目を凝らして模様を観察していると、船内の通信システムが自動的に作動し、再びあの冷たい声が響いた。
「地球の者たちよ、星々の声を聞け。我々はこの銀河の守護者。だが、過去に犯された過ちを正すために現れた」
その声には威厳がありながらも、どこか哀しげな響きが感じられた。浅倉が困惑した表情で問いかける。
「星々の守護者だと?お前たちは何者なんだ?何を企んでいる!」
通信はしばらく途絶えたが、その直後、星雲の奥から巨大な影が現れた。それは古代の巨大遺跡のような構造物で、無数のエネルギーリングがゆっくりと回転していた。
遺跡との接触
探査船が遺跡に近づくと、船内に激しい振動が走り、エネルギーリングが眩しい光を放ちながら動き始めた。その光が遺跡全体を覆うと、探査船の動きが完全に封じられた。
「捕まったか……どうする、宗介!」
浅倉が焦りの声を上げるが、宗介は冷静に対応を指示した。
「まだ手はある。この遺跡自体が何らかの意志を持っているなら、対話の余地があるはずだ」
宗介は通信システムを使い、遺跡に向けて問いかけた。
「ここにいるのは地球防衛軍の宗介だ。我々は銀河の平和を守るためにここに来た。この遺跡の目的と、星々の声の正体を教えてほしい!」
その言葉に応えるように、遺跡の中心から柔らかな光が放たれた。そして、船内に新たな声が響いた。それはこれまでの冷たい声とは異なり、穏やかで優しい声だった。
「あなた方が銀河の守護者たちか。我々はこの銀河の歴史を見守り続けた存在、リタリエーター。ここには、かつての銀河の支配者たちが残した『封印された力』が眠っている」
その言葉に、宗介は驚きつつも尋ねた。
「封印された力?それがこの星雲と関係しているのか?」
リタリエーターの声はさらに続けた。
「そうだ。この力は銀河全体を破壊し得るほどのものだ。しかし、それを解放する鍵が最近になって揃えられつつある。我々はその解放を防ぐため、警告を発しているのだ」
解放の危機
宗介と浅倉は、アンビシャスがその鍵を揃えようとしているのではないかと直感した。リタリエーターに詳細を尋ねると、鍵は銀河の各地に散らばっており、それぞれが銀河の特定の星系に封印されているという。
「もしその鍵が揃えられたら、この遺跡はその力を解放してしまう。我々だけでは防ぎきれない。銀河全体の協力が必要だ」
その言葉に宗介は力強く答えた。
「分かった。銀河秩序評議会と連携し、この鍵を守るために全力を尽くす。力の解放を阻止してみせる!」
リタリエーターは宗介の決意を感じ取り、星雲の奥にある封印の一つの座標を提供した。次なる目的地は、遥か彼方の星系「エクレシオン」。そこには、最も重要な鍵の一つが眠っているという。
新たな旅立ち
探査船はリタリエーターから提供された情報を基に、星雲を離れる準備を始めた。浅倉が真剣な表情で宗介に話しかけた。
「宗介、今回の任務は今まで以上に厳しいものになるかもしれない。だが、俺たちには銀河全体の仲間がいる。きっとやれるさ」
宗介も深く頷き、彼の言葉に応えた。
「そうだ。俺たちが銀河の平和を守るために戦う限り、この銀河に希望は残る。行こう、浅倉。次の戦いに備えて」
探査船は再びエンジンを点火し、星雲を後にして新たな目的地へと向かった。銀河全体の命運をかけた戦いが、静かに幕を開けようとしていた。
物語はさらに深まる。星々の声が告げる未来は、希望か、それとも破滅か――銀河を守る者たちの旅は続く。
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