第31話 星々の声

アンビシャスとの戦いを終え、銀河全体が平和を取り戻したかに見えた。しかし、宗介たちは今回の戦いで痛感した。未知の脅威は、銀河のどこに潜んでいるか分からず、平和を守るための取り組みを止めるわけにはいかないと。


地球防衛軍と銀河秩序評議会は連携を強化し、銀河全域にわたる監視ネットワークの構築を進めていた。その一環として、新たな技術を使った「星の声」というシステムが導入された。このシステムは、各星系のエネルギー変動を感知し、異常があれば即座に警報を発する仕組みだった。


予兆


ある日、基地に配属された最新鋭の観測機器が、銀河の外縁部でかすかなエネルギー波を検出した。波形は安定せず、断続的に変動しているが、それが人工的なものか自然現象なのかは判別がつかなかった。


浅倉が計器を見つめながら眉をひそめた。


「宗介、またかすかなエネルギー反応が出てる。最近こういう小さな異常が増えてきてる気がするんだよな」


宗介もデータを確認し、違和感を覚えた。


「確かに気になる。単独の現象ならともかく、こうして短期間に複数の場所で起きているのは何かの前兆かもしれない」


銀河秩序評議会もこのエネルギー波を重要視し、直ちに調査チームを編成。宗介と浅倉もその調査に参加することとなった。地球防衛軍の最新の探査船が出動し、波形が検出された外縁部へ向けて飛び立った。


消えた星系


調査チームがエネルギー波の発生源に到着したとき、彼らが目にしたのは驚愕の光景だった。その星系は、まるで存在そのものが削り取られたかのように、完全に消失していたのだ。


「信じられない……星系全体が消えた?」


浅倉が呆然とつぶやき、船内には緊張が走った。星系が物理的に消滅するという現象は、これまでの銀河の歴史でも記録されたことがない。


「これは自然現象じゃない。何者かが意図的に行ったものだ」


宗介は断言し、周囲を詳細にスキャンするよう指示した。すると、かすかに残されたエネルギーの痕跡が検出され、それがアンビシャスの技術と類似していることが判明した。


「アンビシャスの技術だと?でも奴らはもう滅びたはずだ!」


浅倉は驚きの声を上げたが、宗介は冷静に分析を続けた。


「確かにアンビシャスは滅びた。だが、奴らの技術が他の勢力に利用されている可能性はある。これは銀河全体に警告すべき事態だ」


星の声からの応答


調査チームがデータをまとめ、基地に戻る途中、彼らの通信システムに突如として未知の信号が割り込んできた。その信号は、かすれた音声と共に奇妙なメッセージを伝えてきた。


「銀河の守護者たちよ……時は来た。我々は星々の声……銀河の未来を救うため、過去の過ちを正す存在だ」


その声には威厳と共に、何か得体の知れない力が感じられた。だが、宗介はその言葉の意図を掴めず、通信に応答した。


「星々の声だと?お前たちは誰だ?何が目的なんだ?」


しかし、返答はなく、通信は途絶えた。船内に静寂が戻り、全員が言葉を失った。浅倉が宗介に向かって問いかける。


「星々の声……さっきの声、何か意味がありそうだが、俺たちに敵意があるのか?」


宗介は沈黙を保ちながら考え込んだ。そして、彼は一つの仮説にたどり着いた。


「もしかすると、アンビシャスの技術を使っている勢力が、自らを『星々の声』と名乗っているのかもしれない。あるいは、本当に銀河全体に対して何らかのメッセージを伝えようとしているのか……」


次なる任務


基地に帰還した宗介と浅倉は、調査結果を評議会に報告し、銀河全体にさらなる監視と警戒を呼びかけた。評議会も事態の重大さを認識し、全星系に「星の声」システムの増強を指示した。


その後、宗介たちの元に評議会から新たな命令が届いた。未知の信号が再び検出され、その発信源が判明したという。次なる目的地は、銀河の中心付近に位置する未踏の星雲「イーサリアル・ネクサス」。そこは長らく銀河の歴史の中で禁忌とされてきた領域だった。


「イーサリアル・ネクサスか……あそこに何があるのか分からないが、行くしかない」


宗介と浅倉は再び出撃の準備を整え、未知の領域へと向かう決意を固めた。その背後には、銀河中の仲間たちの期待と信頼があった。


「浅倉、どんな脅威が待ち受けていても、俺たちは必ず真実を突き止める。銀河の未来のためにな」


浅倉も力強く頷き、言葉を返した。


「そうだ、宗介。俺たちがいる限り、銀河は闇に飲まれることはない。行こう、次の冒険へ!」


探査船は再び銀河の広大な空間へと飛び立ち、星々の声が導く未来の真実を探る旅が始まった。


銀河の守護者たちは、再び未知の世界へと足を踏み入れる――新たな危機が彼らを待ち受けていることを知らずに。

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