第12話 新たな戦いの幕開け
改良版の抑制フィールド装置が取り付けられたスコティッシュフォールド型ロボットが整備完了し、出撃準備を進める宗介は、静かな緊張感を胸に抱いていた。次に現れる怪獣は、これまでの敵とはまるで異なる。進化し、知能を持つ怪獣と対峙することになる。それは宗介にとって未知の脅威であり、戦い方もこれまで以上に難しくなるのは間違いなかった。
「これが、俺にできる最大限の力……」
宗介はコックピットに乗り込み、深く息を吸い込んだ。装置の操作は複雑で、失敗すれば自身のロボットがダメージを受けるリスクもあった。それでも、自分が前に出て戦わなければ、地球を守ることはできない。
通信機から浅倉の声が聞こえた。
「お前が先陣を切るんだ、宗介。抑制フィールドが成功すれば、俺たちが一気に叩く。それで仕留めるんだ」
宗介は浅倉の言葉に頷いた。仲間たちが支えてくれることが、彼にとって最大の支えだった。自分ひとりではなく、皆が一つの目的に向かって戦っている。その思いが宗介を強くした。
「了解。必ずやってみせる」
出撃命令が下り、宗介たちの部隊は次々と地上を駆け抜け、空へと飛び立った。地球防衛軍の指揮官は、今回の作戦がこれまでの戦いと同じではないと強調していた。敵の力は進化し続けている。つまり、宗介たちもまた、進化しなければならないのだ。
都市の上空に到達した時、遠くに怪獣の姿が見えた。その体はこれまでの怪獣よりもさらに巨大で、鋭い爪と、硬い外殻に覆われている。その姿はどこか生物的でありながら、機械のような冷たさを感じさせるものだった。そして、まるで意志を持っているかのように、じっと宗介たちの動きを見つめていた。
「……あれが、今回の敵か」
宗介は不安を感じながらも、すぐに冷静さを取り戻した。機体のエネルギーを最大限に調整し、装置の準備を始める。怪獣が動き出す前に、抑制フィールドを展開しなければならない。
「全機、抑制フィールド展開準備!宗介、先に仕掛けてくれ!」
指揮官の指示が飛び、宗介は自らの手で操作パネルに手を伸ばした。装置が起動し、静かにエネルギーが集まる。コックピット内にわずかな振動が伝わり、装置が稼働していることを実感させた。
「抑制フィールド、展開……!」
宗介が操作を確定すると、機体から見えないフィールドが広がり、怪獣に向けて放たれた。空間がわずかに揺れ、怪獣の周囲に歪みが生じたように見えた。まるで透明な膜が怪獣を包み込み、動きを鈍らせるような感覚だった。
「……効いてる!」
怪獣の動きが明らかに鈍り始めた。これまでのように力任せに突進するのではなく、抑制フィールドの中で動きを制限され、じっと立ち尽くしている。宗介の作戦が成功したのだ。
「全機、攻撃開始!」
浅倉の号令と共に、部隊が一斉に怪獣へ攻撃を仕掛けた。エネルギーキャノン、ミサイル、重火器の弾幕が怪獣に降り注ぎ、強力な爆発がその体を包み込む。怪獣の硬い外殻も、連続的な攻撃により徐々に砕け始めた。
「よし、もう少しだ……!」
宗介は仲間たちの攻撃が効いているのを感じ、抑制フィールドの出力をさらに上げようとした。しかし、その瞬間、怪獣の目が輝き、鋭い咆哮が空気を切り裂いた。
「何だ……?」
怪獣の体が突然、光り始めた。エネルギーの脈動が強まり、抑制フィールドの力を振り払おうとするかのように、その巨体が震えた。そして、次の瞬間、怪獣は全身から強烈な光を放ち、抑制フィールドを無理やり破壊したのだ。
「嘘だろ……!」
宗介は驚愕し、コックピット内で警告音が響き渡るのを聞いた。フィールドの出力が一気に低下し、装置が過負荷に耐えきれずに停止してしまった。抑制フィールドの効果が消え、怪獣は自由を取り戻したのだ。
「くそ……!」
怪獣は再び動き出し、鋭い爪を振りかざして周囲の建物を薙ぎ倒した。攻撃の規模もこれまで以上に激しく、まるで知性を持っているかのように狙いを定め、部隊のロボットを次々と攻撃していく。
「宗介、大丈夫か!?戻れ、今は撤退するんだ!」
浅倉の声が響いたが、宗介はすぐに応答できなかった。目の前で抑制フィールドが破壊された事実が信じられず、次にどう動くべきかを考える時間すら奪われていた。
「……いや、まだやれる」
宗介は自分に言い聞かせるように呟いた。失敗したが、まだ戦いは終わっていない。自分がここで引き下がれば、怪獣が街を完全に破壊してしまうかもしれない。そんな光景を思い浮かべ、彼は再び操縦桿を握り直した。
「まだ……終わらせない!」
宗介は改良版の装置を再起動させるため、緊急マニュアルモードに切り替えた。通常の手順ではなく、手動で出力を調整し、抑制フィールドを再び展開しようと試みる。リスクが伴うが、このままでは何もできずに終わってしまう。
「頼む……もう一度、動いてくれ……!」
宗介の必死の操作に応えるように、抑制フィールド装置が再び起動を始めた。警告音が鳴り響く中で、フィールドがじわじわと広がり、怪獣に向けて再び放たれる。
怪獣は光を放ち、再びフィールドを打ち破ろうとしたが、今度は宗介が出力を細かく調整し、そのエネルギーの波を相殺する形でフィールドを維持した。まるで押し合うような力のぶつかり合いが続き、フィールドが怪獣を再び包み込んだ。
「今だ!もう一度、総攻撃を仕掛けろ!」
宗介の叫びに応え、部隊が再び攻撃を集中させた。エネルギーキャノンが怪獣の外殻を次々と貫き、内部にまでダメージを与えていく。今度は怪獣の回復力も追いつかず、その巨体が徐々に崩れ始めた。
「……効いている!」
浅倉が力強く叫び、怪獣の体がついに完全に崩れ落ちる。地面に倒れ込んだ怪獣は動かなくなり、完全に無力化されたのだ。宗介は深く息を吐き、ようやく力を抜いた。
「……やった、やり遂げた」
宗介の心には安堵と、次なる戦いへの新たな決意が宿っていた。だが、同時に、これほどの怪獣を操る「博士」の存在がさらに大きな脅威として立ちはだかることを実感していた。
次回予告:
抑制フィールド装置の成功で一時的な勝利を収めた宗介たち。しかし、「博士」の新たな計画が密かに進行していた。次なる敵はどこから来るのか?そして、宗介はその陰謀を打ち破ることができるのか――。
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