第9話 進化する脅威

怪獣との戦闘を終え、基地に帰還した宗介たち。整備班はスコティッシュフォールド型ロボットの損傷具合を確認しながら修理に取りかかっていた。宗介はその様子を見つめながら、自らの体を預けるように休息室の椅子に座り込んだ。


「手動操作で電磁波に対処するなんて……まさか実戦でやることになるとは」


一息つく間もなく、次なる戦いが迫っているのを宗介は感じていた。怪獣はさらに進化し、彼らにとって新たな脅威となって現れる可能性がある。先の戦いで得た自信はあるものの、その奥には恐怖と不安も潜んでいた。


そんな宗介の前に、浅倉がやってきた。彼もまた疲れを隠せない様子だが、その顔には変わらない決意が宿っている。


「宗介、お前の手動操作のおかげで助かったよ。正直、あの怪獣にはどうにもならないかと思ったが、お前が突破口を見つけてくれた」


浅倉は感謝の言葉を述べ、宗介の肩を軽く叩いた。宗介は浅倉の言葉にわずかに頷きながらも、まだ心の中には疑問が渦巻いていた。


「次の怪獣がどれだけ強力か、予測がつかない。それに、僕たちのロボットもまだ万全じゃない」


その時、二人の会話を遮るように、基地内のスクリーンに映像が映し出された。指揮官が現れ、彼らに重要な情報を伝えるために画面越しに話し始めた。


「諸君、次の任務についての報告だ。新たな怪獣が出現したとの報告があったが、今回の敵はこれまでとは明らかに異なる」


指揮官はそう言い、怪獣の映像を映し出した。その姿は巨大で、何層にも重なった硬い外殻に覆われている。さらにその体には、何かしらのエネルギーが脈打っているような光が点滅していた。


「最新のデータによると、この怪獣は自己回復能力を持っている可能性が高い。どれだけダメージを与えても、短時間で自己再生することで、ほぼ無傷の状態に戻ることが確認された」


宗介はスクリーンに映る怪獣の映像を見つめ、ぞっとした。この回復能力が事実ならば、戦闘で致命的なダメージを与えても、すぐに無効化されてしまう可能性がある。これまでの戦い以上に厳しい状況だ。


「どうやって……こんな怪獣に勝てるんだ?」


宗介が呟くと、指揮官は冷静に続けた。


「防衛軍の分析班が調査した結果、怪獣の回復能力を抑えるための特殊な兵器を開発した。その兵器は『抑制フィールド発生装置』と呼ばれるものだ。この装置を使えば、怪獣の回復力を一時的に低下させることができるはずだ」


指揮官はスクリーンにその装置の映像を映し出した。それは小型で、ロボットの肩部に装着する形で使用できるように設計されている。装置が放つフィールドで、怪獣の自己回復を阻害し、その隙に攻撃を仕掛けるのが作戦の要だ。


「抑制フィールド発生装置を装備したロボットは、宗介、お前の機体だ。お前が前線でフィールドを展開し、他の機体がその間に攻撃を集中する形で怪獣を倒す」


指揮官の指示に、宗介は緊張とともに深く息を吸い込んだ。自分が前線に立ち、怪獣の回復を封じるために装置を使う。大きな責任を感じるが、同時にそれが地球の希望でもあった。


「……分かりました。僕がやります」


宗介はそう言い、覚悟を決めた。浅倉も横で彼の決意を感じ取り、力強く頷いた。


「俺たちが援護するから、安心しろ。お前が抑制フィールドを展開すれば、俺たちが一気に叩く。怪獣にチャンスを与えるな!」


出撃準備が整い、宗介は再びスコティッシュフォールド型ロボットのコックピットに乗り込んだ。肩部に新たに装着された抑制フィールド発生装置が、重みを感じさせる。だが、その重みが責任と使命を思い出させ、彼の心を引き締めた。


「全機、出撃準備完了!」


指揮官の号令が響き、宗介と浅倉を含む部隊が基地から飛び立った。新たな怪獣との戦いが、再び始まろうとしていた。


市街地に到着すると、すでに怪獣が破壊活動を始めているのが見えた。回復能力を持つ怪獣は、どんな攻撃を受けても瞬く間に体を再生させ、まるで不死身のようだった。


「抑制フィールド、展開開始!」


宗介は肩部の装置を起動させ、怪獣の周囲にフィールドを広げた。見えない力場が怪獣を包み込み、その動きがわずかに鈍くなる。回復の光が抑えられ、怪獣が不安げに体を揺らす様子が見えた。


「今だ!全機、攻撃開始!」


浅倉の声が響き、部隊が一斉に怪獣に向かって攻撃を仕掛けた。エネルギーキャノンやミサイルが次々と命中し、怪獣の外殻が崩れ落ちていく。フィールドの影響で回復が妨げられているため、怪獣はダメージを蓄積していった。


「効いてる……!」


宗介は手応えを感じながら攻撃を続けた。しかし、怪獣は徐々にフィールドの影響から逃れようとし、暴れ始める。触手を振り回し、地面を裂くように攻撃を仕掛けてくる。


「フィールドが不安定だ!宗介、持ちこたえろ!」


浅倉の声に応え、宗介は必死に装置を操作し、フィールドを維持し続けた。しかし、怪獣の暴れる力が装置の耐久を超えようとしていた。


「もう少し……もう少しだけ持ってくれ……!」


宗介は全力で抑制フィールドを維持し、怪獣が完全に回復する前に決着をつけるための一撃を準備した。


「これで……終わりだ!」


宗介はエネルギーを最大限に集中し、怪獣の背中に向かって最後の一撃を放った。光の束が怪獣に命中し、その体が崩れ落ちる。回復も止まり、怪獣はついに完全に動きを止めた。


「……やった……!」


宗介は安堵の息をつき、怪獣が倒れ込む音を聞きながら、ようやく力を抜いた。彼の中に、戦いの終わりを感じると同時に、新たな決意も芽生えていた。怪獣の脅威は続くが、自分にはそれに立ち向かう力がある――。


次回予告:


新たな勝利を手にした宗介たち。しかし、怪獣を操る謎の存在が次の作戦を開始しようとしていた。新たな敵との戦いに向け、宗介はさらなる試練に挑む。

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