第4話 再起への訓練
宗介は軍の訓練基地へと戻っていた。かつての自分が夢見た場所、だが同時に、過去の挫折が彼を苦しめた場所でもある。薄暗い訓練施設の中、スコティッシュフォールド型ロボットが無数に並んでいる光景が広がっていた。鋼鉄で覆われた巨大な機械は、どこか不気味な存在感を放っている。
「まさか、またここに戻ってくるとはな……」
宗介は呟きながら、施設の奥に進んでいく。心には過去の記憶が浮かんでいた。彼は一度はこの道を捨てたはずだった。しかし、今は戦うことを選んだ。地球を守るため、そして自分自身のために。
「穴井宗介。今日からお前は、このスコティッシュフォールド型ロボットのパイロット候補として訓練を受けることになる」
宗介の前に現れたのは、訓練士官の武田だった。鋭い眼光を持つ彼は、数々のエリートパイロットを育て上げてきたことで有名な人物だ。その冷徹な眼差しは宗介に厳しいものを感じさせたが、同時にどこか期待も抱かせた。
「お前が一度パイロット養成学校を中退したことは知っている。だが、今はそんなことは関係ない。ここでの訓練に耐えられるかどうか、それだけが重要だ」
武田の言葉に宗介は力強く頷いた。過去の失敗は関係ない。今、自分がここで成長できるかどうかがすべてだ。
「まずはシミュレーター訓練だ。実際に機体に乗る前に、お前がどれだけスコティッシュフォールド型ロボットを操縦できるか試してみる」
武田の指示で、宗介はシミュレーターのコックピットに乗り込む。薄暗いシミュレーション室の中で、彼の周りをモニターが取り囲む。機体の内部を模した複雑なコントロールシステムが目の前に広がり、宗介はその一つ一つに手を伸ばした。
「よし、始めるぞ。スコティッシュフォールド型ロボットは特殊な操作が必要だ。通常の戦闘機とは違い、柔軟な動きと俊敏さを最大限に活かせるように設計されている。最初は戸惑うかもしれんが、慣れればお前にも扱えるはずだ」
シミュレーターが起動し、周囲のモニターには仮想の戦場が映し出された。宗介はその光景に集中し、手元のコントロールを操作し始める。ロボットがゆっくりと動き出し、仮想の怪獣に向かって前進していく。
「思ったよりも……繊細だな」
宗介は予想以上にスコティッシュフォールド型ロボットの操作が難しいことに気づいた。巨大な機体にもかかわらず、その動きは猫のように柔軟で、わずかな操作ミスでもバランスが崩れてしまう。
シミュレーターの中で、仮想の怪獣が突進してくる。宗介は反射的に操縦桿を引き、回避しようとするが、ロボットの動きが鈍く、怪獣の一撃をまともに受けてしまった。
「くっ……!」
画面が真っ赤に染まり、警告音が鳴り響く。宗介は歯を食いしばりながらもう一度操作を試みるが、うまくいかない。次々と怪獣の攻撃を受け、ロボットが倒れ込む。
「シミュレーション、終了」
武田の冷静な声が響き、宗介はシミュレーターから退出した。汗がにじむ額を拭いながら、宗介は自分の未熟さに苛立ちを覚えていた。
「やはり、難しいな……」
武田は無表情で宗介を見つめていたが、彼の目には僅かに期待の色が見えていた。
「初めてにしては悪くない。だが、お前はまだ自分の能力を全く引き出せていない。スコティッシュフォールド型ロボットはただの兵器じゃない。その繊細な操縦には、パイロット自身の感覚が大きく影響する。お前は自分自身を信じ切れていない。そこを克服しなければ、怪獣に勝つことはできない」
武田の言葉に、宗介は沈黙した。自分を信じ切れていない。確かに、それは否定できなかった。過去の失敗が彼の心に影を落としていることを自覚していた。だが、それを乗り越えなければならない。
「俺にはまだ……足りないものがある。でも、それを乗り越えなければ……」
宗介は自分に言い聞かせるように呟いた。そして、その決意を固めるように、次の訓練を求める目で武田を見つめた。
「もう一度、やらせてくれ。次はもっと上手くできる」
武田は静かに頷いた。
「いいだろう。ただし、今度は少し難易度を上げる。お前がそのプレッシャーに耐えられるかどうか、見てやる」
シミュレーターが再び起動し、宗介は再度コックピットに乗り込む。目の前のモニターに戦場が映し出されると同時に、心の中に再び戦う意志が芽生え始めていた。
だが、その時、基地全体に警報が鳴り響いた。
「緊急事態発生!怪獣が市街地に出現!スコティッシュフォールド部隊は直ちに出動せよ!」
宗介はシミュレーターから飛び出し、警報の音に耳を傾けた。現実の怪獣が再び地球を襲っていたのだ。
「これ以上訓練している時間はないな」
武田が冷静に言う。宗介はすぐに立ち上がった。
「俺も出る。スコティッシュフォールド型ロボットを実戦で試す時が来たんだ」
宗介は自分の中で決意が固まったのを感じた。これまでの訓練はすべてこの時のためだった。実戦で自分の力を証明し、過去を乗り越えるために――。
次回、宗介はついに初めて実戦に挑む。果たして彼は怪獣に立ち向かい、勝利を掴むことができるのか。
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