第3話 決意の瞬間

瓦礫に埋もれた街の片隅に立ち尽くす穴井宗介。目の前には、スコティッシュフォールド型ロボットの活躍によって何とか怪獣が撤退していく様子が見える。しかし、その勝利が一時的なものであることは明白だった。怪獣たちは再び戻ってくる。彼らの破壊行動は終わりを知らず、今や地球全土が侵略の脅威に晒されている。


宗介はその場に立ちすくみながら、心の中で葛藤していた。


「俺に……何ができるんだ?」


かつて彼は地球防衛軍のパイロット養成学校に通っていた。家族がまだ生きていた頃、彼もまた人々を守るために戦うことを夢見ていた。しかし、家族を失った日、彼はその夢を諦めた。戦いの中で、何も守ることができなかった自分への失望と無力感。宗介はそれ以来、パイロットの道からも、そして戦いからも距離を置いていた。


今、目の前でスコティッシュフォールド型ロボットが怪獣に立ち向かう姿を見て、宗介は再びあの日の自分に戻りたいという衝動に駆られていた。しかし、彼は自分の弱さを知っていた。かつての挫折が彼の足を止めていた。


「まだ……俺には早い……」


宗介はそう言い聞かせながら、再び歩き出そうとした。しかし、その時だった。


「宗介……!」


背後から聞こえた声に振り返ると、そこには防衛軍の制服を着た男が立っていた。かつての同期生、浅倉だった。彼もまた、宗介と同じパイロット養成学校を卒業したが、その後も防衛軍に残り、今はスコティッシュフォールド型ロボットのパイロットとして戦っている。


「お前、まだこんなところにいたのか?」


浅倉は苦笑いしながら宗介に近づいてきた。彼の顔には疲れの色が濃く浮かんでいたが、その目には戦い続ける覚悟が見えた。


「浅倉……お前、まだ現役で戦っているのか」


宗介は驚きながらも、彼の存在がどこか自分の心に刺激を与えるのを感じていた。


「もちろんだ。今こそ、俺たちが立ち上がる時だろう?怪獣に地球を渡すわけにはいかないんだからな」


浅倉の言葉には、強い意志が込められていた。それは宗介がかつて抱いていたものと同じものだった。守りたいものがあった頃の自分。だが、今は――


「俺には……もう戦う理由がない」


宗介は浅倉に背を向けて歩き出そうとした。しかし、その瞬間、浅倉は彼の肩を強く掴んだ。


「そんなこと、言ってる場合じゃないだろう?見ろよ、この状況を。お前も知っているだろう。怪獣は止まらないんだ。俺たちが止めなければ、誰が止めるんだ?」


宗介は言葉を失った。浅倉の言葉が胸に突き刺さる。確かに彼の言う通りだ。誰かが戦わなければ、怪獣の侵攻は止まらない。しかし、自分にその資格があるのだろうか。


「……俺には無理だ。昔とは違う」


宗介の声は弱々しかった。それを聞いた浅倉は、静かに宗介の肩を叩いた。


「そんなことはない。俺たちはまだやれる。お前だって、あの時のことを忘れたわけじゃないだろう?」


浅倉の言葉に、宗介は再び過去の記憶が蘇るのを感じた。家族を失い、自分が無力だったあの瞬間。しかし、同時にその無力さを克服したいという思いも湧き上がってきた。


「俺がここで諦めたら、また同じことを繰り返すのか……?」


宗介は拳を握りしめた。過去の自分を超えたいという気持ちと、今の自分の弱さとの狭間で揺れ動く。


「宗介、俺たちにはお前が必要なんだ。怪獣を倒すためには、お前の力が欠かせない。戻ってきてくれ」


浅倉の真剣な眼差しに、宗介はついに決断した。彼は振り返り、浅倉に向かって頷いた。


「わかった……俺も戻る。スコティッシュフォールド型ロボットのパイロットになる」


浅倉はその言葉を聞くと、満足そうに微笑んだ。


「そうこなくちゃな」


宗介は新たな決意を胸に、再び戦いの舞台に戻ることを決めた。過去の傷と向き合い、今度こそ自分が守りたいものを守るために。怪獣との戦いはまだ始まったばかりだ。


次回、宗介はついにスコティッシュフォールド型ロボットの訓練に臨む。果たして彼は再びパイロットとしての力を取り戻すことができるのか――。


次回予告:


宗介はスコティッシュフォールド型ロボットのパイロットとしての訓練を開始。しかし、訓練中に新たな怪獣が出現し、戦線は再び危機に陥る。宗介の運命は――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る