第1話 崩壊の始まり
空を引き裂くような轟音が、街の静寂を突き破った。何かが空から落ちてくる。誰もがその音の方向を見上げた瞬間、巨大な影が太陽を覆い隠し、世界が一瞬にして暗転した。
東京都心。ビルの林立する高層ビル街が、轟音と共に次々と崩れ落ちた。人々の悲鳴が響き渡り、地上には混乱と絶望が広がる。街の一角に立っていた穴井宗介は、崩壊するビルの群れを呆然と見つめていた。
「……なんだ、あれは……?」
彼の目の前に現れたのは、巨大な怪物だった。体長はビルの3倍にも及び、その鋭い爪で一瞬にしてコンクリートを引き裂いていく。その異様な姿は、地球上のどの生物とも異なり、まるで悪夢のように目の前に広がっていた。街のあらゆるものが踏み潰され、瓦礫と化す。
宗介はその場から動けずにいた。体が凍りついたように感じた。目の前の光景はあまりにも非現実的で、信じがたいものだった。しかし、次の瞬間、冷たい現実が彼を襲った。
怪獣の咆哮と共に、ビルの一つが完全に崩壊し、無数の破片が四方に飛び散る。宗介の頭上に瓦礫が迫り、反射的に彼は体を動かした。辛うじて瓦礫の直撃を避けたが、破片が頬をかすめ、血が滲んだ。
「逃げなきゃ……!」
混乱の中、宗介はようやく体を動かし始めた。周囲の人々も一斉に逃げ惑っている。街全体が混沌に包まれ、誰もが自分の命を守るために必死だった。
しかし、その時、宗介の耳に聞こえたのは、誰かの叫び声だった。振り返ると、瓦礫の下に女性が閉じ込められていた。彼女は足を挟まれ、動けないでいる。
「助けて!」
宗介は一瞬、ためらったが、次の瞬間にはその女性の元へ走り出していた。瓦礫を必死にどけながら、宗介は自分にできることを精一杯やろうとしていた。
「大丈夫か!?今助ける!」
怪獣の足音が近づいてくる。地面が揺れ、まるで地震のように感じた。宗介は急いで瓦礫をどけ、女性を引き出すことに成功した。彼女を背負い、再び走り出す。だが、怪獣はもうすぐそこまで迫っていた。
「間に合うのか……?」
その瞬間、上空から一筋の光が怪獣の頭上に落ちた。轟音と共に衝撃波が辺りに広がり、怪獣は一瞬動きを止めた。宗介はその光景に目を見張った。空に現れたのは、猫のようなシルエットをした巨大な機械――スコティッシュフォールド型のロボットだった。
「……あれが、対怪獣用の新兵器か……」
宗介は息を呑んだ。防衛軍が最後の希望として投入した切り札。巨大な猫型のロボットは、怪獣の前に立ちはだかり、静かに構えを取っていた。
それが、彼の運命の始まりだった。
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