第2話  池にダイブ

 フラフラと金髪美人の後をついていってしまった。

 言っておくが、ストーカーではない。それほど彼女に興味があったのだ。

 告白してしまおうかと思ったほどの一目惚れだった。


 彼女は、池の近くのベンチに腰掛けて、誰かと待ち合わせをしている様子だった。

 俺は、少し離れた違うベンチから様子を窺う。

 30分くらい経っても誰も来ない。


(待ち合わせじゃないのか?)


 俺は、不思議に思いながらも、彼女に近付いていった。

 俺的にはとても「ラッキー」な、展開だろう?


「あの……すいません……日本語、大丈夫ですか? 俺は、宮地 愛瑠めると言います。良かったらカフェでお茶でも……」


 と言いかけると、美女は片方の唇だけを上げて、こう言い放った。


「さっきから、あたくしを見てたでしょう? あたくしから逃げたつもりでも、こうして見つけたわよ。メルリーズ」


「?? 逃げた? 初対面だよなぁ?」


「いいえ!! あなたは、あたくしのお世話係のメルリーズ。流刑地に向かう途中で、この先の人生を儚んで船から飛び降りたのよ」


 この人、なんのファンタジー漫画の話をしているんだ?

 顔は、綺麗なのに。頭がおかしいみたいだ。

 着ていた服も良く見ると、時代遅れのワンピースみたいだし……


「あたくしのことを、お前如きが頭がおかしいですって!! きーー!!もう許さなくてよ!! 即刻もとの世界へ戻るわよ!!」


 俺は、池のふちまで追い詰められ、思い切り身体を押された。


 おいおい、初対面の女にいきなり池に突き落とされるなんて……俺の人生も儚いものだったな……


 俺の身体は、どんどん池に沈んでいき、二度と浮き上がることはなかった。

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