第4話 試練

「その通りだ、人間の子よ。しかし、冥府の石を完全に封じるためには、試練を乗り越えなければならない。その試練は、お前の内にある恐れや欲望と対峙することだ。もしその試練に打ち勝つことができれば、石の力は永遠に封印され、この世界に再び平和が訪れるだろう。しかし、もし失敗すれば――」


シェルヴァリウスは言葉を切ったが、その意味は明白だった。もし試練に敗れれば、エルティア自身が石の力に飲み込まれ、世界を滅ぼす存在となってしまうかもしれない。


「分かりました。それでも、私は戦います。自分の弱さに打ち勝って、石を封じます」


彼女の決意を見届けたシェルヴァリウスは、満足げに頷き、彼女に背を向けて洞窟の奥へと進んだ。


「では、私について来い。試練の地へと導こう」


エルティアは竜の後を追った。洞窟の奥には、深く暗い場所が広がっていた。そこには、古代の力が渦巻き、石が目覚めるのを待っているかのようだった。彼女は胸の奥で石の脈動を感じ、己の恐れと向き合う準備を始めた。



---


数日後――試練の地にて


試練の地は、荒涼とした荒野に広がる異空間だった。大地はひび割れ、空は永遠に灰色の雲で覆われていた。風は冷たく、何かしらの囁きが聞こえる。エルティアは冥府の石を手にし、心の奥底で自分の恐怖と対峙していた。


その時、エルティアの目の前に影が現れた。それは彼女自身の姿をした幻影だった。影は彼女に囁きかけた。


「お前に何ができる?ただの村娘にすぎない。世界を守る?そんなことができるとでも?全てを捨て、自らの幸福を犠牲にしてまで…」


その言葉は彼女の心を揺さぶり、過去の後悔や不安を呼び起こした。しかし、エルティアはその誘惑を振り払った。


「私は…私の力で守る。私は一人じゃない。シェルヴァリウスが、私の背後にいる!」


エルティアは自分の弱さを乗り越え、影に向かって剣を振るった。影は霧のように消え去り、彼女は勝利を手にした。冥府の石は、静かに紫色の光を失い、完全に封印された。




試練に勝利したエルティアは、シェルヴァリウスと共に洞窟を後にした。石は永遠に封印され、世界には再び平和が訪れた。エルティアは英雄となり、シェルヴァリウスは彼女の永遠の友として、彼女の側に寄り添うことを誓った。


「お前はよくやった、人間の子よ。これからも世界を見守り続ける者として、生きていくがよい」


エルティアは微笑み、広がる空を見上げた。彼女の心には、もう恐れはなかった。彼女は自らの意志で世界を守る力を手に入れたのだ。


そして、銀の竜と共に歩む未来が、彼女を待っている。

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銀の竜と流離の少女 @nasujagaimo123

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