第2話 冥府の石
「こんなところに、本当に存在していたなんて…」
その時だった。洞窟全体が突然震え出し、エルティアはその場に立ち尽くした。地面の揺れに合わせて、洞窟の奥から低い鳴動が響き渡る。竜の目が、ゆっくりと開かれた。
エルティアの心臓が早鐘を打つ。青白い光が竜の瞳から溢れ出し、洞窟全体を照らす。彼女は恐怖と驚きに足がすくみ、動けなくなってしまった。竜の瞳は彼女を見据え、その目に鋭い知性と力が宿っていることがはっきりと感じ取れた。
「お前は、何者だ?」
竜の声は低く、しかし洞窟全体に響き渡るような力強さを持っていた。まるで大地そのものが語りかけてくるかのような響きだった。エルティアは喉が乾き、震える声でようやく答えた。
「わ、私はエルティア…」
その時、彼女は何を言えばよいのか分からなかった。だが、次の言葉が自然と口をついて出た。
「この石を…守らなければならないんです。村が、魔物に襲われて…これは、その原因の石で…私はそれを隠さなければならないんです」
竜はその言葉に耳を傾けるように少し首を傾けた。その動きですら、圧倒的な力を感じさせた。
「冥府の石か…愚かなる人間どもが、再びその禁忌に触れたというのか」
シェルヴァリウスの目が一層輝き、彼の声には深い嘆きが込められていた。
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