運命の揺籃-3


「あなたが無事でよかったです。途中まではノーシェさんと一緒だったのですが、追われるうちに彼女が手を離してしまって。彼女は――ああ……そう、ですか。残念です。とても」


「彼女には、少しだけ親近感が湧いていたんです。田舎から出てきて、頼る場も乏しく、不安で……このようなことになってしまって、悔やまれます。誰かを守りたかったはずが……私の力不足です」


「この力は、借り物の加護に過ぎません。私自身の力ですらなく、ただ授けられただけ。それでもそれが運命さだめならば力を尽くそうと、学びのために魔術学院の門を叩きました。儚くも楽しい日々でした。多くを学び、多くと出会い、友人や想ってくれる人にも恵まれました。後悔はありません。でも一つだけ、他の道があったなら、と思うことがあります」


「――夢を、見るんです。人を殺す夢……正義と裁きの名の下に、他者を光で焼き尽くす夢です。目覚める度に罪悪感が胸を焦がし、何のために、と自問します。答えは決して出ることがなく、今後も得られることはないでしょう。でも、もしそれが避けられる未来なら――変えることのできる摂理なら、私は変えたいと思ったのです。――あなたと同じように」


「あなたを知りたいと思いました。そして友人になれたなら、別の方法が見つかるだろう、とも。一緒にお昼を食べたのも、あなたが庭を気に入ってくれていたのも嬉しかった。でも、それが甘い考えだと気づいたのは、あの襲撃事件であなたの姿を見たからでした。あなたは強く、冷静で……とても美しかった。私などでは及びもつかないほどに」


「釣り合いたいと思って、少しだけ積極的になってみました。お化粧をしてみたり、カーディウスさんと復興作業を手伝ってみたり……交流会の班のことも、はい。少々強引だったと理解しています。それでも昨日みたいに、同じことをして、同じ部屋で眠って……未来と切り離された時間を過ごせて、まるで夢のようでした」


「そしてまた夢を見たんです。私は荒野に立って、世界が滅びゆく様を眺めていることしかできません。人の苦しみ、悲しみ、怒り、痛み……それらを感じながら、ただ立っているだけが私に可能なすべてでした。でもそこに、誰かが来たのです。私を追い、求め、あらゆる困難を踏み越えて――そう、あなたが」


「同じ夢を見ていたのだと、気づきました。そして震えるままに祈ったのです。どうか、どうか……抗うことをお許しください、と。どうして私なのでしょう、と。使をなぜ――と」


「あなたが私を避けていた理由は明白でした。そうと知って、この状況になり……あなたを避けるつもりで、遠ざかりました。ノーシェさんの誘導もあったと思います。彼女が手を離した時、黒装束かれらは見向きもしませんでしたから」


「あなたを知りたいという思いに偽りはありません。一人の人間として、私はあなたともっと話がしたかった。でもきっと……これで最後です」


「改めて名乗ります。神聖ユルアイン教国より参りました、イオラント教天使ラサイア、テレスタシア・ノキア」


「――どうか私たちが、運命のくびきに囚われぬよう」

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