第62話

さっきの和のテイストから雰囲気がガラリと変わったせいか、会場は再び静まり返っていた。


ただ、さっきの熱気は残っていて伝わってくる。



ゆっくりステージ先端まで歩みを進めていると




「シンデレラみたい。」





と誰かの声が聞こえた。






紗奈のテーマが観客に伝わっていることに口元が微かに緩む。







ステージ先端までたどり着くとフラワーシャワーが降り注ぎ


どこに隠し持っていたのか夏樹は私の頭にティアラをのせた。





聞いてなかった演出に内心驚きつつ、紗奈からシナリオを聞かされているであろう夏樹に身を任せることにした。






ゆっくりと跪き私の手をとる夏樹に


本当に一つ一つの動作が様になるよね、なんて感心していたら





そのまま私の手の甲にキスを落とした。







「キャーーー」





一瞬にして会場が沸き立った。





思いがけないことに一瞬、時が止まったように感じ思わず夏樹を見つめる。











ここで赤面するような可愛さを待ち合わせていればいいんだろうけど






さっきの愛菜たちに負けないくらい盛り上げるにはこのくらいしないといけないよね。

夏樹ってそういうの意外とできるタイプなんだ。




なんて考えていた。






歓声に包まれたまま私は再び夏樹にエスコートされてステージを後にした。

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