第31話
明日から本格的に練習が始まる。
「石倉さん、明日からしばらく帰りが遅くなります。」
「かしこまりました。
ご無理をなさらないように。」
なんて言うから
「大丈夫よ。
この家にいるよりずっと自由でいられるから。」
「それならよかったです。」
と口元を緩めた石倉さん。
この家はただの檻。
私が不破家の人間と出くわすとしたら、玄関からこの地下室までの廊下になる。
この部屋に入ってしまえば、私と時々石倉さんがいるだけの空間になる。
だけど、盗聴器が仕込まれてるはずだ。
だって、
私は不破家最大の弱味になるんだから。
盗聴器なんて探すのは簡単だけど、見つけた所でどうすることもできないから放置してる。
もともとこの部屋では必要最小限しか話さないから聞かれてまずいようなことは言わないし、私が皮肉めいたことを言っても両親は小馬鹿にするだけだろう。
そんなことを考えていたら今度は少し心配そうな顔をして石倉さんがこちらを見ていた。
「石倉さん、あとはシャワーをして休むから今日はもういいわ。ありがとう。」
そう言うと
「わかりました。
それでは失礼いたします。」
と部屋を出た。
1人のはずなのに息が詰まる。
いつもより長めのシャワーをしてベッドに入った。
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