車には運転手の野田さんだけ。

野田さんは不破家の闇を知っているのか知らないのかわからないけど、ポーカーフェイスで、私に対しても両親に対しても特別態度が変わることはない。

そんな野田さんが

「お嬢様、何かいいことがあったのですか。」

なんて声をかけてくるものだから驚いてしまった。

「そう見えるならそうかもしれないわ。」

バイトをする、という目標ができたから。

家に帰ったら調べよう。

そう考えていたのに

いつもの地下室の扉を開けば

「お嬢様お帰りなさいませ。

先程、孝臣様からご連絡がありまして部屋にくるようにとのことでした。」

石倉さんはそう告げた。

孝臣とは不破コーポレーションのトップ、父親のことだ。

滅多に呼ばれることのない父親の部屋に呼ばれるなんて悪い予感しかしない。

「石倉さん、ありがとうございます。

今から向かいます。」

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