第16話

学校に着くと




「不破さんよろしいでしょうか?」





見知らぬ生徒に声を掛けられた。



雰囲気からして、記憶を失う前からも親しくはなさそうな、眼鏡をかけた見るからに真面目そうな女子生徒。



何かの罠かもしれないと一瞬思ったけど、とりあえず話を聞いてみることにした。







「夏休み前に一度断られていますが、やっぱり諦めきれなくて。


来月の学祭の演劇部の演目、人魚姫に出ていただけないでしょうか?」



口を開くなり彼女は突然そんなことを言い出した。









思いもしなかった誘いに






「でも、私演劇経験もないですし、もっとふさわしい方がいらっしゃると思うのですが。」






「いえ、入学式で見た瞬間、貴方しかいないと思っていたのです。」



少し興奮気味に近づいてきた彼女。








困っていたその時





「ふわり!!

中村先輩も諦めが悪いですね。

夏休み前に断っているはずですけど。」


と現れた救世主、紗奈。





「また、江藤さんですか。

仕方ないので今日のところは、戻ります。

いいお返事待っています。」




と背を向けた先輩。

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