第15話

逃げ出す





そんなこと





「考えてもみなかったな。

第一、学校に通えるだけでも幸せよ。」









この地下室という檻で過ごす時間が長過ぎて


監視されることが当たり前すぎて


不破家の目を盗んで逃げることは無理だと思い込んでいた。




だけど、逃げられたとしてその先に何があるのだろう。






ちょっと勉強ができるくらいじゃ生きていけないことくらいわかってる。







何より



「私が逃げ出したら石倉さんの身が危ないでしょ?」





真っ先に監視役の石倉さんにとばっちりが行くに決まってる。







それなのに


「私はお嬢様にいつか自由になって、幸せになっていただきたいのです。」





なんて言うから






「石倉さん変わってますよね。

気持ちだけありがたく受け取っておきます。」






そう伝えてサラダを黙々と食べて学校へ向かった。





恐らく20代の石倉さん。

あんなお姉さんが欲しかったな。



なんて、柄にもなく思ってしまった。

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