第51話
一通り見て歩き近くのベンチに腰を下ろした。
「近くなのに、全然知らなかったな。藤棚見たの初めて!」
少し興奮気味の私に
「よかった。さぁちゃんのそんな顔がみれて。
少しでも気分転換になればと思ってさ。」
マスク越しでもハルは優しく微笑んでることがわかった。
ハルはポケットからスマホを取り出し
「さっきの写真送るね。」
と写真を送ってくれた。
「自分で言うのもなんだけど、すごく楽しそう。というか、本当に楽しい!
ハル、誘ってるくれてありがとね。」
「ううん。こちらこそ、今日はたくさん笑顔見せてくれてありがと。」
なんてハルが言うから
「最近ね、進路のことで悩んでて。」
不思議と口が開いた。
高校入試前日に失恋したことも
友だちに裏切られたことも
人と距離を置くようになったことも
感情が欠落している気がすることも
本当は、誰かに聞いて欲しかったけど誰にも言えなかった思いが次々とこぼれた。
「そんな感じで、目標もなくここまできちゃって。みんな未来を描いていくのに、私は何も思い浮かばなくて。適当に、進学して、就職したとしてこのままじゃ、私どんどん感情がなくなっていくんじゃないかって怖くなって。」
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