第29話

「おいしい!」


一口食べればそれはもう絶品で。




「でしょ?」


とハルが嬉しそうに笑う。









「食べ終わったら外を見て。ちょうどいい時間になると思うから。」




そう言って空を眺めるハル。






味わってアップルパイを食べたあと後ろを振り返ると




「すごい。キレイ。」






沈みかけの夕陽と夕焼け空が本当にキレイで変わりゆくグラデーションから目が離せない。









「もともと絵を描くのが好きだったんだけどここからの景色をみて美大に行こうって決めたんだ。」








「だから風景画とか水彩アートとかそういうのばっかり描いてたんだけど、今日はどうしてもさぁちゃんが描きたくなって。久しぶりに人を描いたんだ。そんな刺激をくれてありがとう。」






とハルが言うから私は首を横に振って






「私ね2年前にいろいろあって。前はこんな感じじゃなかったんだけど。

だからこんなに笑ったのも久しぶりだし、どれだけ私がツンツンしてるのかもわかったし。何よりハルといてなんか癒されたの。

だからお礼を言うのは私の方。ありがとね。」







心の奥の氷か少し解けたような、

ハルといれば優しくなれる気がした。

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