第23話 ミラ山のダンジョン
山のクエストというのはセザンヌ近辺にあるセザ山中腹にある洞窟の探索だ。
この洞窟はなんてことはない普通のダンジョンなのだが、最奥部の一歩手前に隠し通路が用意されていて、その先へ進むと割と大きめの地下神殿に行くことができる。
その最深部では、なんと有用な消費アイテムが定期的にスポーンするようになっているのだ。
壁に耳あり障子にメアリーは現在深刻な物資不足に陥っており、ここを占拠してアイテムを回収できるようにすれば拠点増強につながるであろう。
くまちゃんはポッピン教の拠点がうんぬんかんぬんとか言っていたが、そちらは無視だな。
目的の洞窟へと到着する。
「こちらですね。人の足跡があります。おそらくは内部に何者かがいるのでしょう」
「マジかぁ。まあ五百年も経ってるから、誰かが占拠しててもおかしくないよね。その人らには悪いけど、ここの神殿はメアリーのものにしたいかな。資源拠点の取り合いはよくやってたし」
「わかりました。では私が掃除を」
「いや、私も行く。くまちゃんが行くとやり過ぎるでしょ。いーい? 絶対に殺したりしちゃダメよ? 傷つけるのも最低限! わかった?!」
「なるほど、そういうことですか。承知しました。可能な限り恐怖を与えて、今後この地に寄り着かないように致します」
「ちげーわ! 普通に撃退すればいいだけだからっ!」
「はい、わかっておりますよ」
絶対わかってないだろ……。
「……。まあいいわ。とりあえず中を進むわよ」
内部では案の定、魔物ではなく人が配置されており、その人らを倒していきながら最奥部を目指していく。
隠し通路に入る前に最奥部も一応確認したのだが、少し良さげのアイテムが入った宝箱が置かれていた。
「なるほど、考えてるわね。普通の探索者はこのアイテムで満足して帰っちゃうってわけか」
「普通の、ということはまだ先があるというわけですね」
「うん。こっちに隠し通路があるの」
そう述べて隠し通路の方へと進んでいく。
「よくこのようなところをご存知でしたね」
「もう何度もやったことあったからね。しっかし、内部のつくりがだいぶ変わってるなぁ。前はもっと壁とか床がボロボロな感じだったけど、だいぶ綺麗になってるね」
「やはりここをポッピン教の者たちが拠点化していたというわけですね。豚トロ様はそれが分かった上で来られたと。その御慧眼、見事なものにございます」
「ホントにそうなりそうで怖えぇわ」
隠し通路の先へ進んでいくと、そこは結構ちゃんとした拠点となっていた。
「もとはダンジョンなはずなのに、改築したみたいだね」
「そのようですね。ここの隠し通路の入り口はかなりわかりづらいものとなっておりました。私もスキルによる構造探知を行っておりましたが、それにも引っ掛かりませんでした。恐らくは魔法的な隠蔽もなされているのでしょう」
ややも進んでいくと、中の者に発見され戦闘となる。
が、私たちに敵う者なんておらず、むしろ死なないように手加減をするのに手こずるレベルであった。
「弱いですね。豚トロ様はなぜこのような虫けら同然の生き物に慈悲をかけられるのでしょうか?」
「いや、普通だからね。くまちゃんが異常なんだからね」
「??」
本気でわからないという具合に眉を寄せている。
悪魔種と言うのをよくは知らないが、こんなものなのだろうか。
ここら辺は今後しっかり教育しておかないと。
アイテムスポーン場所のある最奥部へ到着すると、そこには恐らくこの拠点を守る責任者と思われる者が待ち構えていた。
「貴様らか、侵入者というのは。俺らの末端の末端を潰している二人組だな? だが、残念ながらそいつらは雑魚の雑魚。この拠点は聖女様より預かりし重要な場所だ。ゆえに、ポッピン教の主力が置かれているというわけだ」
……。
マジでポッピン教関係してたぁ……。
既にくまちゃんが鼻息を荒くしていることに、私は頭を抱えてしまう。
「はんっ、俺の威圧だけで頭を抱えるほどに恐怖したか? ならばその感覚は正しい。俺こそがポッピン教の主力。ポッピン教四天王、烈火のザクエルとは俺のことよ」
恐る恐るくまちゃんの方を見てみる。
すると、くまちゃんは主の偉大さに顔がにやけてしまうのを隠し切れずいるのであった。
「やはり……っ! やはり豚トロ様はすべてを分かった上でこちらに来られたというわけですねっ!」
「うん、違うね」
でもそう捉えられてもおかしくない。
偶然がだいぶ重なっちゃってるし……。
「やはり豚トロ様は神にも等しい御方。すべてを見通しておられる」
「違うね」
「なるほど、大変失礼いたしました。神そのものですね」
「違うかな」
「無視すんなや!!」
私たちが下らない雑談をしていると、ザクエルとか言う奴が剣を掲げながら怒鳴って来た。
「あーごめんごめん。えっと、一応確認なんだけど、あなたたちはこの拠点を不法占拠してるだけだよね? 別に土地の所有者とか、ここの占有権を法的に与えていたりするわけじゃないよね」
「はんっ! この期に及んで何を聞いてくるかと思えば、寝言は寝て言えや。んなもん俺らにゃ関係ねぇ! お前らはこの烈火のザクエルに焼かれて死ぬがいい! 【アトミックファイヤー】!!」
ザクエルの獄炎魔法が私たちを襲う。
だが――、
「うーん。レベル900くらい?」
「人族の一般人の平均レベルは100にも満たないものですので、人族の中では強い方なのでしょう。ですが、我々からすれば春風のごとき涼しさですね」
なんて具合に二人して肩をすくめてしまう。
「んなっ! なんで効かない!? くそっ! 炎の絶対耐性保持者か! ならばっ! 俺の絶技で――」
「あっ、そういうのもういいよー。ありがとうー。【ヘルズリバー】」
「ぎゃあああああああああ!!!」
私の魔法により地獄な濁流を浴びせられたザクエルは、ショック状態に陥り気絶してしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます