第24話 ポッピン教の企み

 周辺の物資の把握が終わり一息つく。


「よし、とりあえずだいたい片付いたかな。思った以上に物資が溜め込んであってかなりおいしいかもっ! やっぱ拠点争奪戦の醍醐味だよねぇ~」

「かつてもこのようなことをされていたのですか?」

「いっぱいやってたよぉ。私はとくにランカーだったからかなり狙われててね。でも、メアリーを破ったギルドは結局一つもなかったなぁ。自分で言っちゃうのもなんだけど、あたしって結構すごいんだよ。メアリーを襲撃してきた100人レイドをソロで撃退とかしてるからね」

「不遜にも豚トロ様を狙われるとは。愚劣なる代価として命を支払うこととなったのですね」

「まあ……、たしかに相手さんも死にはしただろうけど、リスポーンしてるからね」


 拠点を占拠していた不法者どもは外へと追いやり、拠点パックと防衛キットを使って無人防衛網を構築していく。


「さっきのザクエルさんレベルの人が来ると耐えられるか微妙だけど、一旦これでいいかな。とりあえず貯めてあった物資を転移でメアリーに運び込みましょう」

「承知しました」


  *


 となりの豚トロたちが物資の移送を行った次の日、豚トロとの戦いに敗れたザクエルは遺跡から逃げ延び、とある教会にて跪きながら一人の少女と話していた。

 おまけにザクエルは人族の中でも屈指の実力者であるというのに、その額に大粒の汗が浮かんでいたのである。


「つまり、それでミラ山の拠点を失ってしまったと?」

「は、はい……。で、ですが、恐ろしく強い相手だったんですよ! 俺の魔法が一切効かなくて、それで対抗魔法を放とうとしたら、気付いたらのされてて……」

「言い訳は聞きたくないのですが」

「ま、待って下さい! つ、次こそは必ずあの拠点を取り返してみせますっ!」

「あら? 次があると思って? あなたのような虫けらなんて、わたくしからすればいくらでも替えが効きますわ」

「た、頼みます! どうかっ、どうかチャンスをっ! 必ずや――」


 次の瞬間、ザクエルの首が飛んだ。

 それがぼたりと床に落ち血しぶきが舞っているというのに、少女はもはやそれに興味を示していない。


「はぁ……使えない。こんな簡単な仕事すらできないなんて」

「なら私を使って下さい、聖女様」


 床に倒れて肉塊と化すザクエルをまたぎながら、一人の女性がやってくる。


「ポッピン教四天王メレス。あなたなら勝てるかしら……」

「はい、必ずや勝利をあなた様に捧げてみせましょう」

「……。アクタス、それにビルシャ、あなたたちもついていきなさい」

「し、四天王を三人も連れていかれるのですか? いくらなんでも過剰戦力なのでは?」


 メレスが異を唱えるも、すぐにそれを後悔することとなる。

 なぜなら、聖女と呼ばれた少女から負の感情が発されているのを肌で感じ取ったからだ。

 メレスはすぐさま跪いて服従のポーズを取る。


「い、異論を唱えてしまい申し訳ございませんでしたっ! すぐさま向かいます!」

「……。そうなさい。今回の相手は得体が知れないわ。それと、セザンヌの街で動いている者も連れて行きなさい」

「Aランク冒険者カイオンと、警備隊長のライメルでしょうか」

「ええ。それと、最近もう一人加わったでしょう。冒険者ギルドマスターの……たしかトーグナーでしたっけ。肉壁くらいには役に立つんじゃないかしら」

「承知しました。必ずや奪還してみせます」

「結果は奪還したという報告のみですわ。それ以外の場合は報告しないで下さいな。そこに転がっているグズのようになりたくなければ」

「は、はひぃ!!」


 メレスは逃げるようにその場を去っていく。


「はぁ……。人間のごとき下等生物を使わなければならないなんて。反吐が出そうですわ」


 そんなことを述べながら、少女は自身の胸を抱く。


「ああ、我が主。あなた様はいったいどちらにおわすのかしら……。わたくしの心はいつもあなた様の元に」

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