第8話 クモの大福
人の上半に蜘蛛の下半。
彼女はいわゆるアラクネと呼ばれる種族だ。
名前は『クモの大福』。
二本の殺人的な鎌とは対照的に、蜘蛛の身体は雪見だいふくのような美しい乳白色となっている。
上半の人間部分も色白の美しい女性で、上だけ見れば多くの男どもが目を惹かれてしまうことであろう。
おまけにゲームのときと違って今は裸だし。
倫理規定が解除されているのだろうか……。
「さあ、ゆくぞえ!」
アラクネが鎌を振り回しながら突っ込んでくる。
私はそれをすべて紙一重に回避していきながら、相手の出方を見ていく。
「はんっ! よお避けおる! ならばこれでどうじゃ! スキル【死神の鎌】」
実体の鎌に加えて、霊体の鎌が八本も出現して四方八方から襲い掛かる。
さすがにスキルや魔法無しで避けていくのは厳しいが、これはあくまで彼女との戦闘を楽しむ場だ。
私はそのまま動体視力のみで回避を続ける。
「大した回避力じゃの。じゃが、避けてるだけでは勝てんぞえ! スキル【邪怨蟲毒】」
強毒の雨が降り注ぐも私に状態異常系の攻撃は効かない。
今度は光剣を創り出して彼女の鎌と打ち合いをしていく。
「フォトンセイバーじゃと!? 貴様! それをどこで手に入れた!?」
「……」
「許せぬ、許せぬぞ!!! それは我らが主のみが持つ魔剣士マスターの称号ホルダーのみが扱える剣じゃ! 貴様なんぞには不釣り合いじゃ!! スキル【オールグレートアップ】」
アラクネが激怒と共に攻撃の手をさらに強める。
やっぱレベル2000越えだから、さすがに防ぎきれないなぁ。
仕方ない。
「スキル【アバターフィールド】」
自分の分身体を八体生成する。
だが、アラクネは分身体が現れたことよりも、このスキルを私が扱えたことに驚いていた。
「今度は忍者マスターのホルダースキル……。貴様っ!!」
「持ち主から奪った、とでも言ったら、あなたはどうする?」
そう述べると、明らかに目つきが変わった。
先ほどまでの怒りが赤く燃える怒涛の炎であるとするなら、今は青く燃える強い殺意だ。
考えられ得るあらゆる手段を使って殺してやると言わんもので――
「スキル【ベルセルク】!!」
狂戦士となって更なる猛攻を繰り広げてくる。
肉体能力を超えた攻撃となっており、アラクネ側も体が耐えきれず出血を始めている。
だが、本人にとってそれはどうでもいいことのようだ。
そんなことよりも目の前にいる私を殺したくて仕方がないと言わんもので。
さすがに受けきれない手数と威力になっており、私にも生傷が増えていく。
すごいっ!
大福ちゃんってこんなに強かったんだっ!
頑張って作り込んだからけっこう嬉しいかもっ!
これならPVEでも結構いい線行けるんじゃないの!?
そんな風に満足感を得ていたところで、彼女の鎌がフードを掠ってしまった。
風圧だけでフードはボロボロに千切れてしまい、私の顔が顕わとなる。
「あっ……」
見られちゃったや。
まあもういっか。
本当はもうちょっと性能テストしたかったけど、現状でも十分わかったし。
「……!?」
「あー……。ご、ごめん大福ちゃん。話すのは初めてだよね。えっと、創造主だぞっ、てへっ☆」
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